第27話 トルマリン(10月)

 今回は、「トルマリン」について取り上げます。


【トルマリンとは?】

「トルマリン」とは、一つの鉱物の名前を指すものではありません。

「主要構成元素をホウ素とする、ケイ酸塩鉱物のグループ名のこと」なのですが、ちょっと難しいですよね。ざっくり言うと「ある鉱物のグループ名」ということです。


「トルマリン」と言われるグループには、10種類以上の鉱物かがあるといわれていて、「カラーバリエーションが豊か」であることと、「温められたり圧力をかけられたりすると静電気が生じる」のが特徴です。


*トルマリンに属する鉱物は、書籍によっては「13種類」「32種類」と数字に差があり、どちらが正しいかまでは不明でした。ただ、「32種類」としているものが科学雑誌のものだったので、真偽は不明ですが、もしかすると調査が進み、トルマリンに属する鉱物の数も増えたのかもしれません。(あくまで私の想像です)


〇歴史〇

 どうやら、紀元前から宝石として扱われていたようです。

 上記にも述べたように、様々な色があることから、緑は18世紀になるまでエメラルドと混同されて来た過去があります。(赤はルビー、青はサファイアに間違えられていたとも言われていますが、どこまで本当かは不明です)


【名前の由来】

<通説>

 トルマリンの名前の由来は、シンハラ語で「様々な色(もしくは様々な色の宝石)」を意味する「Turmali(トルマリ)」です。


<雑記>

 由来が「Turmali(トルマリ)」というのは、どの書籍も同じなのですが、意味にばらつきがありました。「土の中から出る宝石の粒」であったり、「宝石の砂礫されき」であったり。どれが正しいのかは分からないのですが、トルマリンのカラーバリエーションの多さから、私はここでの通説として「様々な色(もしくは様々な色の宝石)」を取りました。


 それから「スリランカ語の『Turmali』が由来」という書き方をされていた書籍もありましたが、スリランカ語というのはありません。多分、「スリランカ語」と言った方が、どこの国で話されている言語か分かるために、簡易的に用いているのだと思われます。

 スリランカでは、主にシンハラ語とタミル語という言語が話されています。

 話されている割合はシンハラ語が多く、タミル語は少数派です。旅行雑誌などを買うと分かりますが、ほとんどシンハラ語のことしか書いておらず、タミル語のことを触れているものはそう多くないので、この言語のことを知らない人は多いと思います。


 さて。

 ここまで色々な宝石をご紹介してきましたが、シンハラ語が由来の名前は初めて登場したのではないかな……と思います(紹介していたらすみません 笑)。


 これまで宝石の名前というと、ラテン語、ギリシア語、アラビア語、ペルシャ語など、誰でも名前なら知っている古い言語が多かったかと思いますが、スリランカは宝石の産地ということもあって、シンハラ語由来の宝石名もあります。


 これからの紹介でも、またたまに出て来ると思うので、注目していただけたらと思います。


<和名>

 電気石。静電気を生じさせる石のため、この名前が付けられました。


【メモ】

「トルマリン」には、色に応じて様々な名前があります。それらについて簡単にご紹介しましょう。


〇グリーン・トルマリン〇

 その名の通り、緑色のトルマリンです。これがエメラルドと間違えられていました。緑色になるのは鉄の成分が入っているからで、「ヴェルデライト」とか「バーデライト」とも呼ばれます。


〇バイカラー・トルマリン〇

「バイカラー」とは、二つの色が備わっていることを指します。トルマリンの場合は、緑とピンクがセットになっていることが多いです。

 中でも面白いのは、「ウォーターメロン・トルマリン」と呼ばれているもの。これは結晶の中心がピンク色で、外側が緑色になっているのです。まさにスイカ色のトルマリンというわけです。


〇ルベライト〇

 トルマリンには、赤系のトルマリンもあります。淡い色のものは「ピンク・トルマリン」と言われていますが、鮮やかな赤い色のものを「ルベライト(ルーベライト)」と言います。

 名前の由来はラテン語の「ルベウス」から。これはルビーの名前の由来と同じですね(第4話参照)。


 上記には「ピンク・トルマリン」と「ルベライト」には、色の発色による区別があると記載しましたが、厳密な取り決めはないので宝石店によって扱い方が違うようです。また、「ピンク・トルマリン」を放射線照射をすることによって、鮮やかな赤になることから、ほとんどがこの処理がされていると言われています。


〇カナリー・トルマリン〇

 黄色いトルマリンのことです。「カナリー」という名前から分かる通り、カナリアのような色合いからこの名が付きました。

 1983年にアフリカのザンビアで発見されるまで、ほとんど市場に現れなかったことから、トルマリンの中でも歴史の浅い色であるといえるでしょう。


〇インディコライト〇

 青いトルマリンのことです。優しい色合いのブルーは「ブルー・トルマリン」と言われていますが、藍色のように、より深い青をたたえたものは「インディコ・ライト」と言います。

 トルマリンの中でも希少価値の高い色の一つです。


〇パライバトルマリン〇

 ネオン・ブルーのトルマリンのことです。世界三大稀少石と呼ばれる宝石で、トルマリンの中でも最も価値が高いと言われています。

 これについては、他の稀少な石と一緒に解説できたらいいなと思っていますので、今回はこれくらいにとどめておこうと思います。

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