◇閑話◇ 靭性(じんせい)

 以前、「◇閑話◇ モース硬度」のところで、宝石の耐久性を三つご紹介しました。その三つとは、「硬度」「靭性」「安定性」。

 今回はそのうちの「靭性」にまつわるお話をしようと思います。


〇靭性とは?〇

 靭性とは、「割れにくさ」「欠けにくさ」という、破損に対する耐性があるかを示すものです。「外からの力に対する破壊しにくさ」とも言い換えられます。


 そして宝石(鉱物)の場合、靭性の強さは「劈開へきかい」という性質と深くかかわりがあります。

劈開へきかい」とは、「結晶体がある特定の方向に沿って割れること。また、そのように割れやすい性質」(『明鏡国語辞典 第三版』より)のこと。「劈開」と難しい言葉で言われると馴染みがないかもしれませんが、皆さん、義務教育の理科授業で学んでいるはずです。(「黒雲母は決まった方向に薄く剥がれる」とか)


 話を戻しまして。

 この「劈開」という性質を持っていると、宝石はきれいに割れます。その分、弱いところに力が加わると、割れてしまったり、欠けたりするんです。


「靭性」の話のなかで、私が一番面白いと思うのは「ダイヤモンド」。

 前回の閑話で「モース硬度」を取り上げましたが、ダイヤモンドは自然界の鉱物のなかで最も硬いと言う話をしました。しかし、最強の硬さを持つダイヤモンドも、「靭性」に関しては最強ではないのです。つまり割れやすい方向があるということですね。


 それはダイヤモンドを構成する炭素の結晶構造によるものなのですが、その話をすると化学になってしまうので、ここではやめておきます。


 ちなみに、昔からダイヤモンドのカットには「劈開」が用いられています。割れやすい方向に沿ってカットすることで、一つの大きなダイヤから無駄なくいくつかのダイヤに分けることができたり、きれいにカットすることができるからです。


 ダイヤモンドに劈開がある一方で、「劈開のない宝石」もあります。例えば、コランダムやアメシストが挙げられます。

 コランダムは、ルビーとサファイアのことですね。コランダムはモース硬度も「9」ありますし、劈開がないという点から見ても、鉱物のなかで一番強いかもしれません。


 以上、靭性のお話でした。

 宝石の強さにはもう一つ「安定性」がありますが、このお話はまた別の機会で語ろうと思います。

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