19話 お城でのテンプレイベントって?
「まあ解体はこんな感じだな。じゃあこいつを食うとしようか、遅めの昼食だ」
解体されたウサギは、ギルド内に併設されている調理場に持っていかれた。食材を持ち込めば割安な手数料で調理してくれる。その分を素材費から天引きするか、調理代を出すのかなどもいうことは個人の自由だ。
ギルド以外の宿とかでも結構やっているサービスだけど、これが結構腕の差がある。ギルドは基本プロが多いからハズレは少ない。
「野営だと簡単な味にしか出来ないからな。ギルドの調理員はそこそこの腕前だし、たまに良い調味料を持ってたりする。食材に出来そうな獲物を仕入れたらその場で調理してもらうのもいいぞ」
ラーザはそう教えてくれた。
調味料も持ち込んで、残りは置いていく冒険者もいるそうだ。調味料もそこそこ貴重なものではあるけれど、そこまで料理に力を入れない冒険者には持て余してしまうものでもあるそうだ。その代わり、提供者には優先的に美味しい物が与えられたりする。
しばらくして。
「出来たみたいだな」
ラーザはそう言って調理場の窓口に取りに行った。
大きな皿に、揚げ焼きにした肉と野草が入ったスープが並々と注がれている。スープには少しとろみがついていて多少乱暴に運んでもこぼれにくいようになっている。
ちなみにこの野草は食材として使われはするけれどどこにでも生えている、要するに雑草だったりする。美味しいとも不味いとも言いきれないなんとも言えない味のものだ。単価も安いし不足しがちな栄養があるので冒険者にはよく食べられている。
「兎肉って、食べるの2回目だけど結構美味しいね」
サリーが1口食べて言う。
「でも昨日食べたヤツの方が肉は美味いな」
リョウが続く。
「肉の種類が違うからね」
私も続く。
「へえ、昨日もウサギ食ったのか。どのウサギだよ?」
「ラピットだよ」
「そりゃあ……。こいつはただのウサギだからな。ウサギの中でいちばん美味いヤツと比べるのは可哀想だ」
ラーザは呆れたように言う。
「そういえばルーさんも美味しいウサギって言ってたわね」
「ルー?」
「俺達をこの町まで案内してくれた人だ。今日はなんか用があるからって別行動だが」
「ルー……。どっかできいたような名前だな……」
ラーザはなにか引っかかるようで考え込んだ。
「ま、どこにでもいるような名前か」
が、すぐにどうでもいいかというように思考をやめた。
「美味かったな。今度は自分で狩ったやつを食いたいよな、せっかくだから」
食事も終わり、ラーザと別れた後リョウがそんなことを言った。
「そうねー、でもまだ魔法講座受けてないよ。明日には受けれるといいよね」
サリーはずっと魔法を使いたがっている。
「せっかく異世界に来て、魔法も存在するのに。はやくかっこいい魔法バンバン使いたいな」
「そうだな、沙理波はいい感じに使えそうだよな。俺なんてなんか燃えただけだったけどな」
「でもそれだけ強いって感じだったじゃん。きっと潜在能力が強くて、まだコントロール出来ないってだけだよ。使い方習ったらいちばん強い魔法使えるって、なんたって『勇者』なんだから」
潜在能力というか召喚の際に付与された力だろうけど。コントロール出来てないっていうのは間違ってない。本格的に魔法を使おうとする前になんとか抑える方法を考えないと。
最悪、サリーだけでも被害が出ないようにしないといけない。
「そういや俺勇者なんだよな。全然そんな感じしないけどさ」
「だよねー、お城も王都もすぐに出ちゃったし。お城でのテンプレイベントはあんまりなかったわね。そっちもやりたかったな」
「テンプレイベント?」
「うん。お城で1番強いひとから剣や魔法習ったりとか。ちょっとした勢力争いに巻き込まれたりとか。勇者をよく思ってない派閥との敵対とか。そんなやつ」
あの城の人達はあまり異世界人を歓迎しているようには感じなかった気がする。勇者以外の私たち2人は奴隷にされそうになったし。
サリーとリョウはぐっすり寝てて気づいてないだろうけど。
「なんか……ゴタゴタしてるんだな、物語の異世界ものって」
リョウは若干引いていた。
そんなものだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます