第13話 魔性の宝冠(後編)

(すげ~試合だったな……俺が勝てばオーディンと戦うことになるのか……)


「何、心配してんだァ? ジェロムさん」


「別に心配してねーよ、ホウオウさん」


「ふん、この村正と正宗があればオラの勝ちはまぢがいないべ」


「けっ、俺の腕にかかればそんな刀は大した問題じゃねーよな」




「試合前からケンカはやめて下さい。それではお待たせしました。準々決勝第二試合……Aブロックはジェロム・フォン・フィッツジェラルド対ヒジリ・ホウオウ、Bブロックはトール・チェンバレン対フェイ・ド・コルターサル、試合開始です!」




「早ぐ負げで国さ帰れぁ!!」


 ホウオウの村正がジェロムを襲った。余裕とばかりにジェロムは虎徹で薙ぎ払う。


「むうう……女子に鎧バラバラにされたくせに生意気だべ!」


 今度は両手で持った村正を振り下ろし、ジェロムの虎徹を折った。


「きっさまぁ! わくも親友ダチからもらったカタナを……!」


「あ……いや……オラ、そんなつもりは……」


「うるせー! てめーの鎧もバラバラにしてやんぜ!!」


 ジェロムは両手で孫六を握り振り回した。ホウオウの着た当世具足のあちこちに傷がつく。


「鉄板入れてあんな? この鎧!」


「い……入れであんべ! だがらゴメンな!! なっ!?」


「おめーは許さん!!」


 ジェロムは飛び、ホウオウの兜にカタナを力いっぱいに振り下ろした。金属音とともに兜が二つに割れた。


「これで終わりじゃねーぞ!!」


 後ろに着地し、振り向きざまに刀を回してホウオウの村正を払った。村正はホウオウの手から離れ場外へ飛んだ。

 そこにジェロムのヒジ打ちが脇差しの政宗をも床へ落とした。


「ヒジ使うなんて卑怯だべ!」


「フッ……コレは剣術の試合とは違うんだよ。おわかりかい?」


「ああっ!! そうだったべ! オラとしたこどが……」


「分かったらハイ、さよなら」


 ジャロムのケリが入りホウオウが場外へ落ちた。


「わりーな。もしかすると世界の運命がかかってるかもしれねーんでな」




「なあ……姐さん! わかるか? 俺だよ……トールのマヌケ野郎だってばよ!」


「知ってるわ。……なんてな!! ケケケ……もうお芝居は疲れたぜ」


「やっぱりだ! あんた、姐さんじゃねえな!? 化けてんのか!? 乗り移ってんのか!?」


「現われてんだよ、アタシの人格がね!! アタシも強いけどね、この女の精神力も相当強くてね、人格支配すんのに苦労したぜ。あの女魔導師はけっこう軽くいけたけどなァ!」


「でも苦しいみたいだナ。口調が乱れてるところ見ると……」


「何を!? 生意気な……オマエはあん時から気に入らなかったよ、アタシが大海蛇リヴァイアサンを使って襲った時オマエはクズのくせに一人で相手しようとしやがってな!!」


 フェイ……正しく言えばロキとトールが話し合いからケンカになっていた。


「こちらもですか? フェイ選手、試合はもう始まっています。それ以上の暴言は警告……」


「やりたきゃやれよ。ただしこいつの腕確かめてからだ!!」


 フェイはタロットをシャッフルして引いた。月のカードだった。


「月……!? 迷いだと!? そんなハズは……」


 フェイはもう一度タロットを引いた。


「力のカード……この女の方が強いだと……!! もう一度だ!!!」


「何度やってもあんたにいい結果は出ない……」


「また戯言たわごとか!? この女相手じゃ手も出せないくせに……。アタシがタロットを引いてる間にいくらでも攻撃できたじゃないか。まあ、少なくともオマエには勝てるな」


 フェイは水晶玉を取り出し、それを持ってトールの顔面を殴りつけた。

 無論、トールは抵抗しない。


「だったらこうしたらどうかな?」


 それからのフェイの攻撃にもトールは全く無抵抗だった。敵はロキでも身体はフェイだから……


「トール選手! 戦意がないと見なして負けを宣告します」


 トールは血まみれになりながら試合場を去って行った。


(あれだけぶん殴ったのにタフなやつだ。しかしあいつは使えんな。だいたいあいつが……)


 フェイは客席にいるヘイムダルの方を見た。


(あの冠をかぶろうなどと思うはずがない……)

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