第5話

 「百合くん」

「はい、何ですか?社長」

「百合くん、君はもう社長同然なんだ。私は唯の御隠居と思い、接しなさい」

百合を諭す様に話すのは、『eden』前社長、真城理音。理音は常に朗らかであり、社員や子供には優しく接している。

「…そう、ですね。分かりました、御隠居」

にこり、と微笑む百合。

「百合さーん、お客様をお連れしましたー」

ギィ、と扉を開いたのは百合の秘書となった真城すずめ。

すずめは理音の孫息子であり、性格は理音から受け継がれている。

「お客様…?」

「はい。なんか、お得意様から」

「おぉ!messiahからか」

声を上げ、紅茶を淹れ始める理音。

「御隠居?」

「私がこの組織を立ち上げた時からの馴染みでね、昔から良くさせて貰ってるんだよ」

トポポ…と紅茶をティーカップに注ぐ理音。

「さぁ、入り給え」

「「「失礼します」」」

入ってくるmessiahの隊員。

「?!ツユ、姉さん…?」

百合は、ツユを見つけた。

どくん、どくん、どくん。

段々速くなる百合の鼓動。

理音は百合に優しく話し掛ける。

「百合くん、落ち着き給え。…そう、例え姉と云えど君の過去は知らない。だから、そう焦る必要も無い」

とん、とん、と背中を優しく叩きながら深呼吸を促す理音。

過呼吸気味だった百合の呼吸も、落ち着いた。

「…感謝します、御隠居…」

「こんなの、感謝される程でも無いさ。君達も、飲み給え。淹れたてだよ」

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