第3話 『風邪がうつるような事、しよっか』


 九条さんからは、なんかいい匂いがして、俺に抱きつく九条さんは柔らかくて、気持ちがいい。

 けど、こんな至近距離……


「……九条さん、俺は嬉しいけど、風邪……うつりますよ?」


 少し心配になって言ったら、


「んー? いいよ? 明日日曜日だし、うつったら泰樹が看病してね?」


 九条さんは悪戯っぽくそんな事を言う。


「えー、ああ、そうですね。こんなにしてもらったんだから、そりゃあその時は全力で看病しますよ」


 だから俺もそういうと、


「ねーじゃあさ、風邪がうつるような事、しよっか」


「え?」


「……キス、してもいい?」


「……俺なんかでいいのなら」


 ……やっぱ夢なんだろうな。九条さんが、俺とキスしたいなんて。


 少しぼんやりする視界を眺めながら、ぼんやりとする頭で考える。


 すると俺の視界はいつの間にか天井を映していて、俺の唇には柔らかい何かが当たっていて、俺の身体には温かい熱が伝わっていて。


 え? 俺……九条さんに、キスされてる。

 何回すんの? 気持ちいいんだけど。


 頭がふわふわするんだけど。なんだこれ、まるで夢の中みたいだ。


 しばらくキスされたあと


「へへー。病気の泰樹襲っちゃった。明日、泰樹が元気になってたら、怒られちゃうかな」


 少し恥ずかしそうに九条さんが言う。


「怒ったりなんてしませんよ。むしろ嬉しいくらいです。こんな、美人な九条さんが俺なんかにキスしてくれるなんて」


 そう言う俺に


「泰樹は、私のキスなんかで喜んでくれるんだ。嬉しいなー」


 少し切なげな表情で言った後、


「ね、何かして欲しい事ある? なんでもいいよ?」


九条さんはそんな事を言うから


「じゃあ、九条さんは何されたら喜ぶのか、知りたいです」


 俺はそう答えた。そしたら九条さんは、


「えー? 私が喜ぶ事? ……じゃあ、このまま添い寝して抱きしめて、頭、撫でて欲しいなー」


 あまりに俺得な事を言った。


「そんな事でいいのなら、いくらでも」


 俺は九条さんを抱きしめて、頭を撫でた。


 そしたらなんか……キスしたくなって。


「九条さん……俺もやっぱ、キスとかしたくなるんですけど」


 そう言うと


「何してもいいよ? キスでも、えっちなことでも。泰樹がしたいこと。だからさ、気に入ったら私を、本当の彼女にして」


 九条さんはそう言うと、俺に抱きついた。


「九条さん……、俺のこと、誘ってます? それとも、からかってるんですか?」


 俺の言葉に


「試してみる?」


 九条さんは俺を見つめて小悪魔みたいな顔でそう言った。


「俺……こんなこと言われて襲わないほど、人間出来てないですよ?」


「きゃー。襲われるー。……へへ、じゃあさ、めちゃめちゃにしていいよ? 私のこと。泰樹にその元気があるのなら」


 九条さんはまた、俺を挑発するような事を言った。

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