治安最悪!地下世界録!!!

打首塚 畜生道

-1- 打首塚の日課、パトロール編 in学校

世に偶然はない。すべては積み重ねであり、その結果が知らない所から

飛んでくる為身に覚えがなく、予想の外にあるのだ。


治安パトロール開始からしばらくして…

「著作権パンチ!」

私はそう叫びながらヒロイックかつ、いかつい仮面と特殊なスーツに身を包んだ

某特撮ヒーローめいた格好をした人物を殴り飛ばした。吹っ飛ばされた人物は

地面に背から倒れこんで爆発、はじけ飛んだ。ここは地下世界だけど、私がこの

光景を文学作品に変えて世に出す以上、詳細な描写を省いて処理を終わらせる必要がある…だから仕方のないことなんだよ。パクリだとかで揉めたくないんでね。

著作権シリーズの技はそう言った経緯で生み出した技なのだ。キックやパンチや

ヘッドバットなど種類だけはたくさんあるが、どれも効果は同じで著作権に

触れるものを一撃で破壊して木っ端微塵に爆破する。ただそれだけの技である。

もちろんバーサーカーやそこらのチンピラのように誰彼構わず殴り飛ばしてる

ワケじゃない。これも治安維持部の立派な活動の一環なのだ。


ここ地下世界は鉄や貴金属類をはじめとした希少な資源がザックザク採れて、

土壌環境は栄養満点、作物を育てるにも困らない。きれいな水もバカみたいな量

出てくる。極めつけに面積が無限に広がり続けてるんですって。

その原因は学者先生曰く星の重力がどーにか作用しているとかなんとからしいん

だけど…要は私有地に制限がなくおまけに人的物的被害も代わりになるものが

ジャンジャカ出るため無きに等しい空間なので好き勝手出来るなんていう

夢のような空間なのよさ。そのため、倫理やら認可やらが邪魔して、

地上ではとてもできないような研究の成果物やら失敗作やらが作られ続けている。

ただ作るだけなら問題はないし、そいつらを実際に動かして実験する専用の場所が

あるからそこで好きに暴れさせるなり廃棄するなりしていい。…のだけどさ。

「作り上げたこの子らを野で遊ばせたい!今すぐ!我慢できないから!だから

漏らす!!!今ここで!!!!!ナウ!!!!!!!!!!」

と自制心が低い困ったちゃん達はお漏らしをして近所の人様に迷惑をかけ散らかす。

ちなみに先ほど書いた実験場がまともに使われたことはない。形だけがあるだけ。

なぜならここには自制なんて言葉は存在しないから。地下の水源はそんな研究者

たちのお漏らしで構成されているなんて冗談が流行るくらいお漏らしが

横行している。そしてそいつらは決まって甚大な被害を及ぼすため、脱走・逃走防止及び校内治安維持責任者である私が駆り出され、時に治安を乱したモノ以上に

暴れ散らかしてお漏らしちゃん達が引き起こした事態の鎮圧をするのだ。


先に書いておくと地下世界では「死」というモノは存在しない。

いや、私も馬鹿でかいカニ型ロボのハサミに挟まれたのち、ハサミ内部に

仕込まれていたレーザーで胴体が上下に分離したり、地下世界の謎材質金属を作る

鉄工所で、アッツアツの溶鉱炉に沈められたりした時は無事死体になりはしたけど。

問題はそのあと。死体になった後数分もすると精神と身体がバラバラになってようと溶けてようと都合のいい場所で万全な状態に戻るのだ。学者先生方によるとこれは

地下世界に漂っている謎粒子が特定の条件を満たす生命体の身体に作用することで

起きる現象らしい。当然、地下世界特有の現象で、仮に私が地上で頭を狙撃されたら

普通に死ぬ。そういった点からも地下世界は愉快で、

命が軽く残虐非道な治安となっているのだ。


人が死ななくて無限の土地があって好き勝手実験ができる。

