2/8 「姫騎士さんは今日も死にたい」反省会



 カクヨムコン終了!!


 カクヨムコンに参戦した新作長編、「姫騎士さんは今日も死にたい」も、先日無事完結いたしまして……

 読者選考期間も終わった今、「姫死に」を振り返り、来年のカクヨムコンのかてとすべく、ここで反省文を書きたいと思います。


 作品の内容にも触れますので、未読のかたは、ぜひ先に本編を読んでみてくださいね!



「姫騎士さんは今日も死にたい」

https://kakuyomu.jp/works/16817330668311273704



●作品コンセプトについて


 以前の日記でも述べましたが、今回のコンセプトは「軽〜く読める作品を、手間をかけずに軽〜く書く」でした。


 ふだん僕の作品を読んでくださってるかたならご存知のとおり、僕の作品はとにかく重い……暗い……読みにくい……

 ひどく読み手を限定する方向に進んでるのは、ずっと前から自覚しておりました。


 そこで、これまでとはスタイルをガラッと変えて、


・使う語彙は平易に

・描写は簡素に

・漢字はなるべく開く

・ルビを多用して可読性アップ

・作中独自用語の使用を少なくする

・文章の美しさより読みやすさ優先

・隠喩の使用は厳禁

・ストーリーは単純に

・キャラ描写は一面的に、はっきりと強調

・サブプロットの組み込みはひかえる

・伏線はハッキリ張ってキチッと回収

・世界観設定の広がりをあまり匂わせない

・主役・メインゲスト級のキャラ以外は名前を出さない

・地名も出さない


 ……と! このように、徹底的に作品を軽くする方針で書きました。

 ごらんのとおり……ふだんの僕とは真逆です!!


 まあ、ふだんの自分の作品が、「どっかり腰を落ち着けて、身構えて、集中して読む」という、書く側にとっても重たいし、読む側にとっても重たいスタイルになっていて……

 それは僕のやりたいことなんですけど、ただ、広く読んでもらうには、他のこともできなきゃダメだよな、と思いまして。


 つまり、「鼻歌でも歌いながら、軽い気持ちで、ざざーっと読む」というものを書ける力も要るだろう、と。

 そのように考えて、今回は書いてみたのでありました。


 いかがだったでしょうか?

 思惑どおり軽くなっていたかどうか……

 軽くはなっていたとしても、てんで魅力のないものになっていなかったかどうか……


 よかったらぜひ、ご意見をお寄せください。



●自己反省


 ……と、いうコンセプトで書いたうえで、自分での反省なのですが。


「うーん、改善点もりだくさん!!」

 というのが、正直なところです。


 まず、読みやすさについては、たぶん悪くない形になってるかと思います。

 ただ、新しい文体を悩み悩み組み上げていった関係で、初期に書いたところ(実は第3話が最初に書いたエピソードでした)と、終盤に書いたところでは、書きかたが統一されていなくて……


 漢字の開きかた、ルビの打ちかた、語彙の選択基準など、うまく制御できていたとは言いがたいものがあります。


 要するに、もっと読みやすくできたよな……読みやすさをそこなわずに迫力や情感をもっと出す方法もあったよな……と、完成直後から悔やむことしきりでした。


 特に最終盤はね……〆切に追われて、1日で2万字も書いたうえ、読み返しもせずに即公開してたので……

 推敲が足りてないのは間違いないです。



 また、ストーリー面でも、単純化するのはまあいいとして、うまく物語をドライブさせきれなかった、という反省があります。

 たとえば、


・第1話でのナジャ救出

・第2話での竜との共闘

・第3話でのナジャの焦燥

・最終話での魔王決戦


 このあたりは、もっと……「グッ!!」と盛り上げたかった。

 全体的に演出が薄味になりすぎたように思います。


 だいたい、「勇者の後始末人」でも、各エピソードの初稿は、盛り上がり方がこんなもんななんですよね。

 それを何度も何度も書き足して削って順番入れ替えて書き直して……という作業を繰り返し、やっと完成するのがあの作品、というわけで。


 もっと時間をかけてプロットを練り込めていたらな……と、忸怩たる思いを抱いております。


 まあアレです。カクヨムコンに出そう! と思い立ったのが遅すぎた!

 来年はここらへん、もっと早めに、計画的に書いていこうと思います。


 というか、すでに来年のカクヨムコンに向けて、資料の収集とネタ出しを始めております。お楽しみに!



●キャラクターについて


 一方、今回のキャラクターたちのことは、けっこう気に入っております。



 希死念慮もちの姫騎士、ヒメナイト!

 彼女の行動や心理描写には、僕自身がつらかったときの経験や思いをブチこみました。

 病んでもタダでは起きねえ! 自分の苦しみもネタに使う! それが書き手の心意気ってやつよ!!


 ただ、こう……当初の意図としては、「ことあるごとに自殺を試みるヒメナイトを見てケラケラ笑うコメディ」というスタイルでいくはずが……

 自分自身のリアルな実感を込めすぎたせいか、なんか笑えない感じの仕上がりになってしまって、そういう意味では「……失敗!?」って感じでした。


 死や病気や狂気を笑いのネタにする作品は数あれど、ああいうのはみんな、絶妙なバランス感覚で書かれていたんだなあ……と、自分でやってみて初めて実感しました。

 難しいですね、コメディは。



 そしてナジャ!

