高校一年生の冬と噂をバラした犯人

憂鬱な文化祭が無事に終了し、

私は、変わらず憂鬱な学校生活を送っていた。

冬が近づいているのがわかる。

けれども、私には、一番好きだった季節を何も思わなくなった。

大好きだったイベントもテレビ番組も、観る気力が無くなってしまった。

楽しいって思わなくなってしまったの。


いつも思うのは、何度

『死のう。』

『死にたい。』

『殺してくれ。』

『いや。殺してやる。』

『明日が来ないで。』

そういつも毎日思っていた。

顔には出さなかった。

いつも、ポーカーフェイスを貫いた。

笑顔の顔でポーカーフェイスではなく、

何も表情を出さない、何も感じ取らせない、そういった表情をして、ポーカーフェイスを貫いた。


そういった態度もムカついたのだろう。

こっちは、嫌がらせをしているのに、表情ひとつ変えないのだから。

だから、余計に嫌がらせをしよう。と思ったのかもしれない。



『どれだけ私を傷つけているのかも知らずに……。』



季節が夏から秋、秋から冬に変わっても、私の周りの状況は何一つ変わりはしなかった…。

変な期待をしたのが間違いだった…。


長い休みが終われば、皆も少しは考えが変わって、

『私を見る目も少しは変わってくれるかも。』なんて淡い期待をしていたけれど、

状況は何一つ変わらなかった。


私も、なにも変わらなかった…。

期待をしても無駄だとそのとき感じた…。

いつものように遅刻ギリギリで登校して、机につく。

ホームルームが終われば、授業が始まる。

けれども、授業開始のチャイムと同時に、私の嫌がらせは始まる。

悪口を言われるのだ。

目の前で、耳からあの嫌な声が聞こえるのだ。



移動教室では、違うクラスからも悪口を言われ、嫌がらせをされる。

壁に『東堂凛』とマジックで書かれていた。

それに気がついたのは、しばらくてだった…。

けれども、消すことができなかった…。

きっと、誰かが消してくれるだろう。

そう思ったから…。

でも、今でも壁に残っているだろう。

今の私には知ることはないのだけれど…。


だいたい名前を壁に書くとか幼稚すぎるんですけど。

よく小学生の頃、トイレのドアに書いている人は居たけれど。

先生に注意をされて、それ以降はそんな事件は起こらなかった。


けれども、高校生にもなって、そんなことが起こるなんて思ってもなかった…。

『自分がされたらどう思う?』


『それに、壁に書いた人は、関わったことのない人だった。』


怒りと虚しさで、血の気が引いた。

息が、呼吸が、心臓が速くなるのがわかった…。



私は、冬が近付くと同時に、よく休んだり、早退するようになった。


理由は…なんだろう…。

『何となく…。』

『ただ、学校に居たくなかったから…。』

そんなこと思ったの初めてだった…。

中学生の頃は、毎日楽しくて楽しくて、休みがなければいいのに。って思ったくらいだった。

熱が出て、体がダルいのに、学校行く気だったもの。


でも……。

今は違うよ…。

『あなたが描いていたような楽しくて素敵なスクールライフでは無いんだよ…。』

『あの明るくて楽しことがたくさんで、イキイキとしている東堂凛はもう居ないんだよ……。』

なんて、自問自答している。



そんなある時、メールが届く。

その人物だ。

私は、まだよく分かっていなかったよ。

その人物のこと。


だから、普通にメールの返事をしていた。


あの時までは………。


それは、ある日の移動教室のことであった。



その日は、違うクラスからも合同で授業を受ける日だった。

私は、窓際の前から2番目に座った。

私の周りには、同じクラスの男子生とが一人、違うクラスの関わったことのない女子生徒が一人座っていた。


授業が始まり、男性の先生の声が聞こえる。


私は、ノートをとってる。

シャーペンを持ちながら、左手で頬杖をついている。


するといきなり

私の周りの関わったことのない女子生徒が同じクラスの男子生徒と話を始めるのだった。


