王国の王子に婚約破棄された挙句に謂れようのない罪も擦り付けられ国外追放されましたが、持っていた『調律』スキルは帝国に重宝されているようです
鹿園千
第0話 プロローグ
「それでは皆さん、行きますよ――『調律』!」
私は自身の加護を発動させました。この力によって帝国の環境は最適化され、帝国の方はもちろんのこと亜人族や魔族達も喜びの声を上げました。
「良かったね。みんな喜んでいてくれているよ」
「ニコラ! うん、私の加護でこんなにも喜んでくれるとは思ってもみなかった……」
継母は疎か元婚約者や各貴族にも馬鹿にされてきた加護は、私が死ぬまで陽の光を見ないことはないと思っていたけど、だれかを笑顔にさせられるとは想像していなかった。
「それは、エリナのやってきた努力が実を結んだんだ」
「努力が?」
「そう、辛い歴史がある中で君は偉業を成し遂げたんだ。“人間と亜人族や魔族と一緒に暮らせる世界を”ね」
ニコラはどこか懐かしむかのように宴会で盛り上がる皆さんを見ていた。これを成し遂げられたのは、私ひとりの力じゃない。
ニコラやみんなが私を信じてくれたからだよ。
「大丈夫。ニコラがいてくれたから私はこうしてみんなの役に立てているんだから」
私は彼の手を握りそっと微笑んだ。どん底にいた私に手を差し伸べてくれたのは、ニコラでありこの人がいなければ今頃どうなっていたか分かりません。
「エリナ。ボクと――」
彼からその言葉を聞いて、すごく恥ずかしくなりましたが、これ以上自分が幸せになってもいいのかと考えられるくらい嬉しくなり頷きます。握った手を絡めてもう二度とこの手を離してほしくないと願いながら。
そして、ここまで来る間に何があったのかを私はもう一度振り替えなければいけません。
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