その2。「悪役令嬢って子供でも生意気なんだな」

 どうもセーヤです。

 転生してから6年が経ちました。

 

 現在は女神に教えてもらった方法で体を鍛えている。

 まぁそれは普通に外で走って腕立てと腹筋をしているだけだし、まだ全部10回も出来ないけど。


 俺が転生したのは、女神の言った通りフロントと言う子爵家で、悪役令嬢のシルフレア公爵家の代々執事を勤めている家だった。

 正直違う人に転生している事を期待したが……残念ながら逃れられなかった様だ。


「セイド! 僕といっしょにきんトレしよ!」


 外で俺が怪我をしない様に見張っているこの家の執事であり師匠のセイドに元気に言ってみる。

 普段の俺はこんな性格ではないのだが、流石にこの歳でスカしてたらおかしいだろうから敢えて元気に振る舞っているのだ。

 

 セイドは俺の言葉に微妙な表情を浮かべる。


「……セーヤ様、また体を鍛えているのですか? 確かに執事は主人を守る為に戦闘も出来なければなりませんが、まだ少し早いと思いますよ」

「早くやっててそんはないよ!」


 俺がそう言うと、大抵やってくれるのが師匠だ。

 普段の執事になるためのトレーニングの時は死ぬほど怖いけど。


 因みに俺の両親はどちらも執事とメイドなので、この家に居ない。

 帰ってくるのも偶にだけだ。


 そんな中々会えない両親だが……今日は何故か家に帰って来るらしく、俺は遊ぶのを中断させてワクワクしながら家の門の前でセイドと待っていると、1つの馬車が此方にやってくる。


「……だれ?」


 その馬車は家では到底買えないような立派な馬車だった。


 おかしいな……今日誰かが来る事は聞いてないんだけど……。


 俺はセイドに知ってる? と言う意味を込めて目を向けると、小さく首を横に振る。

 執事長のセイドでさえ知らないとなると何か不安になってきた。


「せ、セイド……あれって父上と母上じゃないよね?」

「……いえ、多分あの馬車に乗って居ますよ。何故ならあの馬車はシルフレア家の馬車ですから」


 な、何ですとーーーっ!?

 って事はこの家に来るのか……あの悪役令嬢が。


 俺は両親に会えると言う楽しい気持ちが一気に萎えてくるのを感じる。

 しかし次期悪役令嬢の執事として、失礼のないようにしなければ。

 此処で下手すれば俺だけでなく両親の首が(物理的に)飛びかねない。


 俺が緊張しながら立っていると、馬車から両親が降りてきた。

 始めに降りて来たのは、ゾーラ・フロントとアリス・フロント———俺の両親だ。


 そして……その後ろから可憐な美幼女が降りてきた。

 真紅の髪と瞳は幼女ながら力強さを感じ、その立ち姿から自信がありありと浮かび上がって居る。


 しかし、その美幼女は何故かズンズンと俺に近付いてきた。

 なので俺は先にセイドに教えて貰った礼をして自己紹介をする。


「初めましてシンシア様。私の名前はセーヤ・フロントと申します」


 俺がそう言うと、シンシア様が腕を組んで尊大に宣う。


「アンタがゾーラとアリスが言ってたセーヤね。私はシンシア・フォン・シルフレアよ! 今日からアンタは私の執事ね! 私がやれと言ったら何でもやるのよ!」


 …………オーマイガー。

 ちゃんと俺が想像する悪役令嬢みたいな気の強さじゃん。

 

 俺は心の中で転生させた女神を憎んだ。

 

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