そして彼は経験値の王となるㅤㅤㅤ

ラグナ・ムアの瑶光

𝙋𝙧𝙤𝙡𝙤𝙜𝙪𝙚: 穏やかなる前夜

episode1: GESUな欲望


――経験値


 それは一般にRPGなどのロールプレイングゲームや異世界系のラノベにおいて自身の強さを表す指標である。敵キャラクターを討伐する事により、獲得する事が出来、経験値を貯めると一般にレベルゲージが上がる。


 また、レベルゲージが一定値に到達することでレベルという指標が上がる。レベルが上がると便利な能力を獲得したり、ゲーム攻略に欠かせないスキルを獲得したり等、様々な恩恵を覚えることが出来る。


 上記の様に経験値は貯めれば貯める程、お得な存在であるわけだが、只一つ問題点が存在する。

 それは現実の世界にそんなものは存在しないという事である。


 念じようが、祈ろうが、決して見ることの出来ない不可視の存在なのである。

 もしもであるがそれを見ることが出来たとしたなら。


――人生観そのものが変わることだろう。



◇  ◆  ◇  ◆  ◇



「……これは何の冗談だ」


 寝起きでまだ気怠い目を擦り、眼前の違和感に思わず言葉が漏れる。

なにせ青い液晶が煽るように空中に浮かんでいるのだ。


《 𝕐𝕠𝕦𝕣 𝕓𝕒𝕤𝕚𝕔 𝕚𝕟𝕗𝕠𝕣𝕞𝕒𝕥𝕚𝕠𝕟 》


 学名: 𝓗𝓸𝓶𝓸 𝓼𝓪𝓹𝓲𝓮𝓷𝓼(3,378,471,241/3,378,471,241)

個体名: 星月 夜 (3/3,378,471,241)


生息地: 地球 (1 / 8)

 母語: 日本語

公用語: ――― (0/ 5622)


 筋力: 32kg  (54,210,967/3,378,471,241)

瞬発力: 19km/h (67,287,287/3,378,471,241)

耐久性:  1 (――――/3,378,471,241)

応用脳: IQ102 (1,766,217,872/3,378,471,241)

因果力: 𝐸𝑅𝑅𝑂𝑅(1 / 3,378,471,241)


𝙇𝙚𝙫𝙚𝙡: 𝟰 (1,766,217,872/3,378,471,241)

𝓼𝓴𝓲𝓵𝓵: Power Level1, Speed Level 1 , Language Level 1

𝓼𝓹𝓮𝓬𝓲𝓪𝓵 : 【Search 】,【𝖐𝖆𝖗𝖒𝖆】

𝓝𝓮𝔁𝓽𝓛𝓮𝓿𝓮𝓵 : 2892の経験値が不足しています。


――――――――――――――――――――



 液晶では上記の様な不思議な画面が青白く映し出されていた。

ボヤの掛かってた思考を頬を思いっ切り叩く事で吹き飛ばし、眼前の信じ難い現象にある一つの結論へと裏付ける。


ほお――これはつまるのところ


「……俺のステータスって事か」


 思いっ切り深呼吸して、浮かぶ液晶に触れてみる。あれっ触れられない。


 現代科学では証明出来なそうな、謎に浮かぶ液晶画面を目の当たりにして自分の

仮説であるMYステータス説に現実味が帯びてくる。


 目を細め、食い入るように液晶を見つめてみる。


「――色んな値が書いてあってと……この後ろの分数は何なんだ?」


試しに多用されてる“3,378,471,241”の数値をベッド正面にある勉強机上部にある愛用PCでGoogla先生に検索を掛けてみる。


「教えてくださいGoogla先生と……へぇこれ今の世界総人口なんだ」


 先生によると、これは現在地球上に生存する人類の数らしい。

 てか今から100年前程には倍の72億人いたらしい。南極で復活を遂げた古代のウイルスとやらにやられたとある。

 まぁ昔の話なんてどうだっていいか、大切なのはNow、現在だ。


「多分この数は、恐らく世界単位での俺の順位を表しいるっぽいけど、その場合俺の名前が三位という事になるが……ふむ、俺の名前がイカしてるからって事なのか?」


 自分で呟いてはこれはあり得ないと否定する。イカしてるから三位というのは流石に腑に落ちない為である。

 そもそも名前が三位と表記されてるのが意味不明であるのでこれは無視多分良いだろう。


「生息地とか言語とか良いとして、筋力も瞬発力もまぁ普通ぐらいか?耐久性 1 は高い方なのか?うん、良く分からん。IQは100が平均だった気がするし、ミリ平均より上と……なんか普通じゃね。」


