3月

第10話 アクアマリン(3月)

 今回は、「アクアマリン」について取り上げます。


【アクアマリンとは?】

 アクアマリンとは「ベリル」という鉱物のなかで、透き通った水色のもののことを言います。


〇化学の話と「ベリル」の仲間たち〇

「ベリル」とは緑柱石のことです。緑柱石は、エメラルドの和名で登場しましたね。つまりエメラルドも「ベリル」ということです。


「ベリル」は、「ベリリウム」という元素のなかでも、希少で貴重な金属を多く含んでいます。その「ベリル」にわずかに含まれる元素の違いによって、宝石の色が変わります。


 例えば、鉄が含まれると「アクアマリン」、クロムやバナジウムが含まれると「エメラルド」になるのです。

 また四月の誕生石でもある「モルガナイト」もベリルの仲間で、これはマンガンを含むことで淡いピンク色になります。さらにマンガンの量が増えると、「レッド・ベリル」と鮮やかな赤を放つ鉱物となります。


 そのほかにも黄色系のものは「ヘリオドール」、エメラルドよりは劣るけれども緑色のものは「グリーンベリル」、無色のものは「ゴシェナイト」と言われています。


〇歴史〇

 その澄んだ水色から海を想像したのか、古代ヨーロッパの船乗りがお守りとして身に着けていたと言われています。



【名前の由来】

<通説>

 アクアマリンはラテン語から来ており、「Aqua/アクア」は「水」、「Marine/マリン(マリーン)」は「海」を指します。

 約2000年前にローマ人によって名づけられたと言われています。


<雑記>

 水族館の名前にもなっているので、もしかすると「アクアマリン」という言葉は聞き馴染みのある名前かもしれませんね。

 アクアマリンの名前の由来は、どの書籍をみても同じでした。

 ラテン語で「海の水」を表すそれは、まさに海の水のように透き通った美しい宝石にピッタリな名前だと思います。

 また日本では三月の誕生石になっていますが、その色が爽やかであることから、夏に涼を呼ぶ宝石としても多くの人に好まれているようです。


<和名>

「緑柱石」「藍柱石」「藍玉」の三つの呼び名があります。

「緑柱石」はエメラルドと同じ名前で不思議かもしれませんが、「緑柱石」は「ベリル」のことを指すので、ベリル系のものはどれも「緑柱石」といいます。

 そのなかでもアクアマリンは流通量も多いこともあって、別途「藍柱石」「藍玉」という名前が付いているようです。


「藍」も「藍色」というと濃い色を思い浮かべますが、「藍染」には色んな幅の色があるので、「甕覗かめのぞき」くらいの色になるとアクアマリンに近い色になるかもなぁと、調べていて思いました。


*「甕覗かめのぞき」……きわめて淡い藍色。藍染のなかで最も薄い色のこと。


【メモ】

〇加熱処理されているのが一般的〇

 ルビーの項目で、「宝石は熱を加えることにより色鮮やかになる場合がある」ということをお話したかと思います。実はアクアマリンも加熱することで、色を鮮やかにしている宝石の一つです。


 アクアマリンは加熱処理されることが一般的で、「未処理」と書かれていない場合は全て加熱処理済のものだと言われています。

 加熱をしても宝石の品質が変わらず、見た目が一層美しくなることから、市場でもある程度認めている処理なのだそうです。


 また、アクアマリンという名前の通り「シーブルー」というのがこの宝石の色ではありますが、近年はスカイブルーが好まれることもあり、色の濃いアクアマリンの価値が上がってきているようです。

 需要に合わせて、アクアマリンの流通する色も変わってきているのかもしれませんね。


〇「サンタマリア・アクアマリン」と「サンタマリア・アフリカーナ」〇

 品質が良く、色の濃いアクアマリンが産出する地に、ブラジルのサンタマリア鉱山があります。そこで採れた最も美しいものを、「サンタマリア・アクアマリン」と言います。

 さらに、アフリカのモンザンビーク産のアクアマリンは、天然物のスカイブルーのアクアマリンが採れるようで、特に色の濃いものを「サンタマリア・アフリカーナ」と言うそうです。

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