レフュージア

山田 真顔

第1話

 その日、男は神を見た。

 冬の名残の寒さの中、朝の光が差し込む礼拝堂に男は一人立っていた。

 前触れ一つなく、突如としてそれは光の向こうに現れ、男にゆっくりと穏やかに語りかけた。


 ――これより世界の理は変わり、あなたがたに苦難の時が訪れます。

 あなたはこの地に力有る者を集め、自らにとっての希望の大地となさしめなさい。

 力を合わせ、共に邪悪を打ち払いなさい。

 そして、幾多の困難を乗り越え、いつか私の元を訪れるのです。


 それはたちまち姿を消した。

 冬の終わりの日差しが男を照らす。頬を伝う涙が輝いた。

 男は蹲り、胸の前で両の手をそっと重ね合わせた。神秘は今やその胸の中。

 手は優しく強く重ね続けられる。決してそれを離さぬように。

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