第50話 秘密

 るなちゃんの料理を食べ終え、部屋に戻った奏汰と静華さんは奏汰のお母さんを待っていた。


「そろそろ来るんじゃない?」


 そう静華さんが言った瞬間、部屋のドアがノックされた。


「本当じゃないですか」

「まあね〜」


 自信ありげな顔をしながらそんなことを言ってくる静華さんはすぐさま表情を変え、ドアの向こうにいる人へと声をかけた。


「どうぞー!」


「奏汰、久しぶりー!」

「久しぶりママ!」


 2人は挨拶を交わしたあと奏汰のお母さんは静華さんの方へ歩いていき、手荷物から衣類を取り出した。


「すみませんこれ、着替えとかタオルです」

「あっありがとうございます」


 手荷物を静華さんに渡し終えたところで、奏汰のお母さんが混じった会話が始まった。


 なにこれ......実質三者面談みたいな感じなんだけど、めっちゃ恥ずかしい。


「入院生活はどう?」

「慣れてきたら案外楽だよ、友達も出来たし」

「そうなんだ、よかった」


 安堵した顔をしながら奏汰のお母さんは話を続ける。


「ママ入院したことないから大丈夫かなって心配してたのよ」


「思っていた以上に快適だから全然大丈夫」

「なにか足りないものとか無い?」

「うーん......今のところ特にないよ」

「分かった、何かあったら看護師さんに言うのよ」

「うん、分かった」


 僕がそう言ったあと静華さんはしゃがんで僕に目線を合わせて言った。


「奏汰くん、遠慮せずに言ってね」

「分かりました」


 優しいなぁ静華さん、僕が車椅子だから目線合わせてくれた。でもちょっと距離が近いような......


「あっ、そうだ! 暇だと思って色々持ってきたよ」


 そう言って奏汰のお母さんは手に持っている鞄から何かを取り出した。


「えっなに?」

「これ、奏汰が好きな漫画と小説」

「ありがとー!」


 奏汰はお母さんからその2つを受け取り、題名を見てから巻数を見た。


「あと一応オセロとかトランプもあるよ」

「ほんとに色々持ってきてる......」

「あとは......あっ! 奏汰の好きなアイドル──」

「ちょいちょいちょい! ......ちょっと待って」


 えっ、ちょっと待って、なんで持ってきてるんだ? ......ていうか机にある鍵付きの引き出しに入れておいたはずなのに、なんでママの手元にあるんだよ!?


「へー奏汰くんってこういうアイドルが好きなんだ〜? 」


 いつの間にか静華さんの手に渡っていた奏汰のアイドル写真集、表紙には顔立ちの整った可愛い女性が1人。


「見ないでください!」

「独占したいのー?」

「そんなわけないじゃないですか!」

「じゃあこの水着姿が好きなんだ?」


 そう言って静華さんは僕に見せるように表紙を指差した。


「水着姿って、ラッシュガードじゃないですか」

「だからこの水に濡れてボディラインがはっきり見えるラッシュガードが好きなの? ってこと」


 そう聞かれ、僕は静華さんから目を逸らして黙り込んだ。......だけどそれは逆効果だった。


「ふーん......なるほどね」

「なに理解したみたいな顔してるんですか!」


「まあいいじゃない、実際この女の子可愛いし、奏汰くんが好きになるのも頷けるわ」


「とりあえずそれ、返してくださいよ」

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」


「仲良いのね、安心したわ」


 そんなやり取りをしている2人を見ながら安心したように微笑んでいた奏汰のお母さん。


「いつもこんな感じなんですよ」

「そんなことないと思う──ていうかなんでこれママが持ってるの!?」


「机の上に置いてあったから持ってきたの、前にこのアイドルグループのライブ行ってたでしょ?」


 まさか自分のミスとは......ライブも友達に誘われたからって言ったのに好きなのバレてるし。


「まあ......」

「いらないなら持って帰るけど──」

「いや、いります」


 そう言って奏汰はその写真集を自分の体に密着させ、誰にも取られないようにしていた。──そんな中、部屋のドアが軽くノックされた。


「奏汰......お昼──って......まだ......いっ......!」


 いきなり現れたるなちゃんは、そう言って勢いよくドアを閉め走り去っていった。


「あの子は......?」


「あの子は宮咲みやさきるなちゃん、極度の人見知りで奏汰くんのお友達です」


「そうなんですね」


 学校のお友達のことは奏汰覚えてないって言ってたから大丈夫かなと思ったけど、これなら大丈夫そうね。


「多分奏汰くんをお昼ご飯に誘おうと来たんでしょう、可愛いですよね」


 あっ声に漏れちゃった......まあこのぐらいなら誰にもバレないから大丈夫か。


「じゃあそのるなちゃんのお誘いもあるし、そろそろママ帰るね」


「分かった、またね!」

「うんまた来るから」


 そう言って奏汰のお母さんはドアハンドルに手をかけ、この部屋を後にした。


 ふぅ、三者面談みたいで緊張したぁ......あっ待って──もしかしてだけどるなちゃんにこの写真集を持ってるところ見られた? 見られてたらめっちゃ恥ずかしいんだけど......どうしよう......




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あとがきです。


どうも、まどうふです。

さて今回はですね、お見舞いで三者面談っぽくなったり、るなちゃんが奏汰のお見舞いがもう終わったと思ってお昼ご飯誘いに来たり、奏汰の好きなアイドルの写真集が暇つぶしアイテムに抜擢されたりと、騒々しいですかね(笑)


まあそんなこんなで色々ありますけども、現実では季節外れですけど物語上ではハロウィンパーティーが近づいて来ていますよと。さて、気合い入れますか。


少しでも気分が楽になったり、面白いな落ち着くなと思っていただけたら幸いです。


よければフォローと♡、★のほどよろしくお願いします!


以上、まどうふでした!

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