不思議な体験

成瀬昭彦

南海電鉄で・・・

2000年代の5月半ばの土曜日、関西国際空港の鉄道駅(南海電鉄とJR)のコンコースにて「関空旅博」というイベントが毎年行われていた。


日本各地と世界各国の観光案内ブースに大手航空会社の案内ブース等があり、観光地の紹介やアピール等を行っていた。



更に日本各地と世界各国のフードの屋台もあり、賑わっていた。

タイカレーやドイツのウインナー、日本各地だと焼きそばや栃木の餃子などが人気だった。


自分も毎年欠かさずに行っていた程だ。



しかし、ある年のイベントが行われていた土曜日、かなりの眠気に襲われていた。更に、フードの屋台はかなりの行列だった為、無理だと思い。難波に戻ってそこで軽く食事をしよう、また翌日来てみよう。と思い、南海電鉄で帰るつもりでいた。



改札を通り、駅のホームへ。難波行きの特急(ラピート)と普通列車が・・・。


「関西空港から各駅に止まる普通列車なんて珍しい!」



空港へのアクセスは特急か急行だけだと思ったのだが。1日に1往復のみ普通列車が有ったようだ。


とりあえず、その普通列車に乗り込んで、ゆっくり帰ろうと思ったのだが・・・。



関西空港駅を出発した普通列車。連絡橋を渡り、りんくうタウン駅に。


そしてその、りんくうタウン駅を出発した直後の記憶がまったく無い状態に・・・そのまま眠りについていたという状況では無いのだ。



・・・気がつけば、次の泉佐野駅で、急行に乗り換えていたのだった。・・・自分でも泉佐野駅で普通列車を下車して、急行に乗り込んだ記憶がまったくなかった。


「えっ!!」と気がついた時には、混雑している急行に乗り込んで、扉も閉まって、泉佐野駅を出発していたのだった。


「なんで、急行に乗っているんだよ??」


と思ったぐらい不思議な気持ちだったのだが。


その急行じたい、朝の通勤ラッシュ並みの混雑ぶりで、もみくちゃにされた状態だった。おそらく、潮干狩りの帰りの乗客ばかりだったかも知れない。



大阪南部には、(ぴちぴちビーチ)や(ときめきビーチ)等の海水浴場があるので、そこでの潮干狩りの帰りの乗客だったのだろう。



あまりの混雑なので、岸和田駅で降りるつもりでいたのだが、更にどんどん乗り込んできた為、降りれなかった。


「降ります!」と言おうにもまったく声が出ず、結局降りられなく、終点の難波まで、もみくちゃにされながら乗車していた。



難波に着いてやっと解放された感じだった。それにしても。なぜ泉佐野駅で急行に乗り換えていたのか自分でもまったくわからなかった。何かに操られていたかのように思えた。


その為、かなり疲れとイライラ感が溜まった状態で帰宅したのだが・・・。



その日夕方5時半からのテレビニュースを見ていたのだが、そこに信じられないニュースが。


南海電鉄で踏切事故が有ったと言うニュースが流れた。



泉大津駅から羽衣駅の間の踏切で軽トラックが立ち往生、そこに列車が急ブレーキをかけたのだが間に合わず衝突したというニュースが流れた。



そのニュース映像を見てみると、その列車は、関西空港駅から乗り込んだあの普通列車だったのだ。


今は、高架になって、踏切も無いのだが・・・なんとも複雑な気持ちだった。


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