第12話 え? そっちw

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

作者より

 余計なことですが富士川中では合唱コンがなぜか1月の最初にあります。

 この場面は11月の最後の金曜日。期末テストの日です。

 (中学では1日で期末試験が終わります)


 なお、高木さんについては第10話、第11話をお読み下さい。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




「やっと終わった~」


 教室のあっちこちで、嬉しそうな声が聞こえる。3年生にとっては中学最後の期末考査が終わった。


 担任の大島先生が試験監督だから、このまま終礼も終わった。


「よし、日直と学習係はみんなが提出したノートとワークを職員室へ持っていってくれ」

「はーい」


 杉山さんは日直、乃々佳は学習係。チャンスだ。これで帰りも絡まれなくてすむ。ダッシュで帰ろう。


 配られたプリントをカバンに詰め込んでいたら、海老沢さんの声が響いてた。


「せんせ~ 2学期の成績までが内申に入るんですよね?」


「そうだな。中間と今回のデキが1学期の成績と一緒に出されるのが内申点だ。もちろん、普段頑張っているヤツは、それも書くからな!」


 斎藤達が嬉しそうに顔を見合わせてる。サッカー部のトップカースト達は、気に入られてる分だけ有利だと想っているんだろう。


 特にキャプテンの斎藤は、1月にスポーツ推薦で私立を受けるらしい。ヤツの口ぶりでは、特待で事実上決まってるんだって。


『ヤツを入れた学校が後悔しないと良いけどね』


 負け惜しみじゃないよ? だって、サッカーのことはわからないけど、あいつの性格は実に問題ありなんだよね。


『弱いヤツにはめっぽう強く、強いヤツにはめっぽう弱い。オマケに緊張に弱いし。そんなヤツ、試合でも使えないだろ』


 事実、エースのはずなのにPK戦で最初に蹴ったことがない。そして、ヤツに勝負がかかると必ず枠から外すというのは、公然と語られてる秘密だ。


『勝負弱いのも、サッカーだけじゃないしなぁ』


 去年の合唱コンで、あいつがいたテノール・パートだけが最後まで危うくて、発表の場面で、人一倍大きな声で音を外していた。本来、音痴なタイプじゃない。カラオケではむしろ、人一倍歌いまくるヤツだ。


「舞台の緊張感にやられたんじゃないかな。よくあると思うわ」


 優しい高木さんがかばってたのを覚えてる。


 それ以来、さすがに高木さんには頭が上がらないらしい。


「センセー、一年の時の成績は入るんですか?」

「あぁ、それはだな」


 大島先生の周りには、内申書の中身についての質問が殺到して、クラスの大部分が教卓の周りに集まってた。


 正直、合唱コンの練習の時は斎藤達トップカーストの連中がふざけていて、合唱のリーダーだった高木さんはずいぶんと大変だった。嫌な思いもしたはずだ。それなのに、ちゃんとかばってあげるなんて優しいよ。


 人として、しっかりしてるんだろうな。さすが、ウソ告をしてこなかった四大美女の一人だけあるな。あんなに優しいこと付き合えたら、どんなに良いだろう。ま、モブのオレには縁の無い話だけどさ。


「……くん、……だくん、……しだくん」

「ん?」

「石田君ってば!」

「あ、ゴメンゴメン、ちょっとボンヤリしてた」


 ヤバッ。目の前に、その高木さんがいた。


「もう~ 何度も呼んだのに。しかも目の前にいるのに見てくれないんだからぁ」

「ごめ~ん」


 プクッとふくれてみせる表情が、ひどく子どもっぽく見えて、普段の理知的でしっかり者キャラとのギャップに、ドキンとした。


「ね、付き合ってくれる?」

「え? あ、もちろん。喜んで」


 反射的に、高木さんの手をとって「ウソ告受け入れ体勢」を作っちゃったのは悲しい習性。

 

『あ~ とうとう、高木さんまでウソ告してきちゃったか~ しかも教室だぜ?』


 地味にダメージがデカかった。


 ん? でも、担任がここにいるんだし、さすがに撮影班は無理じゃね?


 周囲をそっと見回したら、みんなの注意は大島先生の方に向けられていた。


 あれ? 斎藤達はあっちにいるじゃん。


 ふと前を見たら、高木さんがオレに手を握られたまま、真っ赤になってた。


「あのね? ち、ちがうよ? 違うの、そっちの『付き合う』じゃなくて、ちょっと話をしたいから一緒に来て、の方の『付き合って』なの!」

「え? あああああ、ご、ごめん、ごめん」


 ヤバい。頭が「ウソ告脳」になってるよ。


 ふと、高木さんの視線が、オレに握られている手に向けられているのに気付いた。


「ごめん!」

「ううん、いいよ? 人のいないところなら、もっと…… う、ううん、あ、紛らわしい言い方してごめんね」

「いや、完全に勘違いしちゃった。だよね」


 可愛らしく唇を尖らせた。


「もう~ 告白するなら、教室でなんてしないでしょ」

「そ、そうだよね(汗)」


 高木さんは、顔を真っ赤にして、何かゴニョゴニョと口ごもってる。


                 「そっちの付き合ってで、本気のOKしてくれるなら嬉しいけど」


「え? 何?」

「う、うん、なんでもない。とにかく、一緒に帰ろ?」

「わかった」


 何となく、高木さんに言われたら断れない気がした。今日は5限帰りだから塾も十分間に合う時間だ。


『乃々佳以外の女子から誘われるなんて、いつぶりだろ?』


 断る理由がなかったオレは、高木さんの後ろに付いていくように教室を後にしたんだ。

                 

                 

                 

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作者より

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