第10話 泰明の過去と勝利


「神代様が気になさっていたようなので泰明について調べてみました」


流石はアマテラス仕事が早い。


「凄いな、こんな短期間でもう情報を集めてきたのか?」


「この程度簡単です」


「いや、それはアマテラスだからだ、ありがとう」


「お褒めに預かり光栄です」


此奴は凄いな。


Kじゃ敵わない筈だ。


『本物は弱者から生まれる』


姉さんの意見は正しかった。


未来泰明


少女を庇った事から同級生の中の中心人物智久に嫌われ虐めの的になり不登校になる。


そして、その不登校を許さない親とはたえず喧嘩していた。


そして、その結果『自殺』を考える様になった。


此処迄は良くある話だが…この話は少し抜けている。


まず、両親は行方不明になっている。


恐らくは『不登校』を許さなかったから…泰明が殺した。


アマテラスの協力者が泰明の家を調べた所異臭を感じたそうだ。


その臭いを辿り畳をどかしたら穴が空いており、そこには泰明の両親らしき男女の腐乱死体があった。


それとは別に、虐めの主犯格の智久を含む3人、そして泰明が助けたとされる少女は行方不明になっていた。


つまり、泰明は最低で2人、最大で6人の殺害をした可能性が高い。


泰明が此処に来た理由。


それは、虐めによる自殺じゃない。


『人を殺して逃げられないと悟り死のうと思った』


恐らく、こちらが正解だ。


「ウサギに交じって一匹オオカミが居たのか…これじゃKじゃ勝てない筈だ」


「神代様、随分嬉しそうですね」


「ああっ姉さんが言っていた『本物は弱者から生まれる』そのタイプを初めて見たからね」


「確かに…ですが、どう考えてもSには勝てないと思います」


「アマテラスの言う通りだが、ツクヨミはどう思う」


普通に考えたらSには泰明は敵わない。


だが、何故だかなにかするような気がしてならない。


「確かに6人を殺したのであれば素質はありそうですが、経験が少なすぎます」


「確かにな」


確かに神9には絶対に今の泰明じゃ勝てない。


だが、Sはどうだ?!


