皆さんに会社を辞めたご報告

 翌日、昼過ぎまで布団の中でボーっとしたり、涙ぐんだり、怒ったりしながら時間を過ごしたカレンは1時過ぎ頃にようやく起き出した。


「……ほんとムカつく。何であたしがこんな目に……」


 いきなり首にされた身としては、この怒りや恨みをどこへ持っていけばいいのか。


 総務部の女性課長は、不当解雇の件は弁護士に相談するように助言をくれた。

 他には、労基、労働基準監督署に告発もできるとも教えてもらっている。


「労基の調査、入ったほうがいいと思うわ。あの会社」


 少し落ち着いたら元職場の地域の労基に相談に行ってみようと思う。




 軽く冷凍ご飯で炒飯を作り、ストックしてあったインスタントスープで遅い昼食を取った後、まず田舎の家族に電話を入れた。


 パワハラとセクハラで、被害者の自分が責任を取らされて首にされたことを説明していたら、何だか情けなくて涙が滲んできた。


「うん、うん……こっちの同級生に弁護士事務所勤めの人がいて、相談するつもり。あたしも泣き寝入りとか嫌だからさ。どうなるかまた電話するね」


 家にいた母親と話をしたら、案の定ものすごい怒りようだった。

 わかる。カレンもこの理不尽な境遇をどうしたらいいかわからないぐらい怒っている。




 次は区民会館のレジンアクセサリーの会のグループへのメッセージだ。


 次回からは参加を再開するので、そこで話を聞いてくれると嬉しい、とメッセージを送った。

 すると講師の義明や会員たちから次々慰めと心配の返信が入った。

 彼らの気遣いが胸に沁みる。




 そして、元同級生のセイジだ。


 彼も午後のこの時間ならまだ仕事中のはず。

 電話ではなくメッセージアプリに、昨日のうちに即日解雇されたことを伝えると、1分もしないうちに電話がかかってきた。



『青山、大丈夫か?』


「……大丈夫じゃないい……」


 もうほとんど泣いてしまっているカレンだ。


『今日はちょっと残業があるんだけど、8時頃で良かったらひまらや行かないか? 話聞かせてよ。奢るからさ』


「奢りなら喜んで行くわ……」


 店主のオヤジさんの目利きが良くて、あの店は何を食べてもおいしい。

 自炊もするカレンは行くたびにレパートリーが増える良い店だった。




 通話を切った後、夜にひまらやへ出かける時間まで不貞寝することにした。


 ハローワークに行くのも何をするのも明日からだ。

 今日はもう何も考えたくはなかった。


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