 自分のスペックを実際に目の当たりにしてその凡庸さに軽いショックを受ける。

自己評価ではもう少し高かったのだが、現実は甘くないらしい。


「んで、この因果力って何だ?唯一ERROR表示だけど、なんかこれだけ俺一位っぽいけど、これは喜んでいいんだろうか?」


 因果とは基本、原因と結果のセットを指す言葉であるがこれが何を指しているのか。

 ともかく思考を全て明日の彼方へ吹っ飛ばして喜びの咆哮する。


「しゃぁぁぁぁ!!!!一位だぁぁぁ!!!」


「――五月蠅いよ夜!少し黙りな!!!」


 全ての人類の頂点にして、我が家の絶対王者である母から喝が入れられる。

咆哮を止め、はしゃぎすぎたと少し自省。

 落ち着いて、次の項目を確認していく。


「俺のレベルは4かぁ微妙。で、スキル諸々はまぁ普通っぽくて、このSpecial様よ、【Search 】はド定番の何か検索する系で、次の【𝖐𝖆𝖗𝖒𝖆】これなんて読むんだ?farmaっぽいけど」


 気持ちかなり声を抑えて喋りを再開する。


 正直サーチはGoogla先生がいる使用することは無さそうなんて思ってみたりするがどうなんだろうか?

 早速、人類全叡知の結晶であるGoogla先生にfarmaとは何なのか聞いてみる。


「farma,farmaと……検索結果は存在しません?じゃあこれ何のことなんだ?」


 人類の叡知が破れた事に驚愕する。てか俺の読み方が間違ってる可能性大。

 その場合この謎のSpecialは永久のお蔵入りになってしまうが。


「お願いします、俺の秘めたる可能性であるSearch 先生、この謎Specialについて教えて頂けないでしょうか。この通りです。」


 精神で土下座をして、誠心誠意の純真無垢の真心でお願いをしてみる。


『了解です。謎のスキルの名称【𝖐𝖆𝖗𝖒𝖆】は「karma」もしくは「カルマ」と読みます。このスキルは、夜さんの命令によって他者の行動を強制する事。また、他の生物と夜さん、もしくは他の生物同士を赤い糸で繋げたり出来ます。質問が御座いましたらまたお聞き下さい。』


「は、はぁナルホド成程、ありがとうございます。」


 懇切丁寧な説明に頭が上がらない。これから尊敬と敬称の念を込め、Search尊師とお呼びしようかな。


 なるほど、俺の平均的頭脳で理解出来たことが2つ。

 謎スキルが「カルマ」って言う事。

 なんか凄そうなスキルであるって事ぐらいだ。


「Search尊師のおかげでカルマ君について何となく分かったけど、どうやってこの子使うんだろうか?」


 試しにカルマ君、お力をお貸しくださいと念じてみる。


[ナニヲ ワタシ ガ カエマショウカ]


 そう眼前の液晶ブルーディスプレイに表示される。


 因果律とは確か、“現在が決定すると未来も必然的に決まる”的な言葉だった気がする。


「だよねーSearch恩師」


『その通りです。もう少し詳細をお話すると、夜さんが【𝖐𝖆𝖗𝖒𝖆】で出来る事は、夜さん、又は他の生物が実現可能な行動のみです。“一秒でハワイに行かせる”の様な、不可能な命令は無効となります。』


「なるほど、かなり面白い能力だな。それにしても腹が減った。」


【𝖐𝖆𝖗𝖒𝖆】の能力について熟考してたら腹が大きく合唱している。


「俺のご飯、最近江戸時代の奴隷みたいな感じだからなぁ」


 家はそこそこ裕福な家庭であるのだが、俺がゲーム廃人の糞ニート野郎なせいで、

まともな料理を最近食えてないのである。


「昨日も、なんか謎の液体と玉蜀黍とうもろこしご飯だったしな。」


 どうやら我が家では俺に人権は無いらしい。まぁ働かないで飯を貰っている以上、仕方がないといえば仕方がないのだが。

 

「うん。また玉蜀黍ご飯嫌だな、肉が食いてぇよ。」


 綺麗な白米が食えていた頃が懐かしいと思い出す、今日この頃。

肉なんて年単位で食ってない気がする。

 

「さて、一階に下がるか。うん?ちょっと待てよ。」


 不満垂れたれで食卓へ向かおうとしたとき、俺の中で一つのアイデアが右脳を光の如き速さで駆け抜ける。


「もしかして【𝖐𝖆𝖗𝖒𝖆】を使ったらお母様に肉料理作って貰えるんじゃないか?」


 確か【𝖐𝖆𝖗𝖒𝖆】は他者にも使用できて、その者が可能な行動なら強制する事が出来る筈だった。つまりお母様に美味しい料理を作らせる事が可能という訳ではないだろうか。


――これは試してみるしかあるまい。


「俺の【𝖐𝖆𝖗𝖒𝖆】に命ずる。俺のお母様が俺に絶品料理を提供する様に運命を変更して下さい。」


 カッコ良く詠唱的に言ってみたが。なんか凄いダサいのは何なのだろうか。

 

[………リョウカイ イタシマシタ]


 少しの間の後、了承の言葉を残し、カルマ君の電波的なものが消える。

 まぁ兎にも角にも朝飯何が出るか非常に楽しみである。





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