この殺し文句は地上で実行できない様々な事情を抱えていた

マッドサイエンティスト達にとって、大変魅力的で都合がよすぎる提案として

彼らの間で爆流行りした。結果めちゃくちゃ地下に押し寄せてきたらしい。

そして住み着いて今のような環境に至るってことらしい。

昔はどうだったかは知らないが、毎日元気にヒャッハーして迷惑を撒き散らしている

様子を見るに、地上では相当我慢していたらしい。あまりにも幸せそうなので

ちょっとだけうらやましく思っていたりする。


そんなこんなで暴力全開部分の仕事を終え、先の改造人間を作り出しやがった

科学者のもとへ全力ダッシュ、後にゲンコツを一発。頭からギャグみたいな量の血を吹き出している相手に向かって「やらかしやがったクソボケが書かなきゃ

いけない紙」を突き出す。名前と実験の内容などを記入させるのだが…最後の欄に

ある「なんでこんなことやったの?」の質問にはだいたい「楽しそうだったから!」と馬鹿でかい字が書かれて返ってくる。そんな自信満々に書かれると逆にこっちが

悪いことしたんじゃないかと思えてくる…が、どう頑張って擁護してもやらかし

やがった方が悪いので私が絶対的な正義だと言い張ることにする。勝ったら正義だ。


次は静かにやりなさいよと釘を刺したら、次はもっと強い怪人でぶっ倒してやる!と元気な返答が返って来た。地下に最もふさわしい「悪人の下で奴隷がぐるぐる

回させられてるアレ」に下手人をブチこんでパトロールを再開する。

ちなみに素手で戦えないこともないけどフィジカル一本勝負ウーマンでやっていけるほどの力も技もないから兵器に頼ることが多い。現代兵器万歳!私用でふらつくならともかくパトロール中はいくつかの銃器類と爆発物、遠くから物を取り寄せられる

便利な機械を持っているからね。パトロールのルートはいくつかある。

今回は学校から潜民街ダイバーシティのルートで行く。どちらも規模が大きい

ため、一日の大半を見回りに費やすことになる。まぁ毎度イカれたトラブルに

巻き込まれるから退屈だけはしないんだけどね。

今回は何が起こるんだろね?…とか思いながら学校の廊下を歩いてたら

早速 何の変哲もない学校の窓がカチ割られてしまった。キラキラ飛び散る

ガラス片を纏いながらスカートをはためかせた制服女子が突っ込んでくる。

手ごろな銃の先端でガムテぐるぐる巻きになってるナイフが光って見えたので、

でんぐり返しの体勢で廊下を横向きに転がる。死んでも復活できるとはいえナイフでザクザクされて筋繊維と骨がどう繋がっているのか痛みをもって知る経験は

もうしたくないんでね。スライドドアをブチ破って教室に入り込んでから、

改めて女子を観察する。「ここ一応学校だからね~」と形だけ配られた制服なんか

着てるあたり、理性と知能が高いと見受けられる。ちょっと前に

「露出度が増えれば強くなる!(かろうじて理解できた情報)」なんて

いう論説が爆発的に広まった際には、そこら中にマイクロビキニ姿の生徒があふれて

いた(寒いからという理由で爆発的に廃れた。今なお紐姿を貫く覚醒者もいる)。

…なんてことを思い出しながら声をかける。一応声かけて止まる可能性に賭けて。

「地下世界唯一の治安維持実働部隊である私になんか用!?所属は!?」

「毎度お世話になってます!新型機の実験です!兵器開発部です!」

主に武器調達でお世話になってる部活の生徒だった。なので元気よく返事をする。

「オッケー!じゃ殺す!」

彼女らの言う実験は、私相手にケンカを吹っ掛ける事である。

殺し合いで使うモンだから殺し合いからデータを採る。実に考えられた方法だね!

