桜よりも君らしく ―アンズ―

 満開に咲く樹の下へ連れてこられた。


「サクラみたいで綺麗でしょ……? えへへ……」


 彼女はそう言うと恥ずかしそうにうつむいてしまう。は、僕の胸の奥の何かを刺激する。


「えっと、その……。臆病おくびょうな私だけど、君の彼氏になりたい! の……」


 彼女の顔はさくら色を通り越して真っ赤になっている。


「いいよ。想いに気付けなくて、ごめんね」


 杏子あんずの顔に笑顔が咲く。僕達を見守るように咲く同じ名前の樹に負けないくらい、満開に。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る