第7話 異界へようこそ。

「で、なぜこうなった?!」

 新は真新しいエメラルドグリーンのエプロンを付け、喫茶店のカウンターに立たされていた。

「働かざるもの食うべからずなのですよ」

 言わんとしている事は分かる、分かるのだが、何故だろう納得がいかないと新はミアを見ながら渋い顔をする。

「そもそも、ここって客来るのか? 臨んだ人しか行きつけない場所なんだろ?」

「はい、そうですよ。この場所、喫茶ペチュニアは異界です」

「異界って何なの?」

「異界とは、現実世界と、神様が済む神界、冥王様が済む冥界、そのいわゆる中間の中継地点のような場所に当たります」

 ミアがどこからか手でもてるサイズのボードを取り出し、現実世界から画印を右へ、そこに異界と書かれ、さらにそこから右斜めが神界、右斜め下に冥界と記載した分かりやすいモノを出してきた。

「えっと、冥界と神界って何?」

 良い質問ですね! と声を弾ませてミアが前のめりに新たに言うので、少し身を引いてたじろぐ。

「簡単に言うと死後の世界です。私たちが今いる場所はどちら価値いえば現実世界がわなので、問題ないですよ」

 問題大ありである、つまり、このままどこかに間違って進めばめでたくご臨終という事なのだろう。

「それで、ここはお客が・・・・」

 来るのかという質問をしようとしたまさにその時、カラカラぁと店のドアが開く音がした。

「いらっしゃいませぇ~」

 間延びした気の抜けた声でミアが入り口のドアに満面の笑みを向ける、するとそこには巫女服姿の見た目和風美人がこれまた笑顔で現れた。

「未菜さん、いらっしゃいませ」

「はい~、いらっしゃいましたよぉ」

 なんだろう、この二人同じ匂いがする。

 新が初対面のしかもお客様相手に失礼な事を思っていると、未菜と呼ばれた女性が新を見て。

「あら、現実世界の方ですね。返さなくて良いんですか?」

「う~ん、なんか路頭に迷ったようなので、拾っちゃいました」

 俺は拾われたのかよ?!

 思わずツッコミを入れたくなる新たに、お客さんがあらあらと、頬に手を当てて困ったわねぇみたいな顔をしているのだが、なんとなく困っていなさそうである。

「未菜さん、えっと旦那様とはどうですか?」

「聞いてきて、旦那様がね、旦那様がね!」

 ミアが話をふれば、未菜さんが水を得た魚のように生き生きとしながら、恋する乙女の様に声を弾ませ、すぐにカウンター席に着く、それを見て、何も言わずにニコニコと微笑みながらミアがその話を聞きながらカウンター内へと入りお茶を入れ始めた。

「おい、注文されてないぞ」

「大丈夫ですよ。いつもなので、ケーキこれに乗せて持ってきてくれると嬉しいな」

 持ってきてではなく「持ってきてくれると嬉しいな」などと言われたので、新はアンティーク皿にショーケースのケーキを乗せて戻ってきた。

 どういったお客様なのだろうと新が疑問に思っていると、そういえば忘れていたと言わんばかりに席方立ち上がり。

「わたくして、館宮の天御神、名を未菜と申します。えっと神様です一応」

 黒髪が非常に印象的で、お辞儀をした先からサラサラとその髪が流れ落ちる様は、まるで髪のCMにでも出てきそうなほどにキメが細やかで艶があり、神秘的ではあるが、なぜか親しみやすさの様なモノも感じられる印象だった。

 

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