強敵とは戦わず『数を殺しただけに過ぎない』


俺の中では戦いの進み方次第であれば充分泰明にも勝機はある。


「まぁどうなるか楽しみだな…そうだ二人がSに賭けるなら俺は泰明に賭けようじゃないか?100万円位握るか?」


「良いですね、これはボーナスみたいな物ですね」


「宜しいのですか?」

「構わない…半分ボーナスみたいな物だ、まず勝てない筈だが、俺は泰明に勝って欲しい…そう思っているからな」


◆◆◆


「ハァハァ…早く逃げなくちゃ…」


SがKの死体でやっている間に少しでも早く山を降りないと…


さっき迄俺の有利を疑わなかったが、必ずしもそうでは無い事が解った。


このルートにも沢山の罠があった。


そのせいで、思った様に早く進めていない。


罠は狩る側の物だ。


案外Sはその位置を知っているのかも知れない。


そうだったら…


相手は最速で此処にくる。


そうしたら、追いつかれる可能性は高い。


もう20分は経っている。


下手したら、もう終わらせて追いかけてきているかも知れない。


Kとは違い完全に彼奴の方が腕力は上だ…多分勝てない。


「きゃぁぁぁーー助けてーーっ」


割と近くから悲鳴が聞こえてきた。


慎重に様子を見に行くと陽子が罠に掛っていた。


これで勝った。


陽子が掛っている罠はトラバサミ。


足にしっかりと食い込んでいて血が流れている。


あれじゃ、真面に歩けない。


このまま放置すればSは陽子を襲う筈だから、更に時間が稼げる。


このまま放置すれば勝利確実だ。


「痛い、痛いよぉぉぉぉーーっ誰か!誰か助けてーーっ」


馬鹿な奴だ。


叫んでいたら敵が来る。


そんな事も解らないのか…


しかし、どうして此奴こっちに来たんだ。


まぁ良い、此奴を見捨てるだけで良い。


それでこのゲームは俺の勝利で終わる。


だが…


「罠にかかっているんだ…もうじき此処にSが来る」


「嘘、いや…これ凄く痛いし外れないの…助けて」


「外すのは良いけど? その足じゃ逃げられない…どっちみち死ぬ事になる」


「いやあああああああっ、助けてお願い、お願いします」


この足の陽子を連れて歩いたら、確実に捕まる。


もし、彼女を助けたいなら…此処で迎え撃つしかない。


一つ提案してみるか…


「もし助けるとしたら…ここでSを迎え撃つしかない…助ける条件として俺の言う事を聞く事だ、それで良いなら助けてやるよ」


「解ったよ、助けてくれるなら何でも言う事聞くよ」


「絶対だからな…後で反故は無しだからな」


俺は陽子に手を貸してトラバサミを外した。


「痛いっ、駄目だよ痛いっ」


トラバサミは凄く深く食い込んでいたから足が凄く痛々しい。


多分、骨まで下手したら折れているのかも知れない。


「それじゃ、助けてあげたんだから約束は守れよ」


「約束だから…良いよ」


「それじゃぁ…」


俺はある提案をした。


「嫌ぁぁぁぁいやだ、酷いよーー」


「なら良いや…どうせ歩けないんだからこのまま放置していくそれで囮になる」


「助けて、お願い、殺されちゃうよ…」


「だったら俺の言う事を聞けよ! 助けてやるから」


「グスッ…解ったよ…死にたくないから従うよ…酷いよグスッ…泰明さんもケダモノだったんだね…」


「勘違いするなよ」


俺は陽子に命令した。


泣いているけど仕方が無い。


こうでもするしか勝つ方法が浮かばない。


◆◆◆


「思ったほど逃げてねーな」


「罠があったんだ…仕方ねーだろうが」


「それじゃさっさとお前を殺して、今度はあのブスを犯すとしますか…やっぱり死体じゃ犯してもしまりが無くて今一なんだよな」


あの状態で本当に犯してきたのか…


脳味噌がはみ出て顔が潰れた女の死体。


良く勃起したもんだ。


「そうか、だが俺も只じゃ殺されないからな」


「それじゃ、すぐに殺してやるよ」


Sは俺を殴ろうと走ってきた。


此処だ、此処で失敗したら…俺は死ぬ。


「私は…犯されるのが好きな変態です…犯して、犯して下さいーーーっ」


下着1枚身につけない裸の陽子が叫んだ。


思った通りだ。


此奴は無類の女好き。


自分の意思を無視して目が陽子の方を向いている。


勝った。


俺はKと戦った時に戦利品として奪って置いた2本のメスをSの腹に両手でそれぞれ突き刺した。


刺した瞬間にそのまま切腹の様に左右に引いた。


お腹は完全に切腹した様な状態になり、お腹から内臓がはみ出てきた。


「貴様ぁぁぁやりやがったなーー」


俺の勝ちだ。


Sは臓器が飛び出て来ない様に両手でお腹を押さえている。


「おりゃぁぁぁーー」


俺はSを蹴ろうとしたが避けられた。


「やめろーーやめてくれーー」


「うるせーよ…お前は今まで沢山の人間を殺してきたんだ、お前の番が来ただけだ」


「解った…お前の勝ちで良い…このまま黙って山を降りれば良いんだろう…ハァハァそら行けよ」


「いや、お前を殺して置いた方が無難だ…死ねよ」


俺はひたすらSのお腹をめがけて殴った。


「痛いっいたいた…止めろ追わないから、頼む止めてくれ」


「うるせーよ」


ひたすら手で守ろうがお構いなしに蹴り続けていた。


最後には守り切れず…お腹の中から腸や臓器が零れ落ちた。


「た、た助けて」


「終わりだな」


あれだけ腸がはみ出ているんだ…もう黙っていても死ぬだろう。


だが、此処で止めを刺して置いた方が無難だ。


腸や臓器を押さえているSを蹴り続けた。


「やめて、やめてくれーー痛いんだ痛いんだよーーーっ死にたくない、死にたくねーよ…なぁ助けてくれ」


「知らんな」


「こふっぐふっごふっ、いややめろうがぁぁぁう」


ひたすら蹴ったり、殴ったりしていたら動かなくなった。


腸を踏んでも動かない。


俺の勝ちだ!


「いやぁぁぁぁーー」


裸で陽子は蹲っているが…勝ったんだこれ位我慢してくれ。


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