某テーマパークが嫌いになった訳

その交流会のイベントは、

某テーマパークに行くことだった。



あまり気乗りはしなかったんだが。

久しぶりに遊べるしいいだろうって思ってた。


でも、この事で

某テーマパークが嫌いになるなんて思ってもなかっただろう。



学校からバスで向かう。

バスの席順は、自由だった。


私は、前から2番目の窓際だった。

その人物たちは、一番後ろの席だった。

その頃から、微妙な距離感だった。

自分でも分かってた。


私の隣には、後から遅れて来た女の子。

きっと、他の席が埋まっていたのだろう。

私の隣に座った。

私は隣の女の子を憧れの目で見ていた。


私は、内心嬉しかった。


でも、女の子とは、一回話したくらいだったから

あまり深い仲と言う訳でもない。



いつも女の子は先輩と一緒にいるから

あまり関われないから。



女の子はスマホを取りだし

ずっとスマホに夢中だった。



私は少し話がしたかったのだけれど、

初めて会う人が図々しく話せるわけもなく…

あのケンカのことも知ってるだろうに

きっと関わりたくないんだろうな…っと思い

話しかけることはしなかった。


私はイヤホンをしてミュージックを再生した。



耳からは、嫌な音が遮断され

心地よい軽快な音が流れた。


少しは、心が落ち着いた。


テーマパークに到着した。


イヤホンを外すと、

また嫌な音が耳をつついた。



その人物たちと、一緒に歩くと

その人物たちは、オーディションの話を始めた。


きっとオーディションに行ったこと自慢したかったのだろう。


「受からなかったんだけどね」

っとその人物は話した。



「えーっ

どうして?」

私が聞いた。



そしたら、その人物の顔が曇った。


きっと、落ちたことを聞いてムカついたのだろう。



そして、無言が続き

あの重苦しい空気が漂った。




『あー

辛い…

ここから抜け出して

ヒッチハイクでもして

どこか遠くに連れていって』

そう思いながら停まっているトラックに目を向けた。



でも…できなかった…。


そして、集合写真を撮った。

みんな背が高くて、

一番小さい私は、ほぼ写っていなかっただろう。


私の顔からは笑顔が消え、

真顔でカメラのレンズを睨んだ。



ゲートにはいると、私の気持ちとは反対に

他のカップルも家族連れも

みんな楽しそうな笑顔が溢れていた。



それはそうだよね。

日常を忘れて楽しむためにあるんだものね。テーマパークというものは。



きっと、そのテーマパークの中で一番楽しそうじゃない人は

私しか居なかっただろう。



私は、アトラクションも好きだし

何でも乗れる、楽しいのが

一番って思ってたけど、

やっぱり一緒にいて楽しめる人とじゃないと楽しくないんだなって初めて気がついた。



第一、テーマパークなのに

その人物たちは、アトラクションが乗れない人たちだった……。



そして、唯一乗れるのが

ボートに乗るアトラクションだ。



それに乗ることにした私たちは、順番を待った。


乗る順番を決めるときに

その人物が私の背中をぐっと押し出した。

私の体は大きく揺らめいた。

ギリギリ落ちることを免れた私だったが

その時にはもう、心が悲鳴をあげていた。


『もう帰りたい…』

涙が頬を伝う。

そう思った。



順番が来て私たちはアトラクションに乗った。



ただ、苦痛でしかなかった。



周りを見渡すと、

女の子は他のクラスの友達と楽しそうにチュロスを食べていた。




私は、歩くのも、誰かと一緒にいるのもつらかった。



ここで、パタリと倒れて死んでいきたい。


そう思った。



だけど、現実はそううまくはいかない。




そして、お昼になった。

私は、いつもはフルコースが出てくるような料理を食べるのが決まりなのだが



その人物たちは、ハンバーガーのお店を選んだ。



私も合わせる…。


あんなことがあった後では

まったく食欲が湧かなかった。



ハンバーガーとポテトを残し

ゴミ箱に捨てた。



『ハァ…』

辛い…


今何時だろう…

腕時計を見ると、まだ1時30分だった。



そして、最後にもう一回アトラクションに乗ろうって事になった。



緩めのジェットコースターを選んだ。


そして、みんなと同じように

手を上にあげ

絶叫した。

一人だけの世界だったけど、それは楽しかった。



でも、言われたの。


「凛って、絶叫するんだね

楽しむんだね」って。



少し引かれた…。




私だって、楽しむわ!って思ったけど、

あまり話したことのない人だったから

なにも言えなかった。




そして、誰よりも早くバスに戻った私たち。



スマホが鳴った。



その人物から写真が送られてきた。



そして、

その人物の口から

衝撃的な言葉が発せられるのだった…。


「ねぇ…」



「凛さぁ…」




「もっと楽しもうよ」




『はぁ?

どの口がいってんだよ?

アトラクションが乗れないって騒いだのおまえじゃん

楽しそうにしてないの

おまえじゃん

何いってんの?』

そう心の中でキレた。




「うん……」

私は苦笑いで返事をした。



スマホに送られた写真は

どれも浮かない顔で写っていた。



そして、

すべて消去した。


そうすると

皆が続々とバスに戻ってきた。


賑やかな声があちらこちらから聞こえる。



私はずっと、

窓から見える景色だけを

目で追っていた。




先生が聞いた。

「皆さん楽しかったですか?」



「楽しかった」「サイコー」

そういった声がたくさんだった。


私も嘘をついて楽しかったって言った。




本当はちっとも楽しくなんかない。

ものすごく嫌だった。

自分に嘘をついてまで楽しいなんて言ってる自分も嫌だった。



すごく嫌だった…。



その事があって

私は某テーマパークが嫌いになった……。

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