第36話 サイボーグかアンドロイド


今日は出社しないと決め込み部屋で過ごす事にした。


昨日、アイアンテイルズを殺した時、今迄と違う感情が俺を襲った。


それは鈴木に


『泰明係長、顔色が悪いですよ』


そう心配される位だった。


『ああっ、流石に人を殺せば多少は俺だって落ち込む…話かけないでくれるか』


そう言って誤魔化したが…違う。


今の俺は人殺しをしても落ち込んだりしない…


ただ、昨日殺したアイアンテイルズに少しだけ懺悔の気持ちがこみあげただけだ。


最初に俺が殺した人間は『俺を毎日虐め続け、自殺に追い込むような奴ら』だった。


あの時の俺は本当に毎日が辛く何時自殺しても可笑しく無かった。


そして、ハンティングゲームに日本最強殺人鬼決定戦は殺しあい。


政五郎は『殺す』と俺に言って来た。


家族は巻き沿いだが、俺の助けを振りほどいたのだから自業自得だ。


まぁ子供には同情するけどな。


此奴らは殺しても良心の呵責は無い。


俺を殺そうとしたのだから、殺されても仕方がないだろう。


だが、昨日の奴は違った。


あの馬鹿アイアンテイルズは…


『ほら、さっさと来い…可哀そうだから簡単にホールドして終わりにしてやるよ』


そう言っていた。


俺を殺す気の無い人間を殺してしまった。


プロレスラーというだけで、俺を殺す気のない奴を手に掛けた。


まぁ、あれしかなかった…そう思うしかないな。


多分、俺は落ち込んでいたのだろう…俺は明日香と麗を抱き寄せ、そのまま寝てしまった。


気が付くと俺の中でこの2人が『凄く大切』そう思えるようにどんどんなっていく気がする。


これがどんな感情なのか解らない。


◆◆◆

起きてからも、暫く二人と一緒にイチャついているといきなりインターホンが鳴った。


「よう、泰明~約束を果たしにきたぞ~」


しかし、神代は地位が凄く高いのに此処に良く遊びにくるな。


総理大臣が10分会見時間を貰うのに必死だという噂もあるが…まぁガセだろう。


「約束?」


「2人の義手と義足を頼んだだろう? 最高の物を用意したんだぞ、今日この時しか、時間が取れなかったんだ、神代の最高のスタッフを連れて来た」


「神代の技術は世界一~ 我ら神代の特殊技術班です。神代様のご要望通り、ブラックボックスの技術を使い最高の物を用意しましたぞ」


「ブラックボックス?」


ブラックボックスってなんだ。


「はははっ、ブラックボックスとはね、色々あって『今は使えない』オーバーテクノロジーだ。表に出すと金持ちにとって都合が悪い物を格納している物だよ…そうだな、君が知っている物だとCD-Rが此処に十年以上眠っていた…音楽産業が可笑しくなるから封印していたのに…まさか外部の人間が作り上げるとは思わなかったけどね」


「凄いですね…」


「そんなの大した事じゃ無い…此処には『水をガソリンに変える装置』すらあるんだ…石油王に泣きつかれて封印…」


「口が過ぎるぞ…」


「あっ…すみません…少年、今の技術より半世紀進んだ技術を見せてあげよう」


「あの泰明、これはどう言う事?」


「あの…」


「明日香、麗、ちょっとした案件を片付ける時に、対価として義手と義足をお願いしたんだ…その約束を果たしてくれるみたいだ」


「「ほんとう?」」


「ああっ、約束は守る、それが神代だ!それじゃ泰明、これから取り掛かるからな、私は忙しいので後は此奴らに任せる!技術は保証するから安心したまえ」


「ありがとうございます」


神代は手を振って去っていった。


◆◆◆


「神代の技術は世界一――っ」


何だこれ、悪の組織の改造手術のベッドみたいな物が用意されていく。


「大丈夫なのですか…」


「あはははっ心外だな、今から取り付ける義足や義手は、最新技術の、節電義手や、バイオニック義足、ロボット義足がおもちゃに感じる程の品物だ…軍事技術も使われている近未来の物なのだよ」


「まさにこれはSF…映画の中でなら見た事はあるだろう?今の技術じゃない、未来の技術、 ロボットアーム ロボットフッド!コンピューターと人間の神経を繋ぎ、完全に手足を動ける状態にする…見た目はSFのサイボーグやアンドロイドの手足だ…放熱関係があるから人口皮膚が貼れないのが今の所の欠点だが…どうだね」


「「凄い」」


2人とも驚いているな。


いや、誰でも驚く…目の前にあるのは…SF映画や漫画で見る、セクシーアンドロイドの手足だ…葉巻が似合う宇宙海賊の相棒の手足が…1番近い。


「歯の方も用意したけど、こちらも入れるだろう」


「それは要らないわ」


「私も要らない…」


「折角だから入れて貰おうよ」


「いや…だってそれ入れたら、そのキスしながらの食事してくれなくなるんでしょう?」


「歯が無い方が奉仕の時きっと気持ち良い筈です」


そう言われても…そうだ。


「だったら今度は2人が食べさせてくれよ…それに俺、言わなかったけど、甘噛みとか好きなんだよ…キスだって好きな時にして良いからさぁ」


「甘噛み…好きなの? ならお願いするわ」


「そう言う事なら…良いですよ…ちゃんと食事は今まで通りにして下さいね」


「解った」


「あのいい加減イチャつくのは止めて貰えますか?作業に入りたいんで…」


「「「ごめんなさい」」」



◆◆◆


施術は3時間程で終わった。


無事、手足がついた彼女達は…どう見てもSFのサイボーグかアンドロイドにしか見えなかった。


「これで終わりです…それでは我々は撤収します…これマニュアルと備品です…では」


お金で買えない技術…きっと俺はとんでもない借りを作ってしまった…


様な気がする。


まぁ、今と変わらないか…

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る