第4話 都会の夜影を踏む足先に留まる思い。—―それは寂しさを踏む自分の孤独

(4) 都会の夜影を踏む足先に留まる思い。—―それは寂しさを踏む自分の孤独


 週末の金曜日。

 美恵子は納品の最終チェックを終え、パソコンを終えると時刻を見た。


 ――午後八時十五分過ぎ。

 

 定時は六時なので今日は二時間ほど残業をしたことになる。

 周囲を見渡せばフロアごとの仕切りの電気は消えていたが、奥の経理課の電気は点いている。

 美恵子は席を立つと退社時刻を専用の端末に打ち込み、後は電気の点いている経理課に挨拶して会社を出た。

 外に出ればとっくに陽は暮れている。

 とはいえ、此処は街中であるので周囲は飲み屋等の灯りで明るい。

 恵美子はズボンから足を延ばすようにして歩き始めると明かりの中に伸びる自分の影を踏みながら、肩にバッグをかけて歩き出した。

 目的地は自分の馴染みのバー。

 そこで軽く一杯喉を潤して帰宅しようと決めて歩き出した。

 都会の夜影を踏む美恵子の足先に留まる思い。それは寂しさを踏む自分の孤独。

 別段、自分の部屋に帰っても待ち人はいない。

 三十半ばの自分を慰める愛人も恋人もいない女だ。そんな身上ならば寂しい孤独をバーのカウンターで身を潜めるように時を過ごすのも、誰も居ない部屋で過ごすのも何も変わらない。

 恵美子は鉄のような硬直した感情を抱えて歩道を横切り交差点を渡ると、やがて立ち並ぶビルの一角に身を滑り込ませた。


 ――そこに今夜の「居場所」があった。

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