第5話 どうしたのですか?父上?


時が過ぎ俺、もとい僕は10歳になった

一人称は俺から僕に変えたと言うか変えられた母上に自分のことを俺と言ったら可愛くない!と叱られメイド達もウンウンと頷いていた

そして矯正された…なんか違うくない?


それに僕に妹が出来ていた

僕が8歳の時だ

新たな家族に僕は嬉しくなってお腹の大きくなった母上にずっとついて回っていたエマとカノンやメア、メイド達と共に母上の身の回りのことを手伝った


そして遂に妹が産まれた

名前はエステル母上と同じく銀髪翡翠色の目だ

天使の様な可愛さだ

前世での妹には僕が死んでしまって悲しい思いをさせてしまった

もう2度となんな顔の妹は見たくないそう思いエステルにはとても優しくしている


僕とエステルが一緒に遊んでいるのを見て母上やメイド達はここは天の楽園とか言っている

まぁエステルは可愛いし天使だからわからなくはないけど


父上は初めての女の子なので未だにアワアワしながらエステルと接している騎士団長も娘の前ではかたなしの様だ


さらに10歳となった僕は体が出来始めついに座学のみではなく剣術指南、魔法指南が入ることになったまだ早いと両親からは言われたがそこは僕に甘い2人だ物凄くおねだりした末に許可が降りた!そしてなんと指南役は母上と父上だ!

この国最強の魔法使いと魔法騎士に教えてもらうなんて贅沢すぎるな


と言うことで今日は父上に剣術指南教わる日だ!生前の異世界転移で師匠から剣も教わったのだが父上に通用するかな


「準備は良いかアークよ」


剣を構えて父上が言う

僕も剣を構え


「はい!お願いします!父上!」


「うむ、なかなかいい構えだなアーク隠れて稽古でもしていたか?」


おっと


「え、えぇと、そういうわけでは」


「ふむ、まぁ良いそのまま打ち込んで来い!どんなものか見るとしよう」


父上の目が鋭くなったすごい圧だ

全然本気じゃないハズなのに父上がさらに大きく見える

僕は真剣に改めて気合を入れる


「行きます!!」


僕は思い切り地面を蹴った


「っし!」


一息で父上の前まで来るとそのまま正面から父上に向けて木剣を振り下ろす


「む…甘いな」



父上は一歩も動かず受けようとする……が


刹那僕の姿が消える


「!!」


僕は一瞬で父上の背後に周り木剣を振るったしかし


「っ!」


「ふむ、驚いた…だがまだまだ甘いぞアーク」


父上は未だに一歩も動かず背後からの僕の剣を止めた


嘘だろ背中に目でもあるのかこの人

僕は距離を取り構えしかし攻めあぐねていた

隙がない…


「どうしたアークよ、来ないのならこちらから行くぞ!」


父上が正面から迫る、僕の脳天へと木剣が振り下ろされるが僕はなんとか反応して木剣を横にして突き出し受け止めようとする


「え?」


突如、父上の振るった木剣が消えたそして僕の胴体へと木剣が当てられていた


「まぁ初めてにしては動けていたな、つい少し本気で動いてしまったぞアークよお前は剣の才能がある様だな」


ヤベェこの人これで全然本気じゃないって嘘だろ…いくら今の体がまだ出来あがってないとはいえ俺だって師匠に5年間鍛えてもらったんだそれが手も足も出ないなんてなんか悔しいな


「父上!もう一本!お願いします!!」


僕…俺は再び構え父上に向かった


「ふふ…いいだろうアークよ気が済むまで来るがいい!」


「ヤアァァァ!」


「む!はっ!」


俺は全力で父上に挑んだ何度も何度も

そして


「ハァ、ハァ、ハァ、やった……一本…ハァ…とった……」


何十回という打ち合いの末、遂に父上から一本取ることができた


「…………………」


「?父上?どうしたのですか?」


何故か父上が動かないなんだ?考え込んでるのかもしかして怒らせたか?


「アークよ」


「は、はい」


「剣を握ったのは今日が初めてか?隠れて稽古していたのか?」


あーなんか最初に言ってたなどうしよう前世のことは言えないしここは


「いえ、剣を握ったのも振ったのも今日が初めてです」


「そうか……」


「今日はここまでにしよう、日も暮れてきたことだし一応カノンに体を診てもらいなさい、彼女は医学に詳しいからな」


「はい!ありがとうございました!父上!」


「うむ」


僕は屋敷に戻ろうとして


「ち、父上…」


「む?どうしたアーク」


「その、あの、今日父上と剣を交えてとても楽しかったです!それでは!」


あー顔から火が出そうだ

僕は早足に屋敷へと戻った


---------------------


〜アドルフ視点〜


「………………ふふ」


アークが早足に屋敷へと戻った

なんとも嬉しい事を言ってくれたな


アーク、アークライド我が宝


「ふふふ、嬉しそうねアドルフ」


「エレナか」


ふと声をかけられて見ると愛しい妻であるエレナが立っていた


「見ていたのか」


「えぇ途中からね、あなたもアークちゃんも楽しそうに剣を振っていたわね」


「あぁ我が子と剣を交える事ができるとはこんなにも嬉しいことはないよ」


それにアークのあの才能正しく導けば私よりも遥かに強くなるだろう本当に将来が楽しみだ


性格的にもエステルやメイド達と接している様子を見れば優しい子に育っている様だ


「さて、我々も屋敷に帰ろうか」


「そうね、夕食の時間だわ」


ふふ、こんなにも我が人生が満ち足りている

アーク、エステル我が宝達よ

どうかこれからも健やかに育っておくれ


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