第2話 私の罪(悪)

それはいつから始まったのか?

振り返って考えてみる。


きっと、私が産まれた瞬間から始まっていたのだろう。

私自身が何となくそれを自覚したのは、4歳を過ぎてからだけど。


私の罪(悪)は、女の子として産まれてしまったこと。


私がこの世に産まれてしまった事が、そもそも彼らにとっては罪(悪)なのだから...私には変える事が出来ないし、逃れる事も抗う事も出来るわけがない。



家のリビングでは、いつも楽しそうに弾む父親と母親の声が聞こえていた。


そして、溢れんばかりの笑顔で食卓を囲んでいる家族の姿がそこにはあった。


テーブルには、母親の手作りの料理がいくつも並び賑やかな一家団欒。


そこだけを切り取ると、本当に幸せそうなごく普通の家庭だった。



そう、そこだけを切り取ると。



その部分だけを切り取ると、他の人からはきっとそう見えていたはず。



ただ...その幸せそうに見える家族の中に私と妹だけは含まれていなかった。


私と妹は、リビングから離れた隣の部屋の隅っこから、幸せそうに笑う家族の姿をただただ眺めていた。


正確に言うと、眺めていたのは私だけだったのかも知れない。


当時、私は4歳。


妹は、2歳になったばかりだったから妹は無意識にそれを見ていただけなのかも知れない。


本当はもしかしたら...私が覚えていないだけで、4歳までの私と、2歳までの妹も、その家族の輪の中に居たのかも知れない。


明らかに彼らが変わったのは、4歳下の弟が産まれてからだった。




彼ら(私の両親)を含む私達人間が

何を善とするか悪とするかは、個人の価値観に紐づくのだと思う。


そして、人間の個人の価値観に基づいた善悪は、常に正しさとイコールではないのだと今の私は思う。



後継ぎの男の子だけを強く望んでいた彼らにとって...弟の誕生だけが正義(善)であり、私と妹の誕生は罪(悪)だった。



人間はそんなに強くない。


もちろんとても強い精神の持ち主もいるだろうが、ほとんどの人間が強い面の裏側に弱い面を持っている。



そんな不完全な人間の、個人的価値観に基づいて作られた正義とはいったい何だろう?


人間は、自分の都合のいいように善悪を判断し行動する。



そして、時として目の前にある真実さえも捻じ曲げてしまう。



果たして『 善意 』の反対は本当に『 悪意 』なのだろうか?















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