第33話 初デート

水元先輩が一ノ宮先輩に言ってくれてからしばらくは何事もなく過ごせた。


あの噂は未だにあるけど、段々みんなも忘れてきているようでヒソヒソされることも無くなってきた。


そんな中で、今日は焚翔先輩とデートすることに!


「焚翔先輩!おまたせしました!」


「いや、待ってないから」


「ありがとうございます!どこ行きますか?」


「…」


「先輩?」


「今日一日敬語無しな」


「え!?」


「じゃないといつまで経っても敬語使うだろ?」


「そうですけど…」


「敬語使うごとに俺の好きなとこ一つ言え」


「えー…」


「嫌なのか?」


「嫌じゃないですけど…本人に直接言うなんて恥ずかしくて…」


「詩が敬語使わなければいいだけだろ?」


「確かに!」


「じゃあ、今からな!」


「は…じゃなくて。うん!」


「いい子じゃんっ」


焚翔先輩はニコッと笑って頭をポンポンしてくれた。


「で、どこか行きたいとこあるか?」


「んー…逆に焚翔先輩は行きたいとこあり…ある?」


「俺は…ある」


「じゃあそこ行こうよ!」


「俺の行きたいところは最後にしたいんだよなー。とりあえず、ブラブラするか?」


「うん!」


私たちは手を繋いで街を歩く事にした。


「よくよく考えるとこれって初デートですよね?」


「そうだな。で、敬語使ったから俺の好きなとこ言え」


「あーっ…好きなとこ…男らしいところ」


「おう…」


「先輩から言えって言ったくせになんでそんな反応なの!?」


「いや…意外に照れるなって」


先輩が"照れるからこれは止めよう"ということになりたった1回で終わってしまった。


それから街をブラブラしていたんだけど、いつの間にか敬語を使うことも無く楽しいデートになった。


最後に先輩が行きたいと言っていた場所に行くことに。


「ここって…」


「俺の秘密の場所」


先輩が連れてきてくれたのは街を一望できる場所。


ただ、ちゃんとした場所と言うよりは普通の人は来ないような場所だった。


「もっと遅い時間だったら街の灯りでもっと綺麗でしょうね!」


「でも、夕方のオレンジ色も綺麗だろ?」


「最高!」


私はそう言いながら今日一の笑顔で答えた。


「お前と来たかったんだ。」


「嬉しい、ありがとう!」


私がお礼を言うと、先輩は腕を引っ張って私の口に触れるだけのキスをした。


「せ、先輩っ」


「ごめんな」


「え?」


「俺のせいで詩には辛い思いさせてるよな」


「それって…」


「一ノ宮のこと。蒼也から聞いた。」


「あ…でも、クラスの子たちは私の事信じてくれてるし、他の人たちも飽きてきたみたいで何も言ってこないし、大丈夫!」


「本当か?」


焚翔先輩は私の頬を両手で包み込みながら心配そうに聞いてきた。


「本当!もし、辛くなったらちゃんと焚翔先輩に相談するから!」


「わかった。でも、我慢しすぎるなよ?」


「はーい!」


「いい返事だ。実は今日ここに連れてきたのはその話がしたかったからなんだよ」


「水元先輩に聞いたから?」


「そう…俺、ちゃんと一ノ宮に話すから。」


「先輩…」


「もう詩に辛い思いなんてさせないから」


「頼りにしてます!」


「よし…とりあえず帰るか。あんまり遅いと詩のご両親が心配するからな。」


「先輩って見た目に反して本当に優しいよね!」


「うるせぇ(笑)」


私たちは笑い合いながら家へと向かって帰ることにした。


先輩は私を家まで送ってくれると"また明日な"と言って頭を撫でて帰って行った。





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