綾小路鈴華の野望

 はじめまして。

 わたくし綾小路鈴華あやのこうじすずかと申しますの。

 身長140センチ体重36キロのお陰で、幼く見られがちですわ。高校3年生ですのに…。

 

 家は一般世間様とは、ちょっと異なりまして……あ、でももう、お祖父様じいさまは御引退されましたの。跡目あとめが出来たからと。

 それでも我が家は、まだまだその名残りがありまして、……

 もう、この話しはつまらないのでやめにしましょう。


 私には両親がおりません。

 私が産まれてすぐにお母様がお亡くなり、お父様ひとりでは育てられないと、お祖父様とお祖母様ばあさまが引き取り、この綾小路家で育てられました。お祖母様も私が中学生の時にお亡くなりになりました。

 今はお祖父様と私、住み込みの家政婦かせいふきよさんと可奈かなさん、運転手兼、護衛ごえいまささんと暮らしておりますの。それから、強面こわおもての方々がよくお祖父様にご意見を、といらっしゃいますわ。


 先日、お祖父様のお誕生日でしたの。

 私はお祖父様になにをプレゼントしようかと悩みまして…そうだ!お祖父様はコーヒーが好きだから、コーヒーのお店をプレゼントしましょう!と、とても素晴らしいアイデアが浮かびましたの。これならお祖父様もびっくりなさって、きっと喜んでいただけますわ。


 その時、家に出入りする者が二人おりましたのでたずねましたの。お手頃なお店を手に入れる方法を。そしたら「お嬢、ここはオレ達に任せて下さい!」と、張り切って行ってしまいましたわ。でも、見つかればお祖父様がきっと喜んで下さる。そう信じて…。


 翌日、お祖父様に呼ばれてお座敷に行きましたの。まさか、サプライズがもうお耳に入ってしまったのかしら?という予感で。

「鈴華、お前は店が欲しいとあの者達に頼んだかね?」

 後ろの隅に、昨日のお二人が座ってるのを確認して「はい、さようでございます。ご相談させていただきました。」と答えましたの。

 お祖父様はため息をいてから、その理由をお聞きになりました。少なくとも、喜んでいるお顔ではございません。ここは正直に話さなければ、あのお二人にももっとご迷惑お掛けしてしまいますわね。私は、お祖父様の誕生日プレゼントのお話をしました。すると、お祖父様のお顔は優しくなり「もう二度としてはいけない」というお話をされました。


 そして、お祖父様のお誕生日の朝、お祖父様から頼み事をされました。とあるお店で、コーヒーをテイクアウトしてきて欲しい、と。

 そのお店は以前、私がお祖父様にプレゼントしようとしてたお店でしたの。

 お祖父様が一度だけ、コーヒーを飲みに行きとても美味しかったからと。


 コーヒーを淹れてくれた少年は、私と同じ歳で、名は【藤川翔吾】という。


 

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