第48話 お見舞い


なんだ、これ…俺の口座には20億円の金額が振り込まれていた。


振り込み名義人は『立花…』『キング&ノーブルニートクラブ』のオーナーだ。


「20億円も振り込まれていますが…」


「ワルキューレ13人+研修生2人のスナップビデオだぞ…とんでもない価値だ、この位の価値はある…それで次回作なんだが」


「俺はそれは専門じゃない…なにかのついでなら構わないが、率先して撮ろうとは思わない、それに基本は大会絡み以外じゃ恐らく『殺し』はないから難しいかも知れない」


「そうか…残念だな、お金なら幾らでも払うのに…駄目?」


「駄目ですね…すみません」


俺は好きで人を殺しているんじゃない…巻き込まれた結果、人を殺し続けている。


だが、可笑しな事に…平和な生活を送っていた時よりも充実している気がする。


本当に可笑しい。


平和な生活を失った筈なのに今は凄く心が穏やかだ。


「そうか…凄く残念だ」


「積極的には撮ろうとは思いませんが、もしまた機会があったら、その時はプレゼントしますよ」


プレゼント?


俺は一体、何を言っているんだ?


「そうかい…気長に楽しみに待っているよ」


「ええっ、もしその機会に恵まれたら、今回以上の大作を進呈します」


「ありがとう」


随分変わった物だ…立花に嫌悪感を抱かなくなっている気がする。


◆◆◆


サクヤヒメが引き篭もりになっていて、神9を引退する。


その話を神代から聞いた。


『俺のせいなのか?』


少し悩んだ。


どう考えても…俺のせいだな。


もしかして殺人鬼をしているのに、スプラッタ系は駄目だったのか…


まぁ良い、同じタワマンに住んでいるんだからお見舞い位は行くべきだな。


サクヤヒメの部屋は24階。


流石神9、住んでいる部屋はかなりの高層階だ。


このマンションの中にあるスーパーで適当に買い物をしてからサクヤヒメの部屋に向かった。


ピンポーン…ピンポーン。


「はい…ひぃ…ラビットファング?!」


「お久しぶり、元気してたぁ~」


「ああっああ…元気だよ」


顔が真っ青だ。


「サクヤヒメ…この間は、そのゴメン」


「あははは、謝る事は無い! 殺人鬼なんだから、何でも有りの世界だから…あれも有りだよ…ただ、私がそれに耐えられなかった…それだけだよ」


「そう?」


「そうだよ…ただ、私はあの時の泰明を見て怖いと思ってしまった。 ああはなりたくないって…思った…まぁビビっちゃったんだよ」


「誰だって怖い物はあるでしょう?それが当たり前じゃないですか?」


「普通ならそれで良いかも知れない…だけど殺しあいの中でビビっちゃったらそれは死に繋がるわ、当たり前じゃない世界、そこで私も貴方もやっているの…だから、これが私の限界…だからこそ引退を決めたの」


「ええっ引退しちゃうんですか?」


「まぁね…潮時なのよ」


確かにこんな仕事長く続けるものじゃないな。


「そうですか…ちょっとキッチン借りますね」


俺は買って来た食材で、お粥と消化に良い物を手早く作り…サクヤヒメに差し出した。


「料理…上手いんだ」


「まぁそこそこはね…それじゃ、俺はこれで」


「その…ありがとうね」


「どう致しまして」


俺はサクヤヒメの部屋をあとにした。







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