#07 ヒーローに仲間など不要?



 席がお隣になったランちゃんには友達が沢山居て、いつも輪の中心に居る様な女子だった。

 この俺にすら話しかけてくるくらいだから、誰とでも平気で仲良くなれるような超絶コミュ力の持ち主なのだろう。


 もしかしたら、俺と同じような特殊スキルの持ち主なのかもしれない。

 例えば『止まらないお喋りノンストップ チャッター』とか、コミュ力に特化したスキルを隠し持っているのかも。


 ということは、ランちゃんは同じ特殊スキル持ちとして俺のライバル?

 俺がヒーローになるのを邪魔する存在なのか?

 いや、その逆に、俺と共に戦う仲間なのかもしれない。戦隊ヒーローみたいに。


 うむむ。

 仲間になれば心強そうだけど、手柄が盗られるのはちょっとな・・・


 2等分ならまだしも、1:9とかでほとんど持ってかれそうだし。

 折角協力して問題を解決しても、コミュ力高くて人気者のランちゃんの功績だって思われて、俺の実績なんて誰にも気付いて貰えなくなりそうだ。



 うむ。

 やはりランちゃんを仲間にするのは絶対にダメだ。

 いくら良い人でも、その存在自体が俺のヒーローへの道を邪魔しかねない。


 それに、キャッチコピーも『ヒーローとは、孤独との闘いである。』だしな。

 ランちゃん仲間にしたら孤独じゃなくなるし。



「そういえばあんみつって、いっつも夜にウロウロしてたっしょ?小学校で遊んでるの何回も見たし」


「なに!?なぜそれを知ってるんだ!」


 ランちゃんって、もしかしてヒーロー有力候補の俺を調査する為にこの高校に潜入している敵勢力のスパイか何かか?


「いや、あんみつの家、ウチと近所じゃん!」


「なんだと!?そんな情報は初耳だぞ!?」


「いやいやいやいや、小学校も中学校も一緒だったじゃん!」


「そんな話聞いたこと無い」


「はぁ?っていうか、さっきのギャグ、マジなやつだったの!?私の名前、ホンキで知らなかったの!?」


「だからさっきも言ったが、女子から人間扱いされたことないから覚える必要など無かったんだ。因みに俺が知ってる女子の名前は、母さんと妹とちぃたんの3人だったが、今日新たにランちゃんが加わった」


「ちぃたんが何者なのか気になるところだけど、いくら何でもそれは無いでしょ?冗談だよね?」


「ちぃたんは、アメリカの大統領になるのを夢見る小学1年の女の子だ。因みにちぃたんのパパは人の話を全く聞こうとしないモラハラの傾向が見られる理不尽極まりない大人だ」


「まぁ、私に対するあんみつの認識はだいたい分かったし。 っていうか、マジで覚えてない私のこと?小学校で同じクラスになったことあるよ?」


「うーむ、小学生時代に女子と会話したことが無いから記憶にないな。 因みに、小学生時代の面白エピソードを教えると、4年の図工の授業で隣の席の女子とペアになって人物画を描くことになったんだが、その時の彼女は一度たりとも言葉を発することなく俺の肖像画を描き終えて、後日お互いに絵を交換するというイベントでも、よほど俺に渡すのがイヤだったのか目の前で破り捨ててたな。 因みに俺の書いた彼女の肖像画も破り捨てられてた。 あとは、中学生時代なら女子に話しかけられたことならあるが、明確な理由も無く悪口雑言で罵倒されただけだったな。 中学生時代の面白エピソードも詳しく聞きたいか?」


「いやいやいや、あんみつがずっとぼっちだったのは知ってたけど、別にイジメとかはなかったっしょ?っていうか、あんみつ学校でも楽しそうにしてたじゃん!いっつも自分の席でニヤニヤ笑顔だったし、ぼっちでも学校好きなんだと思ってたけどそんな酷い目にあってたん!?」


 ランちゃんとは色々と価値観の相違があるようだ。

 イジメかイジメじゃないか。

 それは個人の主観で変わる話だ。

 相手はイジメだと思ってもなくても、俺がイジメだと感じたら、その行為はイジメだ。


 因みに、当時の俺自身がどう感じていたかというと、イジメだとは思っていなかった。 小学4年の図工でペアになった女子に対しても、「俺とペア組まされて可哀そうに」と同情してたくらいだ。


「俺が学校を好きかどうかはひとまず置いておくとして、小学校も中学校もイジメだとか酷い目に遭ってたとは思って無いんだが? むしろ、「俺とペア組まされて可哀そうに」とか「汗かきでごめんなさい」とか「トイレに間に合わなくて少し漏らしたけど、あまり詮索しないでください」とか、そういう風にしか思わなかったな。 酷い目にあってたというのは、ちと言い過ぎじゃないか?」


「あんみつって、もしかして超お人好し? アーメン様とかゴータマ・シッダールタとかそういう系なんじゃない?まんが世界の歴史とかにそういう人いっぱい出てたよ!」


 アーメン様って、だれ?


「よし!決めた!私があんみつの友達になるし!そんであんみつの認識を改めさせる!」


「ふむ、そうか、頑張ってくれたまえ。 だが断る。俺の手柄は俺の物だ」


 俺には共に戦う仲間など不要だ。


「手柄?よく分かんないけど、今日の放課後一緒に帰るよ!どうせ最寄り駅一緒だし、駅前のミニストップにソフトクリーム食べに行こ!」


「なんだと!?俺と一緒に帰りたいのか!? まさかランちゃん、貴様、俺のことが、す、すきなのか・・・?」


「それだけはぜってーにねーし」


 こうして、初めて同級生と一緒に帰ることになった。





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