推しのVtuberが義理の妹だった件

綾瀬 りょう

第1話 秘密を、知りました①

 毎日決まって21時から始まって一時間ほどの配信を、俺はスマホで楽しみに見ていた。


『やっほー、今日もみんな元気してる??』


 画面の向こう側で元気に話す女の子、名前はブロッサム。俺が推しているセルフ受肉のVtuberだ。


 淡いピンク色の髪の毛を耳の上でツインテールにして、瞳は金色。ぱっちりお目目で顔面偏差値は俺が知るなか名がでも上位に位置する。服装は、水玉のワンピースに茶色のローファー。


 顔面が強強なのに、どうして衣装をもっと工夫しないのか、初めて配信を見つけた時からずっと不思議に思っている。絵のクオリティが高い彼女ならよく見かけるフリルの沢山ついた可愛い衣装の女の子が書けると思う。


 なにせ同時接続が5人以下。


 はっきり言って過疎ってる上に、コメント欄をも荒らす奴が多くても、彼女はめげないで、元気に配信を始めて、明日の活力を注入してくれる終わり方をする。声は割と高く、フワフワとした女の子らしい話し方が、癒される。



 配信も終盤に差し掛かった時に、言葉を切りながら話し始める。きっと画像が動く様になっていたら左右に揺れて、そわそわしているのが想像できる。


 現在の画面上のブロッサムはまだイラストを動かすことができないため、「新人Vtuber」も名乗れていない、「Vtuber準備中」なのだ。


『しばらくの間、毎日配信をお休みしようと思います』


 今日は珍しく俺を除いて三人ほどの同時視聴者さんが居て、ブロッサムの発言に思い思いに反応をしていく。引退を懸念するコメント、毎日配信頑張っているから少し休憩するのもいいんじゃないかっていう応援コメントもあった。

俺は基本的にコメントを残すか毎回悩んでいるのは、こっそりと応援したい気持ちもありつつ、他の同時視聴者の皆さんにどう思われるか心配なのだ。


『きゃっ』


 悩んでいると、突然ブロッサムが悲鳴を上げる。と同時に、僕の部屋の電気も切れた。


 外からは雨の音が聞こえていて、遠くで雷の音が聞こえているた気もした。

スマホに写るブロッサムの画面は黒いままで、もしかして、ブロッサムも停電しているのかな。


 急いで部屋の外に出ると、最近家族になった妹、大久保姫香が同じく自分の部屋から顔を出していた。とてもかっこいいヘッドフォンをしている。黒をベースにしていて、ゲームをやっている人が良く付けているような、立派なものだった。


「げ」


「毎回俺の顔見るとその嫌そうな顔辞めろよ」


 苦いものを潰したような顔になる。初めての出会いが最悪だったのもあるかもしれないけど、折角家族になったのに、毎度嫌な顔をされると結構ダメージがでかい。可愛い妹が出来たと内心喜んでいたから余計に、辛く感じる。


「いるとは思わなくて」


 そっと俺から視線を外す姫香は、直ぐに部屋の扉を閉めて階段の方へと進む。俺の部屋のが階段寄りの部屋のため、気まずそうな顔をしながらスマホを懐中電灯代わりに歩いていた。


「ブレーカー、ブレーカー」と呟いて目の前を歩いていく姫香。


 家に来て一週間。それなりに仲良くやっている___、つもりでいる。なにせ母さんがやっと見つけた頼れる旦那様。父さんが仕事の事故で亡くなってから早十年。女手一つで俺の事を育ててくれた母さんが見つけてくれた人だから俺は、再婚を賛成した。


 階段を下りていく姫香の後をついていく。来て直ぐに間取りとかは大体は教えたけど、ブレーカーの位置とか直ぐに覚えられる自信は俺にはない。


 案の定、一階にたどり着き、キッチンの方に歩いて行くが、懐中電灯代わりにしているスマホをあちらこちらに振り回す。


 初対面をしてから姫香が家に引っ越して来るまで一度も会っていないから、中々素直になれないのかもしれないけど、困った時位素直になって欲しい。年下の女の子に頼られない位、頼りないかな。


「優しいお兄様がブレーカーを上げてあげよう」


 自分も早く部屋に戻って配信の続きがを見たい。困っている姫香を置いてきぼりにするほど、人でなしじゃない。


 キッチンの電気をつけると、顔を赤らめた姫香が居た。


「ありが、とう」


 姫香が中学二年生で俺が高校二年生で身長差があるのが当たり前なのかもしれないけど、自然と上目遣いになる、姫香。大きい目がクリっとしている姫香の表情に心臓がぎゅっと締め付けられる。


「どういたしまして」


 緩みそうになる口元を隠しながら平然を装ってみたが、姫香は俺の顔をいつもの苦いものをかみ殺した表情に変わっていた。


「むかつく」


「妹の役に立てたのが嬉しいんです」


 会うたびに嫌な顔をされていたら、嬉しくなるのは当然。


「早く戻らないと」


 俺との会話をぶった切ると、階段を駆け上がり、部屋に閉じこもる姫香。配信の続きが気になるので俺も慌てて自室に戻る。部屋の電気が付いており、机の上のスマホ画面のブロッサムも配信を再開していた。


『ごめんね、ちょっとトラブっちゃいました』


 コメント欄にはブロッサムを心配する声が書かれていた。


『途中になっちゃいましたけど、休むと言っても、一か月くらいを目標にしているのでそしたら、パワーアップしてちょっと!!!!』

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