第十四話 研究施設
研究施設①
某日、
また、今回の任務もA級相当のため清水は同行をおわずけにされた。
「えぇ〜、でもちょっとぐらい……」
「ダメです。清水さんは私と基礎訓練をします。あ、でもどうしてもっていうならぁ……後で"お仕置き"しますので、覚悟してくださいねぇ」
「……っす」
前回の独断専行とイヴの含みを持った笑顔。勝手に参加しないように、と訓練という名の監視付きを余儀なくされた清水は渋々返事をした。
そして現在、荘厳な作りをした宗教施設の内部、そこに二人はいた。
白を基調とした内装は清潔に保たれており、廊下や各部屋に飾られている骨董品や絵画はかなりの値段がするだろう。
施設は三階建てで、それぞれが修行や寝泊まり、客室や広間などの役割を持っている。と数人の信者が見学者達の前方と後方を挟む形で誘導し、説明を行いながら移動していた。
「師人、気づいてるか?」
「はい、ここにいる連中は全員──変異者です」
播磨はもちろん、カルトの補助によって力を抑えている師人達とは違い、信者達は量も少なく拙い操作精度のため、その身に纏うオーラを隠しきれていない。
しかし案内役を含め、すれ違う関係者は全て覚醒済みの者ばかり。播磨は「気ぃ引きしめろ」と小声で呟いた。
「さあ皆さん、せっかくですので我々が信ずる"教え"について説明いたしましょう」
一心教の教理は教祖の指導の下、『幸福』を追い求める。それぞれの多様性に準じ、欲求に沿って世界をより良いものとし、そして"解脱"に至ることを重要視している。
しかしその実態は"
神通力。参加者には"変異力"を教祖や幹部に認められた者に与えれられる天の力である、と提言している。実態を知らぬ者からすれば、種も仕掛けも無い魔法のような現象を目の当たりにするため、信じる他ないだろう。
そしてこれらの説明を終えた先導役は、ニコリと笑い、手を奥の部屋へと向けた。
「それでは皆様、そろそろ休憩にしましょうか。控え室までご案内いたしますのでコチラへ」
その言葉に周囲の空気が緩む。その雰囲気にここだな、と播磨は師人に目線を送り誘導役の信者に用を足す、と伝え一人だけ席を離れた。
変異力は人目のある場所では使えない。播磨は念の為、女性用トイレに侵入し監視がいないことを確認すると個室便座に腰掛け、片目を手で塞いだ。
『
人形や車を模した極小の玩具を人間では通れない場所から通過させ、その視覚を共有する。
「あ? なんだこりゃ」
そして時短のため高速移動させてしばらく、播磨は説明されていなかった"地下"への通路を見つけ、その内容に驚愕した。
昇降機で地下に降りた先、広がるは研究施設。その廊下はどこまで続いており、無数の扉や隣接する通路と繋がっていた。
その中で播磨が見つけたのはガラス張りの部屋。そこには凶悪な宇宙生物と生身の人間が壁一枚を隔て、数え切れない程に捕らえられていた。
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