 この子は「俺の大好きないつもの前向きヒロイン」という感じで、自分の好きなタイプのキャラをてらいなく書いていきましたので、書いてて非常に楽しかったです。


 名前はロシア人名「ナジェージダ」の愛称から。

 ナジェージダは「希望」を意味する言葉で、ナジャは文字通り、ヒメナイトにとっての希望の星なのでありました。


 今回のメインストーリーは、もちろん「鬱で苦しんでるヒメナイトが、新たな生き方に覚醒する」物語なのですが、ナジャは、そのために欠かすことのできない重要人物です。


 3人目の主人公キリンジは、物語の構成上、実はヒメナイトにとっての最大の敵になっております。


 どういうことかというと……キリンジは、親友として、ずっとヒメナイトを甘やかしてるんですね。

「お前は今のままでいいよ!

 成長しなくていいよ!」

 と、手を変え品を変え、言い続けているわけです。


 それはヒメナイトにとって表面上うれしいことだけど、一方、彼女の成長を阻害してもいた。

 もしあのままキリンジと2人だけで旅していたら、遠からずヒメナイトは破滅していたでしょう。


 そこで登場するのが、部外者であるナジャです。

 ナジャは、ヒメナイトの都合などおかまいなしに、ヒメナイトを振り回します。

 ヒメナイトが試練に挑む理由を作り、上手いこと言ってヒメナイトをその気にさせ、そのうえで適切に報酬を与えたり支援したりして、試練達成をサポートします。


 ナジャと一緒に旅することで、ヒメナイトは少しずつ成長していく。

 その過程で、かつて「お師匠様」に教わったことを思い出し、中断してしまった精神修行の続きに取り組みはじめる。


 そして最終的に、師が言わんとしていたことを理解し、覚悟し、試練を成し遂げるのです。



 魔王討伐後、ヒメナイトはナジャと「ずっといっしょに旅する」ことを選びました。

 つまりこれは、「試練だらけの人生に、これからもずっと向き合い続ける」決心に他なりません。


 今も「死にたい」気持ちは変わらないし……

 明日もきっと「死にたい」けれど……

 そんなふうに病んでしまった自分は、もう元に戻すことはできないけれど……

 それでも、ずっと人生をやっていくんだよ!!

 というのが結論。


 以上が「姫死に」の精神面でのストーリーでありまして、そのために欠かせない役割を果たすのが、ナジャであったわけです。



 その他、脇役のみなさんもかなり気に入ってます。


 特に魔王軍の面々!


 露骨に病んだ中間管理職な「ぜんぜん普通の獣」……

 下には上手いこと言いながら、上には媚びへつらい、その隙間で甘い汁を吸うことしか考えていないザザン……

 くそコンサルのリリ……

 そして! ザ・「プレイヤーとしては最強だがマネージャーとしてはとことん無能! でもプレイヤーとしての能力だけでトップに立ってしまったクソ社長」の魔王様!!


 おおかたお察しのとおり、魔王軍はクソブラック企業をイメージして書きました!!

 「その場のノリで命令出したくせに完全に忘れてる」とか、「たかが物品購入くらいでいちいちトップに稟議を通すクソシステム」とか、「とにかく悪いやつを見つけて叩いて遊びたいだけの反省会議」とか、クソ企業のリアリティが出るようがんばりました!!


 嫌なリアリティがあるな……って、思ってもらえたら嬉しいです。



●世界観について


 既読のかたはお気づきかもしれませんが、「勇者の後始末人」や「俺の脳ミソを喰って行け」と同じ世界での話です。


 ヒメナイトの「お師匠様」が、実は「勇者の後始末人」の登場人物の1人であったりします。


 くわしい関連については……「勇者の後始末人」の今後の展開のネタバレになっちゃいますので、今はこのくらいで。

 いつか「勇者の後始末人」が完結したら、そこらへんの関係も公開したいですね!



「勇者の後始末人」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054883238639



 しかし、両方読んでくれたかたは、こう思うかもしれません。


「魔王がすげー気合いれて撃った術が、《爆ぜる空》……?

 その術、カジュさんが連発してたやつだろ?

 ……魔王、弱くね!?」


 それはな!

 カジュのほうがバケモノなんだよ!!


 魔王ムゲルゲミルの実力は、「勇者の後始末人」初期のカジュと、だいたい互角くらいです。

 これは魔王が弱いというより、弱冠10歳でそんなレベルに達しているカジュがおかしい。

 カジュが本気を出せば、今回の話で魔王が大暴れしていた、あのくらいのことはできちゃうわけです。

 実際、「勇者の後始末人」第三部でやってますしね。


 いちおう、魔王の《爆ぜる空》は、魔王独自のアレンジが施された、かなりの威力強化版である、という設定にはしてあります。



 一方、ヒメナイトのほうも、「勇者の後始末人」の緋女ひめに比べると、かなり実力差がある、というふうに描写しました。


 ヒメナイトも世間的な常識では強い。

 ヒメナイトと互角以上に戦える戦士系キャラは、「勇者の後始末人」全体を通しても、緋女ひめ、巨人ゴルゴロドン、竜人ボスボラス、剣聖デクスタ、道化のシーファ、の5人だけでしょう。


 これも比べる相手がバケモノだらけなだけで……ヒメナイトも十分な力は持っている。

 世界最強とはいかないけれど、最強じゃなくても、世界を救えるんだ! ということを書きたかった。




 以上!

 長くなりましたが、反省と裏設定はこんな感じ!


 ヒメナイト、ナジャ、キリンジの3人は、これからもあの世界で旅を続けていきます。

 いくらでもエピソードを書き足せる形で終わらせましたので、ご要望があれば、またあの3人組の物語を書くことがあるかもしれません。


 ま、今はひとまず、「彼女らはこの先、ずっと幸せに暮らしたのだ! めでたしめでたし!!」ということで、ひとつ。



 最後になりましたが、「姫騎士さんは今日も死にたい」を読んでくれたかた、♡や★レビューを入れてくれたかた、本当にありがとうございました!!

 ダクさんの次回作にご期待ください!!

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