第5話 安曇野・松本旅⑤
来た道を戻ってからが少し大変で、
・繩手通りに遊びに行こうと思ったら朝早すぎて店が全く開いていなかった。
・SNSのフォロワーさんから教えてもらったあがたの森に行ったところ、某ポケ〇ンGOのイベントの日だったらしく大量の人間がスマートフォンの画面を見つめていた。何らかの宗教のようだった。
おおよそこんな体験をすることとなった。オレンジさんは文句も言わず一緒に走ってくれた。
途中トイレに行くついでに美術館に寄り、常設展を眺めたりもした。
他人の精神世界を眺めるとこんな恐怖を感じるのかと、オレンジさんのもとに戻った私はしばし放心状態になっていた。
昼食は古民家カフェのような場所でカレーを食べた――そういえば昨日もカレーを食べたが、カレー好きなのでいいことにする――。ずいぶん雰囲気のいい店だったので「ほお」「へえ」とインテリアを眺めていたら、本棚に並べられていた本は「山男たちの死に方」だった。他人の精神世界を眺めるとこんなにも恐怖を感じるのかと、オレンジさんのもとに戻った私はしばし放心状態になっていた。
こうして私は、松本の街をオレンジさんとともに駆け抜けた。
そして今は喫茶店で新幹線の電車が来るまでと、スマートフォンを使いこの文章を書いている。
私がこの文章を書こうと思ったのは、少しでも、たくさんの思い出をオレンジさんを通じてなにか形に残しておきたかったからだ。
オレンジさんは、私だけでは見えない世界を見せてくれる。一緒に連れて行ってくれる。そういう存在だ。
少し重たいけれど、一緒に来てよかった。次はどこに行こうかな。
ああ、最初の一文はなにを書こう。
そうだ、やっぱりあれだ。
私はポチポチとスマートフォンの画面に指を走らせた。
――キャリーミーという自転車がある。
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