BardとChatGPTの数学力を難関大数学入試で比較(京都大学編)

 BardとChatGPTの比較第2弾です。第1弾では東京大学の数学入試をそれぞれ解いたもらいましたがBardは式だけで説明がほとんどなく雑。ChatGPTは段階を踏んで説明してはいたものの、惜しいところはひとつもありませんでした。

 今回は京都大学の入試で比較してみます。京都大学の数学入試は文系、理系ともにシンプルな問題が多く、難解なものはあまり出題されません。

 毎度のごとく今回も整数問題です。1996年後期理系第2問。


 m、nは自然数で、m<nをみたすものとする。m n+1、n m+1がともに10の倍数となるm、nを1組与えよ。


 10の倍数は常に1の位が0なので、m nn mの1の位は9であることに気付けるかがこの問題を解くポイントです。まずはBardの解答を見てみます。今回は問題文をそのまま質問文に入力しました。


 m、nは自然数で、m<nをみたすものとする。m^n+1、n^m+1がともに10の倍数となるm、nを1組与えよ。


 解答1

 m, n は自然数で、m < n を満たすものとします。m^n + 1、n^m + 1 がともに 10 の倍数となる m, n を 1 組与えなさい。


 答えは、m = 2、n = 5 です。


 m^n + 1 = 2^5 + 1 = 33 = 3 * 11

 n^m + 1 = 5^2 + 1 = 26 = 2 * 13


 両方とも 10 の倍数です。


 これはひどい。33と26が10の倍数? そして相変わらず計算過程は記されていません。残り2つの解答は以下の通り。


 解答2

 m,nが自然数で、m<nを満たす。m^n+1、n^m+1がともに10の倍数となるm,nの組を1つ与えよ。


 m^n+1=10k、n^m+1=10lとすると、


 (m^n+1)(n^m+1)=10^2kl


 となる。


 m^n+1とn^m+1が互いに素であることから、10^2klも素である。


 10^2=100は2と5の素因数を持つ。


 klも2と5の素因数を持つ。


 よって、mとnは2と5の倍数である。


 mとnが自然数で、m<nを満たす。m^n+1、n^m+1がともに10の倍数となるm,nの組は、


 (2,5)


 である。


 計算過程は記されていますが「10^2klも素である」の意味がわかりません。どうやら10の倍数という言葉に惑わされているようです。


 解答3

 m、nは自然数で、m<nを満たすものとする。m^n+1、n^m+1がともに10の倍数となるm、nを1組与えよ。


 答えはm=3、n=2です。


 m^n+1=3^2+1=10

 n^m+1=2^3+1=9


 10の倍数は10、20、30、・・・である。10は10の倍数であり、9は10の倍数ではない。したがって、m^n+1、n^m+1はともに10の倍数である。


 また、m=3、n=2は自然数であり、m<nである。したがって、m=3、n=2は問題の条件を満たす。


 もうめちゃくちゃだよ。矛盾だらけじゃねぇか。今度はChatGPTの解答を見てみます。


 m < nを満たす自然数mとnについて、m^n + 1とn^m + 1がともに10の倍数となる組み合わせを見つけましょう。


 まず、mとnの値を考える前に、10の倍数となる条件を考慮します。10の倍数は末尾が0であるため、m^n + 1とn^m + 1がともに10の倍数である場合、m^nとn^mの末尾が9である必要があります。


 m^nの末尾が9となるには、mの末尾が9である必要があります。同様に、n^mの末尾が9となるには、nの末尾が9である必要があります。


 自然数の末尾が9である場合を考えてみましょう。mやnの値を1から順に増やしながら、m^nとn^mの末尾が9となる組み合わせを探します。


 以下の組み合わせが条件を満たします:


 (m, n) = (1, 9), (2, 9), (4, 9), (5, 9), (6, 9), (7, 9), (8, 9), (9, 9)


 例えば、(m, n) = (1, 9)の場合、m^9 + 1 = 1^9 + 1 = 2となり、n^1 + 1 = 9^1 + 1 = 10となります。どちらも10の倍数となっています。


 以上から、m < nを満たし、m^n + 1とn^m + 1がともに10の倍数となる1つの組み合わせは、(m, n) = (1, 9), (2, 9), (4, 9), (5, 9), (6, 9), (7, 9), (8, 9), (9, 9)です。


 答えは間違っていますが必要条件は合っています。解答の手順としてはまずm nn mの1の位が9になるm、nの候補を探します。

 累乗で1の位の数字に9が現れるのは3、7、9の3つ。3の累乗は3、9、27、81、243、729…と1の位は3、9、7、1を繰り返し。

 7は計算が面倒なので1の位だけ記すと7、9、3、1の繰り返し。9は9、1の繰り返しです。

 

 そして、3と7は指数が4で割ったあまりが2(3 2=9、3 10=59049、7 2=49、7 6=117649etc…)。9は指数が奇数(9 3=729、9 5=59049etc…)のときに1の位が9になるので、答えの条件をみたすのは9だけです。

 つまり、題意を満たすmとnは1の位が9の自然数であれば、なんでもいいということです(ただし、m<n)。1組なのでとりあえず(m,n)=(9,99)を挙げておきます。ほかにも(49,99)、(6789,12349)など答えは無数にあります。

 今回もBardとChatGPTは不正解。ただ、ChatGPTの解答は悪くありませんでした。1^9 + 1 = 2が10の倍数というのはさすがに無理がありますが……。Bardはもはや論外。


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