第3-1プラン:反転攻勢へ向け、集う仲間たち!

 

 翌日の午後、フルール薬店で店番をしているとドアが開いてサラとザックが店内に入ってくる。ふたりともどこか凛とした表情をしていて、心はひとつといった感じだろうか。


 つまりすでにサラはザックに協力を求めて、ザックはそれに同意したってところかな。予想していたよりそのタイミングは早かったけど、その展開は私が想定した通り――と。


 もちろん、フタを開けてみるまで結果は分からないけど、私はふたりを信じてる。もし私の想定と違っていたなら、それは見込みが甘かっただけのこと。商店街の反転攻勢計画はここで終了となって、私は今まで通りの生活を続けるだけだ。


 なんといってもこの計画を成功させるための第1段階は、サラとザックを味方に引き入れるってことなんだから。私は静かにサラの言葉を待つ。


「セレーナさん、昨日の返事を伝えに来ました。私、セレーナさんと一緒に総合商店と戦います! 商店街に活気を取り戻すために。私のお店を守るために」


「……うん、サラの覚悟は決まったわけね。じゃ、本格的に行動を開始しましょうか!」


「はいっ! 実は昨夜、ザックにもこの話を伝えて協力を頼みました。彼なら信用できるし、絶対に裏切らないって思ったので。それで彼も私たちと一緒に戦うって言ってくれて……。勝手なことをしてすみません」


「ん、いいの。でも今後は私に話を通してからにしてね。ちなみに昨夜にザックへ話したってことは、その時点で私への協力を決めてたってことだよね? 動くと決めた時のそのスピード感と、自分が冷静になるまで私へ返事をしなかった慎重さ。それが両立できるサラは頼りになるよ」


 私のその言葉を聞くと、サラはどことなくホッとしてから明るい表情へ変わっていった。私が全然怒っていないどころかむしろ褒められて、完全に不安が吹き飛んだんだと思う。


 そっか、サラは少し考え過ぎちゃうのが玉にきずかな。


「セレーナさん、私っ、全力で頑張りますっ!」


「お願いね、サラ! ザックにも期待してるからねっ?」


 サラの隣に立つザックに視線を向けると、彼は自信に満ちた顔で大きく頷いた。いつもの気弱で挙動不審な姿は微塵も感じられない。彼の中で何か吹っ切れた面があるのかも。


「はいっ、ボクに出来ることならなんでもお任せください! それと……いえ、なんでもないです。ありがとうございました」


「っ? なんでお礼を言われるのかサッパリ分からないけど、感謝されて嫌な気分はしないから素直に喜んでおくことにしましょう」


 私は素知らぬ振りをして軽く流しておいた。


 事前に私からなんとなく話を聞いていたから、少しは落ち着いてサラに返答が出来ました――と、おおかたそんなところだと思う。


 だからこそ、その話をここでするのは無粋だし、それが原因でふたりの仲をギクシャクさせても誰も得しない。言わぬが花というやつだ。



 ――それにしてもザック、昨日とは別人になったみたいに凛々しい気がする。


 男子3日会わざれば刮目して見よってわけじゃないけど、本当に男の子って時に想像もしないスピードで成長することがあるから不思議だ。今のザックは勇猛果敢な騎士ナイトの如き頼もしさを感じる。


 もしかして大きな魚を逃がしたかな、これは……。



(つづく……)

 

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