私の迷惑は考えられてないけどな! いいデータは取れてるらしいけども。

向こうが新兵器をブチかましながら殺す気満々でかかってくるので、

こちらも負けじと応戦する。どっちかが動けなくなるまで戦う。

これを定期的に繰り返している。敬語が使えてヒャッハーしてる相手じゃないし、

私が利用するサービスを向上させる作業に必要なことだとは言え、所かまわず

急に来るのだけはいただけないってのは地下ここでは贅沢過ぎる注文だね。

まぁ彼女らがいてくれないと、素手で生徒どもを殴らなくちゃいけないからね。

なんて事を考えながら、積み上げられていた机の脚を引っ掛けて机の山を崩し、

相手の銃弾を防ぐ即席のバリケードにする。それから上手い具合の隙間を探して、

兵器開発部の生徒を狙う。基本的に相手側の火力が高いので、捻った手段で優位に

立つようにしている。すごい勢いで銃弾が飛んできてバリケードが揺らされる。

「今回は銃弾の変更かな…」

まだ知らない兵器の秘密に考えを巡らせながらコソコソと位置を変える。

私だって真正面から撃ち合いたいけどそれしたら一瞬でハチの巣になるかんね…

少し情けなく思いつつ移動していると他所の方向に向かって撃っている

生徒が視界に収まった。さっきまでいた位置にあるバリケードが粉々になる

タイミングに合わせてこちらも引き金を引く。銃を撃つのに夢中でお留守に

なっている部分へ銃弾を送る。実験に来る生徒は多少機材を扱える子らしいけど、

流石に場数の違いでこちらが有利になる。彼女らの本職は研究職だし。

「あ痛!」

痛がるリアクションが返ってきて安心する。これで実はホログラムで…とか

見えない鎧を着こんでいて…とかで元気なまま撃ち返されなくてよかった。

痛がってスキが出来たので急いで別の教室に移る。そしてまた撃ち込める位置を

探る。こういう時同じ場所で戦うのは悪手だからね。

…痛がるだけにしてはやけに時間かかってる気がするな?とか

銃弾の性能が変わっただけなら研究所内だけでテストできない?とか流れ弾で

そこらじゅう穴だらけになった廊下を移動してて妙な考えが浮かんできた。


ちなみにこの校舎、(ここまでのドンパチでボロボロだけど)せめてもの抵抗として

窓は強化ガラス、ほかの材質も地上では「ただの校舎にどんだけ金をかけてんだよ」とツッコまれる…どころか真面目に怒られるくらいのモノを使っていたのだが…


突如現れた9mくらいのゴテゴテしたロボットの腕に基礎部分ごとぶち抜かれ。

哀れ校舎はジェンガタワーみたいに崩れ去った。


「どわーっ!」

「今回の実験は『銃弾に電波を撒く装置をIN!それに反応する巨大ロボットも

つけちゃおう計画!』です!」

「ようはロボットお呼び出し兵器ってワケ!?」

「まぁそんなものです!」

「まーた派手な機材作っちゃってぇ!いくらすんのソレ!」

「詳しくは覚えてないですけどそんなにしませんでしたよ~」

「そ!じゃあ遠慮なく!」


なんでもありな地下世界とはいえ、急に巨大ロボットが校舎ごと私を潰しに来たら

びっくりする。銃のテストじゃなかったんかいとかそういう意味で。ロボットのが

本体じゃん!まぁ高速で撃ちだしても装置が壊れないか?とかロボはちゃんと

反応するか?とかそのあたりもテストしてるんだろうけど。

いくつか気になる事があるので聞いてみる。


「アレ中に誰か入って運転してるのー?」

「自動運転です!」

「そ!」

「どうやって攻撃すんのー?」

「この銃を撃ち込んだあたりにメカパンチ!です!」

「わかった!ありがとう!」


じゃあ動きが単純なのかなとか操縦席がどこなのか悩まなくていいなとか

楽観視できるような面に目を向けて、冷酷無比な超AIが地上でおもちゃにされてる恨みとばかりに私を追い詰めて来る可能性から全力で目を逸らす。

そうだったら勝ち目が薄い。二本の腕から交互に飛んでくるパンチをよけながら、

同時に生徒の銃口も意識する。時々何やらメモを取る様子もあるが、流石に棒立ちで

スキをさらしまくってくれるとかはしてくれないらしい。さっき考えなしに

撃たない方が良かったかもなぁ!仕留められなかったし!と軽く後悔する。

ただ後悔したところで、生徒もロボも止まらないのでその思考を中断する。

地下ここでは悪く考え込んだ方が負けるからね。さてどうこのロボをぶっ壊して

やろうかと考えを巡らせる。生徒ちゃんがリモコンでガシガシ動かしてるわけ

でもなし。かといってゲームみたいにわかりやすく「ここが弱点ですよ~!」と

光り輝いている部分もない。さて困ったなと思いながら、こういうロボットの定番な

弱点について考える。そう、関節部分ね。いくら装甲が分厚く頑丈でも、動く以上

