まわりに相談する

 引っ越してきてすぐに内見の時に開かなかったベランダの雨戸をなんとか開けられた。

 ろくに調べもせず即決したため隣に何があるかすら知らなかったが、神社のようなものが建っていた。

 ベランダからは全体を横側から見る形で、内見の時に見に行っていたとしても表からではこの怪しさはわからなかったと思う。

 鳥居のようなもの、人が住むような形ではない建物、その奥に小さな祠。私の知っている神社とは全然違うものだ。

 何の建物だろうと思いつつ、喫煙者の私はタバコを吸う時ベランダでなんとなくいつも祠を見ていた。


 実家が築100年を超えている家のため家鳴りには慣れていたが、コンコン、ドンドン、ドンッ、ダンッ(天井から勢いよく壁ドンしたような音や、床を思いっきり踏んだ感じの音)等、家鳴りとは全然違う音が毎日聞こえる。


 ちなみに2階建ての2階に住んでいるから上に部屋は無い。

 屋根裏に動物が住んでいるとしても、部屋の中からする音は説明のしようがなく、心霊現象としか思えない。家鳴りではないあの音は、所謂ラップ音だろう。


 管理会社や不動産に相談しても、事故物件じゃない、今まで住んでいた方から一度もクレームはない、物的証拠が無いと…と言われたので、小さめのコンコン…と音がし始めた時に動画を撮り始めた。しかし、物的証拠には弱すぎるなと思い少しして録画するのをやめた。

 その数分後にロフトの天井側からドンっといういつもの元気な音がしたので、「空気読めや!」と怒鳴るとその夜は朝までずっと無視できる範囲を超えたラップ音が延々と続き、寝ることができず朝を迎え、寝不足の状態で出社。


 会社の先輩に、残業中相談してみると「そういう祠って夜見たらダメなやつだよ」と言われ、見ないようにしゃがんで吸うようにするなどしたが、何も変わらない。


 ある日、新品に近いシャワーヘッドが突然折れていて、修理の立ち会いのため早めに帰り、修理業者の人と話しながら作業をしてもらった。

 修理に来た業者の人いわく、「古かったらクリーニングしてもこんなに綺麗にならない」「女の人が折ろうとしても折れない」「なんでだろう…」と不思議がっていたので、実は……と家での怪奇現象を話していると、突然業者の方の動きが止まり、目線も私から外れて奥の部屋の方を見ていた。

「どうかしました?」と聞くと、「え…今の、ですよね?え?」「ドンって、今話してた床を思いっきり踏む音…あっちの部屋から…」

 表情や様子から冗談で言っている感じではなかったが、怖がらせてしまったら申し訳ないと思いお茶を濁し、修理が終わったようなので、業者の方にはお礼を言いこれ以上なにか聞こえる前に帰ってもらった。


 しかし、ラップ音や足を噛まれる以外に物が壊れるという実害が出てきたため、安易だが盛り塩をしてみようと試すことにした。


 音がするのはいつも過ごす部屋のみだったため、怪しい神社側の窓側に1つ、ロフト登ってすぐのところに1つ、計2つを設置し様子を見よう。

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