第6話 五日目

 ピロリとの闘いのフィールドは、どうやら下(腹)から上(口)に移ったようである。とにかく常に口の中が苦くて飴が手放せないし、喉の奥がヒリヒリ痛い。自分の部屋が変な臭いがすると思ってお香を焚きまくっていたが、「あ、これ胃酸の臭いや」と気付く。薬飲み終わったら収まってくれるんだろうか。

 とりあえず、社会生命が危うくなるような腹痛はなくなって、ホッと一安心。着実にピロリを除菌していってるはず!



 ピロリ持ちは胃痛持ちである。

 そして胃痛持ちは、痩せている人が多い。


 以前Twitterで、「痩せてる奴が『私、意外と大食いなんですよ!』アピールするの何なの? その程度で大食いを名乗るな」みたいな投稿があったのだが。私には、あえて大食いアピールをする人の気持ちがよくわかる。


 それは、「どうせ食べきれないでしょ」と言って人のご飯を取っていく輩を牽制するためなのだ!!!


 割り勘の飲み会とかで、大皿の料理を「一人2個ずつだな」と計算してもいつの間にか1個しかありつけない、くらいは大目に見よう。

 しかし、個別会計する予定の、それぞれが選んだランチプレートやディナーなんかに対して言うのはアウトやろ。

 料理に手をつける前に、「食べてあげるよ」といかにも親切そうな顔で言う奴、何なん? 本音を言いづらい相手だと断れないし、だからといって漬物とか添え野菜を差し出すわけにもいかないから、チキン南蛮とかメイン料理を持って行かれる羽目になる。

 納得が! いかない! なんで「いいことした」「気が利く俺」みたいな顔してんねん! わしのチキン南蛮返せ!


 とまあ、「嫌です」と言えない、でも後々までモヤッとする、それを回避する方法が、事前に「私は大食いです!(だから私の食べ物を取るんじゃない)」とアピールすることなのだ。痩せている人間は、多かれ少なかれ「食べてあげるよ」攻撃経験者なので。

 え? 本当に「食べきれないから食べて欲しい」人もいるかもしれないって? そうだとしても、本人が言うまで何もしないのが礼儀ではないだろうか。特に、個別会計するなら、その食べ物は本人に権利があるのだから。


 そんなわけで、痩せている人は小食のはず=「食べてあげるよ」は全然親切じゃないと心得て、どう見ても小食そうな人が大食いアピールしていたら、「誰も取らないから思う存分食べてね」と見守ろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る