第6話 復讐 完?

 父と共に“黄金の夜明け”と呼ばれる星の全生物を魔物という魔法を生みだす怪物に変えた現象を調べていた娘のラナ。

 真実の解明まであと一歩というところで二人は謎のロウソク頭の集団に襲われてしまう。

 ラナは体を内側から焼かれてしまうが、燃え尽きる寸前でラナは父に助けられる。

 しかし、父はラナを助けるため囮となり離れ離れに。ラナ自身もまたいつ体が燃えるかわからない恐怖に悩まされてしまう。

 そんなところに、ラナは復讐のために島一つ滅ぼした魔物のシズルと出会う。

 ラナはそんなシズルと意気投合。

 二人で復讐を果たすことを誓った。そして、


 その復讐の旅が思いもよらぬ形で終わろうとしていた!


「ちょっと!? シズルさんどうするんですかこれ!? ワタシたちこの島から出れないじゃないですか!」

 

ラナは自分が発火したときと同じくらい、もしかしたらそれ以上に慌てていた。

 このままだとラナとシズルの復讐譚、島から出れないので完! ということになってしまうのだ。

 もしこれが読み物だとしたら、まさしく打ち切りである。


「……いやほら、私の復讐って衝動的にって感じだったから、後先のこと考えていなくて……。そもそも何百年もたっていきなり空間の歪みが開いて中から女の子が出てきて尚且つその女の子が復讐を誓ったから外に出るために船がいるって……そんなの想定できないじゃない。」


「それは、そう、なんですけど……いや復讐しようって言ったのシズルさんですよね⁉」


「いやあんな経緯聞いたらそりゃ言うじゃない!? 私復讐者よ!?」


「言うもんなんですか!? ……とにかく本当にどうしましょう? 船が使えないとなると……」


 とりあえず現状を打破しようと考え始める。


「あっラナには蝙蝠みたいな翼があるじゃない。私が足当たりつかんで飛んでいくっていうのは?」


「今は焼かれたのが原因なのかうまく飛べないんです。飛べたとしても、シズルさんを連れて飛ぶのは……」


「……私そんなに重くないと思うんだけど」


「いや子供と大人なんですからきついに決まってるじゃないですか。頑張れば行けるかもしれないですけど……」


 そう言ってラナは翼を非常にゆっくりと動かしてみる。燃える前ならば翼を自分の体よりも大きくして、更に早く動かすことで飛ぶことが出来たのだが。


(今はこれが限界なんて。本当にワタシ何も出来ない……)


「ふーん。じゃあどうしようかしら?」


 前までできていたものができなくなる。今のラナにはとても苦しいものだった。

 そして、それを皮切りに、ラナの中に暗い感情が溢れ出す。


(そもそも、ワタシはずっとお父さんに守ってもらってて、今誓った復讐なんてシズルさんの力がなければ夢物語のような話だ)


「あれ、ラナ? ちょっと?」


(自分一人では満足に生きることもできない。そんなので生きているって言えるのでしょうか?)


「プスプス言ってるよ?? 黒い煙吹いてるわよ???」


(なんて情けないんだろう。自分が嫌になってくる。)


「ラナ燃えてるわ!?翼の端からまぁまぁいい勢いで燃えてるわ!?」


(でもワタシは生きなきゃいけない。お父さんに言われたから。美しいものを見るために)


