第8話 罪の意識

 ヘリオスは炎の渦のようなものを地面に当てて上手く衝撃を緩和した。

 石のタイルのようなものが敷き詰められている床に炎が飛び散る。


「クソッ、、、あのくそ教師、、

 急にどうしたんだ、、、?」


「ほう、、、流石は勇者様だぁ、、、

 でもな!まだ安心するには少し早いんじゃないかな、?」


 俺は影に潜みながらその様子を"観戦"していた。

 二人は向き合い、お互いの様子を伺っている。


「ウッヒョォォォーーーーーーー!!!

 俺はお前を殺すんだよぉーーー!

 来い!俺の剣、準聖剣レーヴァテイン!」


 すると、虚空から一つの剣が出てきた。


「お前、本気か?

 し、真剣だぞ!斬られたら本当に、、死んでしまう。」

 

「ん?ああ、そりゃ、殺すんだから当たり前じゃないか。

 まぁ、この剣は俺がずっと使ってる剣だからなぁ、、、すぐ逝けるから、ありがたく思えよぉ!」


 ガイラはニヤリと笑みを浮かべる。


(あのおっさん、、、もう完全におかしくなってる、、、)


 ガイラは先程よりも大きく踏み込み、剣を向けて走り出した。


「クソッ!俺も本気でやらねぇとな!

 火剣、天竺のヴァジュラ!」


「そう、来なくっちゃなぁ!

 俺も自分自身の因果に蹴りをつけられるってもんだ!」


 カキンッ!カキンッ!カキンッ!


 二人の激しい打ち合いがあたりに響く。

 しかし、誰も二人の戦いを止めるなどしない。

 何故か?そんなもの決まっている。


 巻き込まれたくない、、、

 この一心だろう。


「お前!何で俺のことを攻撃してくんだよ!

 他の奴ら《モブ》がいるだろうがよぉ!」


「、、、そういうのが気に入らねぇんだよ。

 お前たちは人のことを見下し、人を助ける気なんでサラサラないんだ!

 そうに決まってるんだよぉぉぉーーー!」


 カキンッ!カキンッ!カキンッ!


「クッ、クソ!」


 段々とヘリオスが押されてきていた。

 周りがヘリオスが負けるんじゃないかと感じていた。


 そこに一つの人影が歩いてくる。

 ピンとした姿勢で気品があるその姿に誰もが驚いた。


「や、やめなさい!

 これ以上の戦闘はこの私、聖女ヒルメ•アマテラスが許しません!」


 シーーーン、、、


「...聖女様や。

 この勝負に混じりたいなら混じってもいい。

 でもその時は、、、


 自分も死ぬかもしれないという覚悟を決めてこい。」


 ガイラはアマテラスの方を向いて、睨みつけた。


「私は覚悟なんかできません、、、

 でも!貴方を助けられると信じて、努力することはできます。」


「おい、聖女!

 このキチガイおじさんを止めろぉ!

 もうこのままだと俺がやられる!

 さっきからの戦闘でもう体力がねぇんだ!」


 言葉遣いは通常通りのヘリオスだが、

 その顔は恐怖がしっかりと染みついた汗だくの歪んだものだった。


「神の救いというのはすべての人に訪れます。

 先生もきっとお辛いことがあったんでしょう。

 今私が解放して差し上げます!」


 そう言い放つと聖女の周りに光が集まってきた。


「聖属性魔法、精神回復レテ!」


(うわ!凄い魔力だ、、、

 流石は聖女、、、)


 光がアマテラスの周りに集まり、それは太陽をイメージさせるぐらいに綺麗だった。


「うわぉぉぉーーーーーー!!!

 俺は、俺は、、、

 ふ、ふぅ、ふぅ、、、」


「こ、この魔法は私の魔力じゃ一回しか使えませんが、、、精神の安定ならかなりの効力があるはずッ!

 先生!元に戻りましたか!?」


「あ、ああ、もう元に戻ったよ

 でもね、、、」


 ガイラは俯いたままガタガタと体を震わせていた。


「俺は、、、

 今、自分の意思で人を"攻撃"した。

 俺は自警団として様々な罪人を斬ってきた。

 その中で俺は罪人にも事情があることを知った。

 飢えた家族がいる、復讐したい相手がいる。


 俺は自分のつまらない"嫉妬"という感情でお前たちを攻撃した。

 俺は正気に戻ってこの事実に気付いた。


 つまり、俺は"罪人"だ。」


 一瞬だけ自分の世界が凍るぐらいに冷たくなったように感じた。


「まさかッ!

 先生!おやめくだ、、、」


「罪人は切られるのみだ。

 でも、俺はこの"罪"に気づくことができたんだ。


 満足だ。」


 グサッ


 ガイラは自分の胸を刺した。


「せ、先生!

 今、治しますから!治しますから!」

 アマテラスは泣きながら治療しようとしたが、傷が深い。


(正気に戻って自分の犯した罪と向き合った。その結論がこれか、、、)


 俺はその場から離れて影からでた。


「こんな腐ったゲーム、俺が終わらせる。」

 俺は小さく呟いた。
























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