第34話 脱出

「ここは上に上がる。遅れるなよ」


 そう言ってタフラは羽を使って上にある通路へと上がる。


「上……この高さ上がれるかしら……」


「跳躍なら任せてよぉ。とーう!」


「へっ!? イヤぁああ!?」


「……おや?」


 キャスの跳躍に悲鳴をあげる。そしてシズルに左肩を貸していたマスティは置いて行かれる。


「大声出したらばれちゃうよ?」


「……あんたが……! 急に飛ぶからでしょうが……!」


 悲鳴を上げ、キャスに慌ててしがみついたせいか体が軋み、シズルは痛みに耐えながらもキャスに突っ込みを入れる。


「すいません。キャスは自分本位みたいなところがあるのです」


「……ケンゾクとしてはチメイテキじゃないか? それ」


 続いてリード、マスティ、メテットの順に上への通路へと昇る。


「余は同志キャスのそういうところは好感が持てる。」


「そぉ? うーん。」


「……なぜそこで悩むのだキャス? ……ねぇ?」


タフラは一つ咳払いをして、


「……まぁいい。早くいくぞ。」


「リョウカイ。……しかし、タフラはデグチまでのルートをオボえているのか? スゴいな」


「当り前よ。貴様らとは記憶容量が違うのだ」


(……あれ? 確か体の一部を鱗粉みてぇにばらまいて、自分にしか見えない道しるべを作ったんじゃなかったかぁ?)


 救援に来たタフラ達のおかげで出口へとどんどん進む。

 しかし、途中でラナの様子を見るためにも休息をとることとなった。


「ラナ……黒焦げの状態からだいぶ良くなったわね」


 ラナは最初の真っ黒な状態から徐々に回復し、顔の所々に火傷痕が残るだけとなっていた。

 しかし、ラナが目覚める気配は一向にない。


「……シズルはどうだ? あれからしばらくケイカしたが……」


 シズルは少し悩んだ後、


「そうね。少し良くなって自分で動けるようになったけど……戦闘とかは難しいわ。あの竜の熱波が思ったよりも効いているわね」


「……そうか。あのホノオシズルとアイショウがワルい。でもギャクにラナにはタイセイがあった。だからこんなにカイフクしている」


「それが唯一の救いですね。このまま完全復活することを祈るばかりです」


(復活……したとしても……)


 シズルは唇をかむ。


「そろそろ行くぞ。……しかし、ロウソクの騎士現れんな。まぁ余が導いているのだ。騎士達も気づけんのだろう」


 タフラはそう言ったが、メテットは騎士が少なすぎることに疑問を抱いていた。


(タシかに……スクなすぎる。いくらここがヒロいからってソウグウしないのは……カズがヘっている?)


 洞窟全体が大きく揺れ始める。


「なななんだぁ!? 地震!?」


「……崩落!? まさか、騎士がやったの!?」


「バカな! こっちにはラナがいるんだぞ!? ショウキなのか!?」


 タフラは大声で指示を出す。


「っ急げ同志達! あとシズル、メテット!! もはや休ませはせんぞ!!」



————

 男も地上で地震を感じていた。


「。。。人形共。何をしているんだ?」


(この地響き。間違いなく崩落が起ころうとしている。だが、それは種火が生き埋めになることを意味している。最悪そのまま。。。)


「。。。いや。奴らでも実際に崩落するまで荒らすとは思えん。多少の破壊があってもそれは種火を確保するためにやむを得ない場合のみの筈だ。。。。何かが地下にいるな」


男は治りかけのぐずぐずな片腕を近くにいる騎士に支えられながら、


「地下にいる第二陣の人型騎士共をこちらに戻ってこさせろ。第三陣の液化騎士共はそのまま種火を捜索。潰れても死にはしない」


「僕達もここを離れる。こうなったら崩落した後で探すしかない」


(崩落した時に種火だけ手に入れられれば理想だが。そうはならないだろうな。だが僕の片腕を落とした奴なら僕の太陽の炎が有効だし機械も騎士達で壊せる。懸念があるとすれば種火が消えないかだな)


(まぁ。種火が消えたとしてもまた別を見つければいいからな)


 そう思っていたら、地震が一層激しくなる。


「。。。? 早すぎないか?。 もう崩落が――」

 

 地面から巨大な何かが勢いよく出てくる。

 出てきた瞬間に地面にひびが入り、大崩落が始まった。逃げ遅れた爛れた男と騎士達は崩落に巻き込まれて地下へと落ちていく。


「あれは。。。黒い鳥の足か。。。?」


 落ちながら爛れた男は地面から出てきたものを観察していた。


「待て!? なんでここにこんなに騎士がいるのだ! 逃げられんではないか!?」


「見当たんなかったのはここに沢山いたからかよぉ!?」


「待ち伏せですか。こんな時でもまじめですね」


「……いや! 違う! なにかと戦っているわ!」


 洞窟がどんどん崩れている中騎士が出口へと続く通路でなにかと戦っていた。

 どうにも騎士では歯が立たないらしく、次々とバラバラにされていく。


「おお! なにものかはわからんが強いではないか! これで逃げられ――」


「一度ならず二度までモ! 可能性の枝ぽっきぽき折りやがっテ! お前らなんダ! 私のことが嫌いなのカ!? 私も嫌いになったワ!」


「……余計に逃げられなくなったぞ!?」


「噓~魔女~!?」


「どうして来たんだぁ!? まさか俺達追ってきたのか!?」


「そんな馬鹿な。仕込まれた発信器は破棄したはずです……!」


 人型となった眷属たちが一斉に怯えだす。


「ど、どうする? あれはミカタととらえてヨいのか?」


「そもそもあいつどうしてここにいんのよ。……絶対私達と無関係じゃなさそうだけど……」

 

 すると魔女はゴソゴソと半球型の水晶を取り出した。


「ん~と友の場所はァ~? なんダ、すぐ近くにいるじゃないカ! 聞こえるカ! 友ヨ!」


 そう言って魔女はメテット達に近づいていく。


皆一斉にメテットの方を向く。


「……友ってあいつがメテット呼ぶときに使ってた名称よね?」


「マって!!? なんでメテットのバショがそのスイショウにウツされてるの!!??」


メテットは思わず驚愕の声を洩らす。


「その声はわが友! ラナにつけてた発信器の反応がいきなり途絶えたから、無事だった友の発信器を追ってきたんだ!」


「ホントナニしてくれてるんだテメェーーー!!??」


 魔女はついにメテット達を見つけた。

 そして、崩れる洞窟の中で魔女はぎょっとする。


「タフラ!! 愉快な仲間達!! それにラナも生きていたのカ!? いやラナはぐったりしてるナ!?」


「俺たちを略すなぁ! ……あの、聞いてる!?」


「なるほどこれが運命だナ! 友情が我々を引き寄せタ!」


「あんたが発信器で追ってきただけでしょ~!? って崩落がぁ!」


今にも洞窟は崩れ去りそうになっている。


「もちろん助けるとモ! シズルも弱っているのはいい機会だしナ!」


「待ちなさい。なんで私が弱っているといい機会になるのよ!?」


「では来イ! 本体ヨ! ここから皆を逃がすのダ!」


 魔女がそう叫ぶと揺れが激しくなり、ついに地面が陥没する。

 この光景を見てメテットは確信する。


「ホウラクのゲンインはオマエかーー!!!」


メテット達は魔女の本体の口の中へと落ちていった。


こうしてメテット達は魔女によって拉致……もとい救助されたのだった。

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