新たな覚醒③
分子構造・遺伝子情報の全て網羅し、構成。創り出した器と本体の魂を繋げ、移行。
奥村の
「こんなに満たされたの生まれて初めてです。やはり貴方様は………運命の人♡」
「はぁはぁ……いい加減に……しろ……」
偶像系能力は消費が激しい代償として、他変異者とは一線を画す基礎能力を持っている。そして奥村は他者から生命力を奪うことで、驚異的な継続能力を発揮していた。
「いいえ、いい加減にするのは貴方の方です。早く私のものに……ダメになりましょ? ね、ね、ダメになっちゃえ♡」
「…………ふーー」
肉体の支配権を取り返し、死から何度復活を遂げても尚、奥村は隙を見せない。
俺の変異力はもう底を尽きかけている。実力もあちらが上。ならば急所を狙うしか無い。と師人は腹を決めた。
「いいぜ、分かった。とことんやってやる」
「!!、それは私を受け入れてくださる、ということでしょうか……!?」
「俺の
「〜〜〜〜〜ッ」
針に糸を通すように"一発"で決める。俺の返答に興奮を抑えきれず、より激しく乱れる奥村。
俺は跨るその体を少し押しのけ、上体を起こす。向かい合うように座り、一点をジッと見つめる。
「んっ、んーー〜〜♡」
熱い視線を曲解し、奥村は唇と舌を差し出す。まるでそれを望んでいたように俺は答え、そして主導権を勝ち取った。
まだ、まだだ。タイミングを見極めろ。その瞬間は必ず来る。その大きな"波"を待て。
「んっ♡ あっ、あっーー♡」
奥村は満たされていた。何時間、何十時間と
汗が滲み、体が熱い。今まで感じた事の無い何かが、来る。と頭が真っ白になっていた。
息遣い荒く、目が座り始めた。師人はその前兆を見逃さなかった。崩れかけた
「愛してるよ」
「ーーーーーーッ♡!!!」
効果は
仰け反る体がビクビクっと震え、ぎゅーーっと内側が締まる。と同時に視界は天井へと移り、急所が前へと突き出された。この瞬間を────ずっと待っていた。
「カルトッ!!!」
刹那に満たない。師人の赤黒い腕は最短距離で美しい曲線を描き、斜めからその顎に鋭い掌底を当てる。
瞬間、奥村の獣のような嬌声が……消えた。
「──────ッ」
逸れた上体は脱力し、預ける形で師人の肩にもたれ掛かる。と同時に変身がゆっくりと解けた。
師人は人形のように動かなくなった身体に触れ、意識を確認。幸せそうな顔で気絶している。
その様子に油断していると寝言で「もっとぉ……」と言い出したので拘束をより強く縛った。
その後、組織へと連絡、身柄を引き渡した。しばらくして未登録の一般人だと判明。のち、処遇が決定された。
特異局専属の契約系能力者による行動制限、主に犯罪行為に関するモノを封じたのち、職員による監視指定が実行された。
B級以上であり適当な能力と人格を持つ者と共に生活し、その状態を管理する。そして今回、その職務に指名されたのは──────
「おかえりなさいませ、師人様♡」
劇的に変わる俺の日常、過ぎ去っていく穏やかな人生。上品なお辞儀で出迎えるメイドを前に俺は、ため息混じりに「ただいま」と返事した。
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