第28話 既に大卒で上場企業勤め


「ちょっと入らせて貰うよ」


朝からインターホンが鳴ったから何かと思えば…モニターの先に神代が居た。


その横にはイナダヒメとサクヤヒメが居る。


「どうしたの顔色が悪いよ?」


「急に汗かいてどうしました?」


「明日香、麗…組織の人…神代が来た…絶対にこの部屋から出るなよ」


「「解った(わ)」」


そう言う二人も顔は青く少し震えている。


出ない…そういう自由は俺には無い。


「どうぞ…」


俺はドアを開け、三人を招きいれた。


◆◆◆


「それで、今日はどうしたのですか?」


絶対に碌な話じゃないよな。


神9が二人も居るし…


「そう緊張しなくても良いよ…私の用事はこれだけだから…ほら」


「あっ衣装?!」


「なんだ、忘れていたなんて無いよね? 私の衣装だぞ! お金じゃ絶対に買えない非売品だ…ほら額装して右下にサイン入りブロマイドを入れておいた…左上には『泰明くんへ』って入っているんだ…凄いよな…どうだ嬉しいだろう?」


「はい、嬉しいです…」


「喜んでくれて良かった…私の用事はこれだけだから…それじゃ、神代様、サクヤヒメ」


そう言って手を振りながら帰っていった。


サクヤヒメの機嫌が悪い。


何故だ…


「ねぇ、泰明…なんで私のサイン入りブロマイドが額装もされずにテーブルにあるのかな?」


ヤバい…殺される。


そう感じる位殺気だっている。


「あははは、忙しくて買いに行く時間が無かったんです…だけど、ちゃんと大切にしているんですよ…さっきも手に取ってニヤついていました」


「まぁ、それなら良いや」


「泰明に一応言って置くが…それはそれなりに価値がある物だ、大切にした方が良い…」


「神9は美少女揃いで人気者だからですか?」


「確かにそれもあるが…彼女達はアイドル殺人鬼だ」


「アイドル殺人鬼?」


「アイドル殺人鬼だ、とはいえ殺人鬼である以上はある程度素性を隠さないとならない…筆跡は勿論、遺伝子情報もだ…だから君が貰った物は君が思っている以上に価値がある…大切にする事だ」


確かにそう言われればそうかもな…


「まぁ、それはさて置き、今日は進路調査に来た」


「俺、まだ、そういう時期じゃないし、就職や進学は現状無理ですよ」


「それなら、もう終わっているよ」


「サクヤヒメの言う通りだ…一応これだ。」



◆◆◆


未来泰明


高校在学中にその優秀さからデルモンド王国の王族に見染められ国立デルモンド高校に転校。


優秀故に僅か数日間で飛び級をしデルモンド大学をも1週間掛からず卒業。


在学中に王子を助けた事からシュバリエの地位を貰う。


神代グループの本社にて大卒扱いで採用。


今現在 (株)神代工業の総合企画部にて係長に昇進


◆◆◆


「なんですか…これ」


「君の経歴だが?! 良かったな、もう大学を卒業して上場企業であるうちの社員だ…自慢できるぞ」


「冗談ですよね…」


「神代に冗談は無い…君のスポンサーで表の肩書を用意出来る者がいなかったから私が用意したんだぞ! この位の肩書が無ければタワマン暮らしなんかできなくて怪しまれるだろう?」


言われてみればそうだ…


「確かに」


「それで、これがうちの会社の社員証になる、これは実は『裏の身分証明書』を兼ねている。警察に見せれば、現行犯じゃ無ければまず大抵のことは見逃して貰えるし、権力者も友好的になる…国外には通用しないが…そうだな総理大臣の頭を人前で叩いてもこれを見せたら『痛いよ泰明くん…やめろよな』そう言って許して貰えるよ」


「凄い…」


「まぁ、君はマニアックなファンやスポンサーが付いたから早目に渡した」


お礼を言うべきかな。


「ありがとうございます…所で、進路調査って何でしょう?」


「殺人鬼としての進路じゃないか? 当たり前だろう?」


やっぱりそっちだよな…

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