第23話

「それじゃ、領都の中までは〈影狼〉で 送りますよ。移動に闘気を消費するのは勿体ないでしょう? 」


影狼は術者である俺が操作する必要があるので、俺がここから動かずに敵味方一般人が入り乱れた街の中を走らせるのは無理だけど。

街までの直線を走らせるぐらいはできる。


「確かにそうですね。お言葉に甘えて街まで送って頂きましょう」


「先に言っておきますけど。本当に街まで一直線に送りますので、進路に現れた敵の排除は頼みます」


今から街の外にいる敵国の兵士は俺が相手しなきゃいけないんだから細かい操作なんてやってられない。


「そのぐらいは問題ないです」


「〈影狼〉それじゃスレイさんまた後で」


影狼に乗って街に向かっていくスレイさんを見送って、広範囲殲滅魔法の魔法陣の作成を始める。


この国における近衛騎士ってのは魔法使いで言う魔導師だ。

スレイさんなら無双ゲーのように敵を殲滅するだろう。


その考えを肯定するようにスレイさんに気づき迎撃のため近づいた敵兵がぼろ雑巾のようになって吹き飛んでっている。


「流石に広範囲殲滅魔法の魔法陣を作るのは時間がかかるな。魔力大量に使うから俺の存在もバレちゃってるし」


まぁ、準備は整ったし問題ない。


「〈影の国〉」


ゴルフボールぐらいしかない小さな黒い球体が街の外にいる敵国の兵士たちの頭上で停止したと思うと、地面に高速で落下膨張し黒い半球状のドームとなって敵国の兵士達をどんどん飲み込んでいく。


黒い球体の中では影で作られた槍が雨の様に降り続けているので1度中に入ったら生きて出てくることは出来ないだろう。


影の槍をどうにか凌いでも黒い球体を壊さないと外に出てくる事は出来ないし、黒い球体には修復機能もついているから、人が出れるサイズの穴を開けるのはかなり大変なはずだ。


ついでに言うと黒い球体の中には空気がないから窒息死したくなければ、そこから対処しなくちゃいけない。

闇属性の魔法に空気を生成するような魔法は作れないからね。特に設定しなくても黒い球体の中は真空だ。


影収納とは違い異空間を作り出すのではなく、単純に球体の中に閉じ込めているだけなので球体の中は外と同じように時間が流れている。

時間が止まっていると生き物を捕まえられなくなっちゃうから好都合だけど。


「さてと。これ以上膨張させると街を飲み込んじゃうからな。残りは別の魔法で対処しようか」


街の外にいた敵国の兵士は影の国で8割ぐらい減らしたけど。逆に言うと、あと2割残っている。

8割排除した時点でやりすぎと言われそうだけど。

何度も戦争が起きてその度に俺が呼ばれるのは面倒だ。

すぐに戦争を起こせないように大打撃を与えておこう。

ってことで躊躇なく殲滅させて貰う。

戦争を仕掛けて来てるんだ殺されても文句はないよな?


「さぁ、いっておいで〈暴食の化物ケモノ〉」


オオサンショウウオに似た手のひらサイズの影で作られたゴーレムが魔法陣から現れる。


こいつは大気中の魔力を自動で吸収して際限なく巨大になっていく。

魔法の発動する際に消費する魔力を少なくするために最初は手のひらサイズで小さいけど。

舐めていると手がつけられなくサイズに成長する。


勿論影で作られたゴーレムなので、いくら攻撃されても自動で修復される。


さてと、勝ち戦だと思っていたら一瞬で兵の8割が謎の魔法に飲み込まれて生死不明。


既に軽自動車ぐらいのサイズにまで成長した暴食の化物が残り兵に向かって突っ込んでいる。

大きくなればなるほどサイズ上昇はゆっくりになるので、急激に大きくなるのはここまでだけど。

残りの兵が完全にパニックになるには十分だろう。


さてと。このまま眺めているだけでもいいんだけど。

敵の中で偉そうなのを一人ぐらい捉えておいた方が良さそうだ。


影の国に捉えた兵士はそろそろ全滅しただろか?

中にいる生き物の生死を確認が魔法を解除しないと出来ないってのは少し不便だな。

やっぱりまだまだ改良が必要だな。


敵の身分の高そうなやつを捕虜にするために

影狼とか状態異常魔法を使いたいし。今回はどっちみち影の国は解除する必要があるし気にならないけど。


影の国を解除すると黒い半球状のドームが消滅する。

そうなると残るのは大量の敵兵の死体。

敵の精神を崩壊させるには十分な光景だ。


正直、敵だけじゃなくて味方の精神にもダメージを与えてそうだけど。


この際どうでもいい。


それにしても、こんな大量虐殺してもなんにも思わないとか。俺も大概精神ぶっ壊れてるな。


外がこんなになれば街の中もすぐに方がつくだろう。

さっさと俺の仕事を終わらせて開拓地に戻ろう。


……戦争を終わらせても王都に呼ばれたりとかですぐには帰れないだろうけど。

まぁ、この際フィレーム領じゃ無ければどこでもいいや。


ここにいると、クソみたいな奴らの事を思い出してイライラしてくる。


まぁ、今回の戦争の責任をかなり追求されるだろうし。下手したら物理的に首が飛ぶ可能性もあるだろうなって考えると少し気分がマシになってきた。


「守られてるし周囲に比べて無駄に豪華な装備。良かった捕虜に出来そうなの残ってるじゃん」


もしかしたら既に影の国の餌食になっているかな?と思ったけど。

影の国の範囲外にいてくれたようで一安心。


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読んでいただきありがとうございます。





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