第28話 蒼也の気持ち

とある休日の昼下がり。


何故でしょう?勝手に私の部屋で蒼也兄さんが寛いでいるんですけど…


蒼也兄さんが私の部屋に来るなんていつぶりでしょうか…


しかも時折、チラチラそわそわしながら勉強している私を見てくるんですよね…


「なぁ、由莉」


「なんですか?蒼也兄さん」


「今から独り言言うから聞いててよ」


「蒼也兄さん…バカなんですか?」


「は!?何でだよ!!」


「独り言言うから聞いてって…それはもう独り言じゃないですから」


「いいじゃんっ」


そう言って口を尖らせて頬を膨らませて可愛く…どころか、少し寂しそうなしょぼんとした表情をしていて、初めて見る顔に驚きつつも話を聞いてあげることにしました。


「…仕方ないですね。聞いてあげます」


「ありがと、由莉」


「で、何かあったんですか?」


「うん…」


「…」


「…」


「なんで何も言わないんですか!?」


「え、あ…いやぁ…」


「何か言いにくいことなんですか?」


「まぁ…ちょっと」


「話聞いて欲しいって言ったのは蒼也兄さんですよ?」


「うん…実はさ、俺。」


「…なんですか?」


「詩ちゃんのこと好き…なんだよね」


「………え!?」


「焚翔と付き合ってることも分かってるし、好きだからって2人の仲を裂いてまでどうにかなりたいって思ってるわけじゃないんだ。ただ…」


「好きになりすぎてどうしたらいいか分からないと?」


「それもだけど、焚翔に対して嫉妬したり…でも、俺。焚翔の事も大好きだからどうしたらいいのか…」


「え…蒼也兄さんってそっちの方も…!?」


「バカ!友達としての好きだよ!」


「分かってますよ。詩のこと好きって言ってるのにそっちだとは思いませんよ。」


「…」


「で、蒼也兄さんはどうしたいんですか?」


「うーん…どうしたらいいんだろうな」


「詩に告白しないんですか?」


「…」


「詩、一ノ宮先輩たちにこう言ったそうですよ。"好きなら正々堂々と気持ちを伝えてください"って」


「…」


「八神先輩にも宣戦布告して、詩にも気持ちを伝えたらいいじゃないですか。」


「でも…そんなことしたら…」


「あぁ、もう!!蒼也兄さんっていつもそうですよね!」


「へ?」


「自分の恋愛になったら奥手で、自分の気持ちより相手のことばっかり!」


「…」


「詩に気持ち伝えてすっきりしたらどうですか?ちゃんと慰めてあげますから」


「そう…だよな。決めた!まずは焚翔に話す!で、そのあと詩ちゃんに告白する」


「はい。まぁ、詩は気にするかもしれませんがね」


「え?」


「あの子、普段はポジティブなんですけど振った後って罪悪感感じるみたいで、素っ気なくなったりするんですよ」


「えぇ…。どうしたらいいの?」


「そこは私に任せてください!蒼也兄さんもちゃんと話だけはしてくださいね」


「わかった。」


その後、蒼也兄さんはしばらく悩んだり"はっ!"って顔したり百面相していて、見ている私としては面白かったです。


「それより、蒼也兄さんっていつから詩のこと好きだったんですか?」


「ん?ふぁいふぉふぁったふぉきふぁら…」


「…食べてから喋ってくださいよ」


蒼也兄さんは持参していたのかいつの間にかお菓子を頬張っていた。


「んう…最初会った時からだよ」


「最初って…蒼也兄さんの教室に行った時からですか?」


「そうそう!でも、詩ちゃんが焚翔を好きで、焚翔も詩ちゃんのこと気になってることに気づいてから、それ以上好きにならないようにしてたんだけど…」


「蒼也兄さんらしいというか…ま、当たって砕けてくださいよ」


「振られるのは分かってるけど、もう少し言い方をさぁ…」


その後、持参したお菓子だけじゃ物足りなかったのか、母に"お菓子ちょーだい!"っておねだりしに行ったのを見て"恋愛より食い気なのでは?"と思った。




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