30話 手記は予言書……ってコト?!
「私には見えないし詳細教えてよ」
サリーが訊いた。
「ああ。とは言っても今の状況とは最初から違うんだ。
手記によるとまず、俺は1人で召喚されたらしい。そしてそこでしばらく城にやっかいになって、基本的な、この世界についての知識と戦闘術を習った。そして装備も貰った」
「今回は3人で召喚されたし、城もすぐに出たし、色々と教わってはいない」
リョウの言葉を聞いてサリーが今とすり合わせた。
奴隷にされそうになったのもあって信頼できなかったから、急いで城を出るように仕向けたけれど、ちゃんと滞在していたら勇者としての最低限を与えてくれてたのか。焦りすぎたかな。
「そこに、これは後から書き足した物みたいなんだけど。この色々教えて貰ったってところで人間以外は悪だって刷り込まれたってさ。ここにきて初めて獣人を見たとき感じた違和感はもしかしたらそれだったのかもしれない」
前言撤回。急いでよかった。
「私とユーナちゃんが一緒に来たことで変わったってことは、人数が増えたことで都合が悪いことがあったのか。ほかに理由があるのか・・・・・・。考えられることは色々ありそうね。
とりあえず最初の一歩が違うのだからそこまで気にしなくていいんじゃない?もしその手記に沿ったことが起こるようならその時はその時に対処しちゃえばいいんだし。ある意味予言書みたいなものになるんじゃない?」
「そうだね。それに書かれてる大きなイベントの前兆があったら教えて」
最悪、あの神子に頼るっていう手もあることだし。隣街に住んでることは訊いてあるし、行けば多分会える。
「あ、ひとつあった。前兆ってほどのことは起きてないけど、時系列的には今くらいに。魔法使おうとした時に魔力が暴走して城の一部を焼き払ったって(正確には溶かしたって書いてあったけどそこまで言わなくていいか)。手記には当時のことは覚えてないけど王女が自分の身を顧みず助けてくれたって書いてあった」
「結構やばいじゃん。私には助け方なんてわからないし、巻き込まれたくないから暴走しそうになったら絶対離れてね」
サリーが半分冗談、半分真面目な口調で言った。
あのマント装備してる状態で城の一部ってことは、なしだったら街のひとつふたつ焼いても矛盾点はない。
それに多少は魔力を抜いたから、仮に暴走しても被害もマシになるはず。
……それより、あの王女が助けた、というのは何か引っかかる。
あれと同じ性格の王女なら、他人より自分を優先しそうな印象だった。勇者だけだったからっていうこともあるかもしれないけれど……。少し頭に置いていた方がいい情報かもしれない。
「仮に暴走させちゃっても被害が大きくならないように、暴走で燃やすのだったら、魔法の練習する時は岩場とか水辺とか、そういうところを選んだ方がいいかもしれないね」
それでもやっぱり被害は少ない方がいいよね、ということで提案。
「それはいい考えね。ギルドに行ったらちょうどいい場所がないか訊かないと」
サリーが真剣に同意した。
「信用ないなあ・・・・・・」
リョウがぼそっと言った。
「あ、そうだ。ついでだしその装備着けてみてよ。勇者専用装備ってやつでしょう?」
唐突にサリーが言った。
「そうだ。こっち(手記)に気をとられてすっかり忘れてた。ざっと見た感じ服の上から装備するタイプみたいだな・・・・・・」
リョウはそう言って銀色の胸当てを手に取った。
「こんな感じか?」
マントや剣も見よう見まねで装備したリョウはぎこちない動きを見せた。
「思ってたよりぎらぎらした感じじゃないんだね。もっとこう、ひと目で勇者様っ!って感じになるのかと思ってた」
サリーががっかりしたような顔でそれを見た。
そこにはどう見ても普通の冒険者です、と言った装備を纏ったリョウがいた。
「なんだこのメモ……『マントには魔力制御の魔法付与がされているので出来る限り身に着けておくように』?」
お、それは助かる。苦労して?取りに行って良かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます