04


「ぅ……おえっ!」


開け放たれたままの玄関扉、その先には“人間だった”肉片と血と汚物が散乱している。


「こら、宗次郎…」


えづく西崎を叱りつけてから、ソラは損傷の激しい御遺体に深く合掌し、目視で状況を精査した。

被害者らは、総て鋭利な牙で肉体を破壊され、魂魄を食いちぎられている。

今まで見てきた犠牲者の肉体損傷と同状況ではあるが、他と異なるのはまるで憎悪を叩きつけるかのように遺体を原型なく残忍に切り裂いた点だ。

おそらく、これは明確な悪意を以て敢行された復讐なのではないだろうか?


「よせ。御遺体に失礼だろう…。それに不本意だが、ここからは警察に連携を要請しなければならない」


人死にが起きた場合、そこから先は警察などの法務機関の領分であるため連絡が義務付けられているのだ──と、文音の記憶から知識を引き出したソラは手間の多さにあからさまに溜息をついた。


「西崎、各所への連絡は頼んだぞ。私は、この状況を作った犯人を追う」


「おう、任せとけ。必要になったら連絡しろよな、すぐ飛んでく」


「ああ」


短い返事を残して立ち去った文音を見送りながら、西崎はふいにもたげかかった嫌な予感を被りを振ることによって払拭した。

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