詩集 MIRGLIP

もざどみれーる

ラレンタンドの愚かな風

景色が息をしていない

和音は色をうしなって

ラレンタンドの風ばかり

足下そっかの砂はいている


ガラスの獅子が舞い降りて

千切れた夢を噛んでいる

菖蒲あやめを照らす篝火かがりび

膨れたあかに染められて


羊の群れに地は煙り

ポロロとギターの涙落つ

生の亡骸腐らせて

とろける跡に悶えつつ

御天みそらに赦しを乞うさそり

いつしか独りで微睡まどろんで

はてと目覚めることもなく

廃れた砂に変わりゆく


ああ ラレンタンドの風ばかり


 その微睡まどろみが

 妙に錆び付いて

 僕の夢はザラザラと音を立てる……


遮断機に道を絶たれた子犬たち

今日もほどけぬ氷のつら

がたと震えて また被る

(さあ早く 広く大地に転がれよ

 朝露受けた 草の匂いよ)


霧をまとったスピノザに

聖句をじゅする神父がせる

陶器の聖母マリアは身じろぎもせず

 憐れみたまえ

と ただ祈りつつ……


ああ ああ

僕はいつだって

愚かな風を聞いている

愚かな風が鳴らすのを

生命いのちの鈴を鳴らすのを


空にきらめく黄金の

ひねりて泳ぐピラニアに

今宵も銀の風見鶏

惜しむことなくれてやれ


聖なる母はうたい出す

僕のうたげに寄り添いながら

 月の光よ憐れみたまえ

 生をくるも一夜ひとよの夢


嗚呼 ラレンタンドの風ばかり……


景色が息をしていない……







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