第3話 魔法使いになりました


 さて、ユニークスキルについては理解した。


 そして、今一番の問題は俺の体力が残り3しかないということだ。


 ゲームだったら死んでもまたやり直すことができるが、ここは異世界。


 死んだら死ぬ可能性がある(哲学)。


「ステータス、オープン」


 何度でも口に出したい言葉だ。


 俺は項目の中をよく見ていく。


<状態異常>

・寝不足(あなたのステータスは低下する)


 やはりあったか。


 徹夜が原因なので寝るのが一番だろうが――


 ここは異世界の森の中だ。


 モンスターから見たらエサが横たわっているようにしか見えないだろう。


 身を隠して寝たいが……野生のモンスターから身を隠すなんてそう上手くいくかどうか。


 かといって、今から山を下りて街を見つけるなんてのも途中で力尽きるだろう。


 なんなら、今遭難してるわけだし。


 ……まてよ?


 ゲーム的には確かこういうのも……。


「実績表示」


 俺は再び実績を見ていく。


 すると、お目当てのモノがあった。


【達成難易度G】

『ちょっと一息』

条件:たき火の前に座る。

報酬:HP・状態異常の全回復。10の経験値。


 よし、これだ。


 これならHPを安全に回復できる。


 となると、さっきステータス画面に出ていた『職業』の欄。


〈選択してください〉と書かれていたが選ぶのは一択。


 盗賊でも、狩人でも、剣士でも、踊り子でもない。


「魔法使い (Mage)で決定」


〈職業:魔法使い (Mage)に決定いたします。就職おめでとうございます〉

 

 なんか余計な一言が付け加えられて俺は魔法使いになった。


 30歳、魔法使い……いや、何も言うまい。


〈基礎魔法・『ファイアー』を習得しました。『ファイヤー』と言い間違えないようにしてください〉


 職業によって成長率も違うだろうし、強い職業かは知らんがまずは死なないことが第一だ。


 これでたき火を作ることができる。


 俺は木の枝を拾って組み立てた。


 そして、軽く咳ばらいをする。


「火の聖霊よ! 我が呼びかけに応え、紅蓮の炎を放ちたまえ! 『ファイアー』!」


 手をかざすと、手の平から小さい火の玉が出て集めた木の枝に直撃する。


 上手く燃えてくれた、たき火の正面で俺は座る。


 どこが正面なのかは知らないが。


〈実績が達成されました〉


「アンロック」


〈おめでとうございます。実績『ちょっと一息』を達成しました。10の経験値を獲得し、体力を回復します〉


 そして、俺の目の疲れや靄がかかっていた脳がはっきりとして瞼も軽くなった。


 とりあえず、寝不足で死ぬことはなくなったようで安心する。


〈ちなみに、火の魔法を出すときは先ほどの詠唱は必要ありません。どういった意図なのでしょうか?〉


「…………」


 俺はパチパチと燃えるたき火を見つめていた。


――――――――――――――

【業務連絡】

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