その内容は、びっくりする話であった。


「ねぇ!知ってる!?」

「東堂さんって、その子のこと、いじめてたんだって~。」

関わったことのない女子生徒が自慢げに話す。



それに食いついた様子の男子生徒が

「えっ!マジで!?」


意気揚々とした感じで、尚且つそれを楽しむかのように、また、関わったことのない女子生徒が話す。

「なんかね、その子のこと、好きとか言ってたんだって~。」



「えー!マジで!?やばっ!!」

男子生徒は驚いている。


「やばくない?」

「キモイよね。」

「レズじゃん!」

「レズなの。」

そう言いながら関わったことのない女子生徒が私を見る。



「何で知ってるの?」

男子生徒が聞く。



「その人物が言ってた。」

「その人物から聞いた。」

関わったことのない女子生徒が淡々と男子生徒に返す。



私は、その話した内容が耳に嫌でも入った…。

「っ………。」

『その人物が……!?』

『やっぱり……その人物だったんだ……。』

『周りに言いふらしたの………。』

『最低だよ。その人物……。』

そう私は、心の中で返した。


本当のところ、あの時からその人物が皆にチクったって分かってた…。

あの時、あの教室に入って、皆が私を冷たい目で見てる時から分かってた……。


うんん。

『分かってたけど、そんなことない。』って思いたかった……。

でも、それが現実。

だって…その人物にしか言ってなかった内容だったから…。


少しは信頼してたのに……。


『それに、私は、その人物に相談のつもりで話したのに……。』

『本当に、相談だった……。』

『友達のことで相談に乗ってもらってた…。』

『その人物も相談を聞いてくれてたはずなのに……。』



『皆も、友達のことで、悩んだりしたら、友達に相談……するよね……?』



『それなのに……、私が、いじめを……!?』

『そんなことあるわけない!』

『私は、ずっといじめられてる!』

『その子がいたときからずっと……!』

『その子からも嫌なことを言われ続けた…!』

『庇ってすらくれなかった…。』

『だから…離れたかった……。』

『冷たいことを言ってくる、庇いもしない、その子から、距離を置きたかった…。』

『私から挨拶をしなければしない子だった…。』


『少しの間、離れて、頭を冷やしたかった…。』

そうすれば、良いところも見つかって、また普通に過ごせると思ったから…。



『けれど、絶対にその子をいじめてなんかないっ!!』


『誰も…信じてはくれない…。』


『でも、言っておくが、

あなたたちは、私に、悪口を言ってるよね?』

『それは、いじめじゃないの?』


周りに友達がいるから、そうやって威張ったり、悪口言えるんだよね?


『一人じゃ威張れないよね?』

『悪口言えないよね?』

『それに…関わったことないよね?』


『好き嫌いあるのはしょうがない。』

『私だって、アンタが嫌いだもの。』

『でもね、嫌いなら、近づきたくないし、声も聞きたくないし、むしろ、顔なんて見たくないし、関わりたくないの!!』


『ほっといてよ!!』

『何で、何で……』

『構うのよ!』


私が相談のつもりで話した相手、その人物は、相談に乗るフリをして、皆にメールの内容をばらしたいがために、いつも帰り際に「凛、今日、メールするね。」って言ってきたんだ。



私は、信頼していたんじゃなくて、信頼していたと思いたかったのかもしれない。



『それからは、誰にも、本当の事を話さなくなった。』

『そうすれば、自分が傷つくこともない。』



『だって、本当の話じゃなくて、嘘の話だから。』




弊害と言えば、『今でも

本当の事を話せなくなったこと。』



今でも、誰かに、流されるんだろうなって思ってしまう。


そんなことないのに。



でも、トラウマなんだ。



『だから、その人物が今でも許せない。』

『恨んでいるの……。』


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