「あら? 火の勢いが弱くなった……でもまだ燃えてるわね?」


「考えましょう。シズルさん。こんな所で終わりたくないです」


「えっ!? あーそうね。ラナ考えるのはいいんだけど」


シズルはラナの背中ででまだ燃えてる翼を指差して


「——燃えてるのはいいの?」


「え? ……きゃああああああああ!?」


「やっぱりダメなんじゃない! もう! 早く魔力補充しなさいな!」


 少し時間が経ち、落ち着いたころ


「すいません……」


「意外と燃費悪いのね。本当にいいこと一つもないわねその炎」


「いや……さっきのはおそらく、暗い感情に飲まれていたからだと思います。気持ちを持ち直したときに炎の勢いが弱まりましたから。」


「気分が沈むと燃えるってこと? ……ますます害しかないじゃない」


「そうですね。でも島から出る前に気づけて良かった。船で発火したら大変なことになりますから」


「そうね。船で行くのはやっぱり危なかったのよ。海の中にも危険な魔物がいるかもしれないし。うん。やっぱり船は駄目ね」


「…………」


 何とも言えない表情でラナはシズルを見つめる。

それはそれとして本当に手詰まりとなってきた。二人は真剣に悩み始める。


「釘を飛ばして…駄目ね。そんなに遠くには飛ばせないし…」


「時間をかけてまた飛べるように特訓するべきでしょうか。でもそれで飛べるという保証はないですし……」



「メズラしい。こんなトコロでマモノがニタイ、ナカヨくカンガえゴトしてる」



「「!?」」


 二人だけのはずの会話に突如として混ざった声。

 その声の主は空にいた。


「ミョウなバショでミョウなマリョク、そして、ミョウなジョウキョウ。このホシのナカでもキミョウなジレイ」


「……奇妙なのはあんたでしょ。どこから顔出してるのよそれ」

 

上空にいた存在は何もない空間に穴を開けて、そこから上半身を覗かせていた。


「な、何者ですか!?」


(魔物ではあるだろうけど、あまりにも無機質な……でも人形なんて物でも無い。もっと高度な……なんだろう?)


 ラナがそう考えるのも仕方がなかった。それほどまでにラナが見た声の主はこの世界の魔物とは逸脱しすぎていた。


 世界観が違う。


 下半身は確認できないが、上半身は女性型アンドロイドの姿をしている。この世界にはまず無い高度な文明が作り上げた技術の結晶だとラナとシズルは肌で感じ取る。

 話しかけた者は肌は光が当たって反射している。

 関節部分には輪っかだけがあり、腕や首は胴体とは繋がっていない。にもかかわらず輪っかはちゃんと関節の役割を果たしているようだった。

 また、頭にはポニーテールのような部分があり、それも輪っかだけで頭とつながっているようだった。


「ナニモノ……うん。トウキタイメイは、メテット。カナタよりカノウセイをサガしにキた。そしてイマは、このホシをカンコウチュウ」


「要は野次馬ね?まぁ敵対するつもりはないのだろうけど、いつまで空にいるのよ。首も疲れるし、降りてきたら?」


「このタカさはヒツヨウ。トクにこのホシでは」


「何? 下に見てるってことかしら?」


「イヤチガう。シャザイするのでサツイをイダかないでほしい。ごめんなさい」


「意外とすぐ謝るのね。相変わらず高いけど」


「シマヒトつをこんなアリサマにしたであろうソンザイにこれくらいのケイカイはトウゼンとハンダンする」


 そう言ってシズルを見つめるメテット。


「あら、何で分かったの?」


「シズルさんの頭にもこの島と同じような釘が刺さっていますもんね。でもそこまで警戒するならどうして私達に声をかけたのですか?」

 

 ラナはメテットに当然の疑問を投げかける。シズルもラナも空にいるメテットに気が付いていなかった。

 わざわざ話しかける意味などなかったはずである。


「それはキミにキきたいコトがあるから。コウモリのコ」


「ワタシに……?」


「キミがこのバショにキたあのユガみはいったいダレがウみダした?」


「え?」


「トウキはそれがシりたい。このホシであれがカンソクされるとはオモわなかったから」


「あれは……父の力によるものらしいです。ワタシはあの時まで父があんな力を持っているなんてワタシも知りませんでした。あの力は一度も見たことがありません」


「イチドもない。そう、つまりキミのオヤは……ありがとう。ジョウホウ、カンシャする。キきたいコトはキけたし、トウキはリダツする」


「ちょっと待ちなさい。貴方は満足したみたいだけれど、こっちはちっとも問題が解決していないのよ。こっちは貴方の知りたい情報を与えたわけだし、その情報に対する対価を払ってくれてもいいんじゃない?」


「タイカ?まさかこのホシでキンセンをヨウキュウするつもりか?」


「そんなものいらないわ。ささやかなお願いよ。ここから出してくれない?」


メテットは首をかしげる。


「ここから……?」


「えっと、ワタシたちの現状を説明すると——」

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