関節部分は必ずある。もちろん頑丈には作られてはいるだろうけど比較的脆い傾向にある…そうであってほしい。と思いながら関節を探す。案の定立派な両腕を支える

大きめの関節が見えた。生徒の銃を狙って弾き飛ばすよりもよっぽど当てやすそう。

ただ位置が高すぎてロボに見下ろされる今の形ではダメージを与えられる程の銃弾を送り込めそうにない。考えての事なのかわからないけど見事に校舎はブッ壊されて

いるので屋上から狙撃ってのは出来ない。さてどうしようかと考えを巡らせる。


周りに見えるのは迫ってくるロボ、撃ち込まれる銃弾、散らばる瓦礫、

パンチでできたクレーター…


ふと考えが一巡して一個のアイデアが転がり込んできた。

急ごしらえにしては上出来といえるようなのがね。


一度脳内でシミュレーションして、これならやれると意を決する。

衝撃で爆発するタイプの爆弾を用意して、そそくさと瓦礫に近づく。

姿勢を低くするなどせず、あえて堂々と。…生徒はあちこちに撃ち込まれた

銃弾に向かってズンズン動くロボに夢中で私には気づかない。

悲しいことに相手の視界に入っているのに「あれ、打首塚どこいるんだ?」と

聞かれるくらいに薄い存在感を私は持っているため、こういう時有効活用するのだ。

人だけじゃなく自動ドアにも無視されるからロボット相手も安心だ!

…ここまでだとタチのいたずらされてるんじゃないかって思いたくなる。


心のダメージで泣きながら物理的なダメージを回避した。

私を覆えるサイズの瓦礫に駆け寄って爆弾を貼り付ける。そして持ち上げる。

…持ち上げたい。少なくとも気持ちは本物。

急いでるから早くしたいんだけど、この瓦礫君持ち上がってくんない…

基本地下住民は地上住民と比べ体は頑丈で運動能力も高い。その分頭のネジが緩い。

が、如何せん私は地上出身で存在感も色素も身体も薄いので筋力は低めである。

加えて筋力も気合も使いきっているのでこれ以上は力の割り増しができない。


「オ、おあああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


のでJKが出しちゃいけない種類の声張り上げて力の限界値を上げる。

地上のアスリートもやってる立派な手段なのよさ!

みんなも重いモノ持ち上げるときやってみよう!


こうしてクレータの上に瓦礫を投げ込んだ。即座に瓦礫に飛び乗る。

瓦礫の重さと投げられた衝撃で爆弾が起爆して爆風が生まれる。

爆風がクレーターの形で上手い具合に瓦礫を押し上げるように整えられた。

アイデア成功!そのまま瓦礫に乗って一気にロボの頭上を飛び越える。


瓦礫を踏み台に飛び跳ねる。爆風の効力が失われる。

ここから先は重力にひかれて自由落下。

私自身の重みが原因の加速を受けて高速化しながら

あれだけ高かった的を今では見下ろしている。


もう遠ざかる事はなく、

むしろ近づいていく。つまり―――



「これなら外さず当てられるってワケ!!!」



遠慮容赦なく引かれる引き金。炸裂する火薬。

ついでにとバラまかれた手榴弾。

飛び出した銃弾と手榴弾はいくつか装甲に弾かれはしたが、

その多くは関節に吸い込まれていった。

派手な火花と爆発を散らしながらロボは腕をがくんと下げた。

その様をしっかりと目に収めてにやりと笑って―――、

頭から地面に着弾した。当然死ぬ。私とて人間だからね。

目的はロボをブッ壊すことで無傷の生存じゃないのでね。

まぁこんなめちゃくちゃできるのも地下だからって事で。


そんなこんなで動かなくなったロボットを運び出している生徒達に

背を向けて今回鉛玉を撃ち込んで来た生徒に声をかける。


「いやあ~強いは強いし、なにより人間が戦わなくていいってのは大きいけど、

やっぱ研究職の子一人じゃ扱いづらいかもね?」

「そっすね~。あ、データまとめたんでこれ部長に渡しといてください。

じゃ、今からぐるぐるバー行ってくるんで」

ん。 と気の抜けた返事とともにひらひらと手を振って見送る。

自発的に罰を受けに行ってくれるなんて、なんていい子なんでしょう。

校舎を半壊させた点へのツッコみはナシで。あれは部長の方針だから。

「研究成果はサプライズでド派手に!遠慮も容赦もなく!!!」なんだって。

だから部長本人の研究成果発表会なんてのはヒドイモンなんだけど…

それはまた別の話。ちなみに次に書く話は打首塚の日課、パトロール編

in潜民街ダイバーシティだよ。お楽しみに。


毎日こんな調子で飽きる事だけはないんで飽きもせず地下の話を書いて教えますね。

今回まとめられる話はこのぐらいかな。まとめられたら書きますね。それじゃまた。


これにて打ち切り!

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