第2話 お約束の展開

「おいおい!! オオバカトリって冒険者になれるのかよ!?」


 冒険者なんだろうな、ロビーにいた一人の男が絡んできた。

 うーん、これも予想通り。


「‥‥‥ビリーさん、今こちらの方の対応中です。列に並んでください」

「こんな奴の相手してるから俺の待ち時間が増えるんだろうが!」


 受付嬢がとりなしてくれたが相手は聞く耳を持たない。

 こういった対応はなるべく冷静に‥‥‥冷静に‥‥‥。


「そうか、すまなかったな。間もなく終わるだろうから待っていてもらえないだろうか?」


バァン!! とテーブルに拳が叩きつけられる。

「お前みたいな無職の雑魚と同じ冒険者って言われるだけで我慢出来ねえっつってんだよ!」


「‥‥‥じゃあどうしろって言うんだよ?」

「お前、一人でダンジョン行って帰ってきてみろよ? それくらい出来るんだろ? 冒険者なんだからよ」


 ザワザワ‥‥‥とまた周りが騒がしくなった。


「アルバトロスがソロでダンジョンとか無理に決まってるだろ‥‥‥」

「いや、わざと無理言って追い出そうとしてるんだよ」

「それでやるのかい? やらねえのかい? どっちなんだい!?」

 周囲からそんな声が聞こえてきた。


 受付嬢がカウンターから出てくる。

「アルフレッドさん、挑発に乗ってはいけませんよ。一人でダンジョンなんてダメに決まって‥‥‥」


 そこでこのビリーとかいう奴の怒声が響く。

「そんな決まりないだろうが!? 適当な事言ってるとコマすぞ、こら!!」


 奴は受付嬢にまで怒声を発した。受付嬢は萎縮してしまったようだ。


「わかった、やってやるよ」

「!! ほう、いい度胸してるじゃねぇか」


 勝負の内容はダンジョンに一人で入り、ダンジョンのモンスター五種を倒して魔石を回収してくる事、と決まった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 なけなしの金で装備を整え、ダンジョンに入ってから数時間‥‥‥俺はゴブリン、スティールバット、大ネズミ、スライムと倒し魔石を手に入れたので残り一種‥‥‥。


「ふむ、今のところはなんとかなってるけど‥‥‥」

 階層も浅いしダンジョン特有の『ヒカリゴケ』のおかげで明るさも問題ない。モンスターの強さもなんとか戦えるレベルだ。


「ふう、聞いた話ではこの先にセーフゾーンがあるはずだ。そこで少し休憩しよう」

 セーフゾーンにはモンスターは入れないそうだ。そこで休憩をしたり、救助を待ったりとするところらしい。事前に聞いておいて良かった。

 

 しかしセーフゾーンに入った俺は違和感を感じた。モンスターの気配が濃い。

 セーフゾーンにはモンスターは入れないはずなのに‥‥‥。


 やばい気がする‥‥‥、ここに長く居てはいけないと思った。矢先、現れたのは赤い狼だった。


「グルルル‥‥‥」


 コレはマズイな、気が立ってるじゃないか。はっきり言って今の俺では勝てる気がしない。


 剣を構えたまま、後ろに下がっていく。背中を見せたらそのままガブリとやられてしまうだろうから。


 ジリジリと下がっていく。このまま出口に近づいていければなんとかなるかな‥‥‥?


 そんな不安を察知したのか、赤い狼は俺に飛びかかってきた。

「うわぁあああ!!!!」


ガキィィィン!!!!

 不恰好に振った剣が狼に当たった。上手いことカウンターのように入った形だ。


 少しでもダメージが与えられれば逃げられるかもしれない‥‥‥。


 だがダメージを受けたのはこちらだった。頼みの剣が折れてしまった。当たったのは狼の爪のところだったようだ。

「クソっ! 安物だったからな‥‥‥」


 絶対絶命‥‥‥どうしよう?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る