25話 転移魔法

「ごめんごめん。楽しみで、つい急いちゃった」


 先走ったサリーに追いついた私たちは歩きながら町へ歩いていた。

「気持ちはわかるけどね。魔法、楽しみだし」

「だよね!測定したあと、実はこっそり練習してたんだよね。あんまり派手なことは流石にやってないけど」

 そう言ってサリーは掌の上に光の玉を出した。それも両手に。

「ほら、同時に2個出せるようになったんだよ」

「ほんとに今まで魔法使ったことなかったのです?」

「うん、魔法ってものが存在しなかったからね。元の世界だと」


 その答えを聞いたルーがこっちをじとっとした目で見ているのは気が付いていたけれど気にしないことにした。表向きは確かに存在していなかったわけだし。


「でも、魔法って元の世界に戻っても使えるのかな。世界が変わったら使えないとかあるのかも」

 結論から言えば、使える。でもそれを今伝えるのはなんで知ってるのってことになるから黙っておく。それにあまり派手なものはどのみち使えない訳だし。

「使えると世間の常識がひっくり返っちゃいそうだよね」

「たしかに。じゃあやっぱり使えないのかなあ。じゃあ今のうちにいっぱい使っとかなきゃだね」

 なにが今のうちか分からないけれど、派手な魔法は使った後の爽快感が気持ちいいんだよなー。

 まあ向こうで派手なのやると後始末が大変だ。何度か後処理を手伝ったことはあるけど、やらかしちゃった人より多くの魔力も必要だから正直関わり合いになりたくない。面倒。




 そうこう話しながら歩いているうちにギルドまで戻ってきた。もともとたいした距離ではなかったから結構すぐだった。


「じゃあ、私はルーとやってくるね。サリーも気を付けて」

「うん!期待してて!」


 そしてすぐに分かれて、私とルーは森に取って返した。雫たちが居るのとは逆方向だったが。



「さて、別行動かな」

「気をつけてくださいね」

「今日中に戻ってくるつもりではいるけど、もし遅くなっちゃたら誤魔化しよろしくね」

「わかったのです」



 そんな会話を交わして、ひとり別行動。

 ルーは結構着いて来れるようになったけど、結局ひとりのほうが動きやすいまである。得意魔法の性質上仕方ないところではある。


「中距離転移かな、この距離なら」

 走っても十分行ける距離ではあるけれど、その後のことも考えると楽した方がいいかな。

 歩いて来た感じ、特に強い魔獣がいた訳でもないから突っ切ってしまうのがいい。王都付近はまだしも、森中に仕掛けはなかった。


 転移の種類は大きく分けて3つ。長距離、中距離、短距離だ。

 長距離はその名の通り。一度行ったことのある場所に転移する魔法だ。これは結構難しくて、一身単体で使うことは少ない。主に地点を記録した魔法具を使う。

 それに比べて短距離は主に戦闘時に使う。消費魔力もそこまでないし、意表をつくにはちょうどいい。使い方としては縮地のような感じ。機動力が必要な相手だと結構便利だったりする。

 間の中距離。これが今から使う魔法なのだけれど、短距離の応用みたいなものだ。視界にうつる範囲に飛ぶ。それだけ。これを連続で使えば結構な高速移動ができる。

 欠点としては魔力の消費量が増えることと、周囲にばれやすいということ。後者は隠密系の魔法を併用することで解決できるけれど、それをやれば結構な消耗になる。

 ……まあ使い慣れ過ぎて、この程度の距離ならたいしたことないんだけど。

 召喚魔法も転移魔法の一種ではあるけど、この3つとは系統が違うから置いておく。



 そうと決めたら、木の上に飛び上がった。

 視界はクリアな方がいい。


 木の上から、向かう先に障害物がないことを確認し、一気に飛んだ。

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